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サヨナラだけが人生だ ~合縁奇縁~

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

三船長

口元に怪しい笑みを浮かべてシンを見るロー。
倒れるシンを受け止めたローが率いるハートの海賊団の船員である熊のミンク族であるベポは心配そうにシンを覗き込みながらローからの指示を待った。
「おい、麦わら屋。お前の一味には医者の一人もいねえのか?なんなら俺がコイツの面倒を見てやってもいいぜ?」
挑発的なその言葉に、ルフィの表情が一層険しくなる。
そしてロー達の所に近付いたルフィはベポの腕からシンを奪い取るように自分の方へと引き寄せた。
「シンは俺の仲間だ、お前なんかに任せられるか!」
「病人が助けに来るような頼りない船長よりもマシだとは思うが?」
「何だとお前!」
ローの言葉に分かりやすく怒りを表すルフィ。
周りが二人のそのやり取りをひやひやしながら見守っている中で、ルフィの腕の中に居たシンがごそごそと動き出す。
そして、ローの方を向くと力ない掌でローの頬をぺちん、と叩いた。
「私の船長を、バカにしないで」
先程見せた蹴りと比べたら全くの無力な、攻撃力の欠片もないその平手打ちに対し、ローは思わず動きを止めて固まった。
その様子に満足したのかシンは再びルフィに体を預けると、ルフィを見上げて笑みを浮かべる。
「ルフィ、ごめん。チョッパーも、ごめん。」
大丈夫だって分かってた。大丈夫かなんて考えるまでもなかった。
だけど、だけどね、
「独りが寂しくなったんだ。」
ルフィにしては珍しい事に、シンのその言葉に目を見開いたルフィはその直後に僅かに頬を高揚させる。
しかしその表情をしたのはほんの数秒であり、それからすぐに満面の笑みを浮かべたルフィはシンにその眩しい程の笑顔を向けた。
「ならしょうがねえな!俺たち、これから此処から逃げるから暫く俺に捕まってろよ!」
そう言うと、ルフィはシンを肩に担ぎ上げる。
「ルフィ!シンは熱があるんだからな!!あんまり乱暴に扱っちゃダメだぞ!」
「おう!任せろ!!」
それを見てチョッパーが慌てて声を上げれば、ルフィは満面の笑みで返事を返し。
チョッパーの言葉を理解しているのかしていないのか分からいそのルフィの返答に、チョッパーはおい!ちゃんと分かってるか!?と焦った口調でルフィに更に続けた。
それにもにっと笑顔を返したルフィは、出口の方へと視線を動かす。
「話はまとまったか?それじゃあ、また後でな。」
ふと、シンの耳に聞き覚えのない声が聴こえたのはその直後。
声のした方へと視線を移せば、そこには見覚えのない、けれども異様なオーラを放つ男性がシン達の方へと視線を向けていた。
「あの人、は?」
思わず声を発したシンを一瞥したその男性は、口許に弧を描く。
「詳しい話はまた後で。今は此処を切り抜ける事を考えた方がいい。」
そしてそう言い残した男性はその場を後にすべく歩き出した。
「取り敢えずそういう事だから。シン、ちゃんと捕まってろよ。」
「わ、わかった。」
いまいち状況は理解できないまでも、現在の最優先事項はこの場からの脱出である事だけは理解したシンは、ルフィの言葉に大きく頷く。
そしてよし行くぞとルフィが足を踏み出したその時。
「しかし、同じ場に居たせいで俺達も共犯扱いとはな。」
ルフィの横に居たローが、妖しい笑みを浮かべたままでため息混じりにそう呟く。
そう、今のこの状況。
後から合流したシンこそ理解は出来ていないが、誰もがそれなりの危機感を抱くべき状況となっていたのだ。
シンが到着する前の事。
人拐いに拐われオークションにかけられたケイミーを救うために駆け付けたハチに凶弾で重症を負わせた天竜人。
それに対し猛烈に怒ったルフィは天竜人を殴り飛ばしたが、天竜人とはこの世界において最も権力のある一族の通称である。
その危機においては、海軍本部の最高戦力である大将が駆けつけるようになっていた。

つまりは、だ。
天竜人が殴り飛ばされた今のこの状況は、この場所に海軍大将が召集される状況に他ならない、という事。

天竜人に危害を加えたのはルフィ、そして麦わらの一味ではあるものの、同じ場所に居合わせてしまった二組の海賊団もまた"共犯"として攻撃対象に入ってしまっていたのだ。
それが分かっているからこそ、ローは笑みを浮かべつつもルフィに向けて少なからずの殺気を発していた。
そしてもう一組の海賊団の船長、キッドもまた同じように嗤いながら凶悪な視線をルフィに向ける。
「麦わらのルフィのイカれ具合を見たんだ、文句はねえが今大将とぶつかるのはごめんだ。」
そう言いながらルフィ達に背を向けたキッドは、出口へ向かって歩みを進めながら更に言葉を続けた。
「もののついでだ。お前ら、助けてやるよ。」
その言葉にルフィとロー、二人の表情が途端に険しくなる。
それには一番近くに居たシンが真っ先に気付き、そして思わずルフィに声をかけた。
「ルフィ・・・?」
「シン、悪いけど落ちねえようにちゃんと捕まってろよ。」
シンの声にちゃんと言葉を返すものの、その視線はキッドの背中から外さないルフィ。
そしてキッドを追うように足を動かし出したのは、ルフィだけでなくローも同じだった。
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