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サヨナラだけが人生だ ~合縁奇縁~

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
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特別と普通

食器の割れる音とシンの崩れ落ちる音、その音が聞こえた瞬間にサンジとロビンは同時にシンの方へと勢いよく視線を移した。
そして映ったのは荒い息をしながら床に伏せるシンの姿で、サンジは慌ててシンを抱き起す。
「シンちゃん!?どうした!」
「シン!?」
互いに声を掛けてもシンは苦しそうに呼吸をするばかり。
頬が上気しているのを確認したロビンがシンの額に手の平を当てると、その熱は常人よりも遥かに高いのが分かった。
「っチョッパーを呼んでくるわ!」
それを確認したロビンは慌てて立ち上がると、勢いよくドアを開け放って外へと走り出す。
「チョッパー、すぐ来て!シンが凄い熱なの!!」
少し離れた所でロビンにしては珍しく声を荒げてチョッパーを呼び、その声に反応してかドタン!バタン!と数回転げどこかにぶつかったような衝撃音を立てながらチョッパーが走ってくる音が聞こえたのはその直後。
その間、サンジはシンの名を呼びながら水に濡らしたタオルをシンの頭に乗せてやりながらチョッパーの到着を待った。
そしてロビンの声に反応したのはチョッパーだけではなかったようで、あっという間にキッチンにはクルー全員が集まっていて。
その中心には苦しそうに息をするシンと険しい表情でシンの容態を確認するチョッパーの姿があった。

「・・・多分、疲れだと思う。」

そしてチョッパーが出した結論は、それだった。
「寝不足もあるみたいだし、環境が変わり過ぎて体がついていかなくなったんじゃないかな。」
診察を終え、大事がないと確認したチョッパーが安心したように皆に伝えれば、集まっていたクルー達もそれぞれに安堵の息を吐き出す。
「じゃあ、寝かせときゃ治るっつー事か?」
言いながらそっとシンを抱き上げたのはフランキーで、そのフランキーの問いかけにチョッパーはうん、と頷く。
「なら寝かせとくか。」
チョッパーの返答を聞いたフランキーは抱き上げたシンをそのまま寝床へ運ぶべく歩き出し、チョッパーもそれに続くように後を追う。
残されたクルー達は安心とため息両方を吐き出しながらその場に座り込んだ。
「大事がなくて良かったわ。」
「そうね。夜も眠れていなかったみたいだし・・・」
「だから心配しすぎだって言ってんだろ。少しは放っといてやりゃいいんじゃねーのか。」
「てめーだって洗濯干し変わってやったり、随分と過保護にしてんじゃねーかクソマリモ!」
「何だとクソコック!てめぇだって甘やかしてたじゃねぇか!」
「ゾロもサンジもやめろって。でも、アレだな。“特別扱い”されてるってシンも気にしてたんじゃねーのか?」
「ウソップさんの言う通りですね。どうにも、あんな酷い過去の話を聞いたら放っておけなくて・・・」
「んーーーー、」
皆が皆自分の行動を反省する中、ルフィの唸り声が響く。
それに一同の視線がルフィに集まれば、そこには珍しく眉間に皺を寄せながら険しい表情を浮かべる船長の姿があって。
「ルフィ?どうした?」
それに対してウソップがルフィに声を掛ければ、ルフィは唸り声を発するのをやめて勢いよく立ち上がった。
「なんでお前ら、特別扱いなんてしてんだ?」
「は?」
首を傾げながら心底分からないといった表情を浮かべたルフィのその言葉に、誰かが唖然と間の抜けた声を発する。
しかしルフィはそれを気にする素振りもなく、眉間に皺を寄せたまま腕を組んで言葉を続けた。
「だってよ、シンは仲間になったんだからもう家族みてーなもんだろ。特別扱いとかする理由が分からねえ!」
「お前なぁ、ルフィ。シンは小さい頃から酷い扱いを受けてきたんだぜ?しかも特殊な悪魔の実の能力者でもある。同情するだろ、普通。」
「だからなあ、ウソップ!同情する意味が分かんねえって俺は言ってんだ!もうアイツの過去は俺が吹っ飛ばしたじゃねえか。シンを酷い目に合わす奴なんてもう居ねーんだから、何をそんなに心配してんだよ!」
ルフィの子供のような理屈に一同は閉口。
何かを言い返そうと思っても、よくよく考えてみれば的を得ているルフィの言葉に返す言葉が浮かばない。
「よし、決めた!お前らもうシンを特別扱いするの禁止な!船長命令だ!」
「・・・ヨホホ、ルフィさんは強引ですね。」
ビシッと指を指しながら宣言するそのルフィの様子に、数秒唖然としていた一同の表情は苦笑に変わる。
そしてブルックの言葉を皮切りに、分かったと各々に頷いた。
「ったく、アンタには敵わないわね。」
「ホント。ルフィはいつも自由ね。」
「ルフィさんがそんなだから、私付いてきたんですけどね。ヨホホホホ!」
「いつも核心を突く事を言うんだよな、コイツは。」
「ウソップ、そりゃ今に始まった事じゃねえんだから諦めるしかねーだろ。」
「シンに特別扱いできなくなって残念そうじゃねぇか、マリモちゃん。」
「は!?てめーと一緒にするんじゃねぇよ、クソコック!!」
それぞれの返事に満足したのか、ルフィの顔には満面の笑顔。
ルフィにうまく丸め込まれたクルー達は、それを見て笑みを浮かべた。
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