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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT198    『強化人間戦用装備』





「準備することが出来た三種類の兵装は、宇宙空間でのフェネクスとの接触に備えた超機動力を持たせた兵器です。ブースター・ユニットですね……はい、これがその画像です」
 工場長が端末を操作すると、ディスプレイには巨大なオプションパーツが表示された。
「デカいな……」
「ええ。巨大ですよ。なにせ、ユニコーンガンダム3号機、フェネクスは亜光速から、光速のスピードを出すような機体ですからね……そんなモビルスーツに一瞬でも追いすがるために、これだけの巨大ブースターをつけました」
「Gはどれぐらいかかるんだ?」
「55Gですね。もちろん、瞬間的な強さですけど」
「地上戦で格闘攻撃をコクピットにぶつけられた時のようなGだな」
「ええ……強化人間ということですので、有効な機動力を有した最大加速でかかるのは、25Gぐらいです」
「常人なら気絶どころか血管が破裂しちゃうかもしれないレベルね」
「並みの人間では耐えられません」
「私たちは、15才の頃に、それよりキツい重力加速度をかけられていたわよ。くだんのオーガスタ研究所でね。脳の血管が破裂するんじゃないかって、不安になったわ」
「……ムチャクチャなことをされていたんだな」
「あら、そんなことは序の口なのよ。それぐらいの想像力を働かせてもらわなきゃ、私たちの地獄を理解することは難しくてよ、イアゴ・ハーカナ少佐」
「……そうか。そうだろうな……脳内をいじられることも、日常的なわけだからな」
「脳を壊されるとね、精神だけが壊れるわけじゃないわ。内臓機能も落ちていく。壊れてしまうのよ……全身がね。まあ、いいのよ、そんなことは―――で、この加速なら、追いつけるかしら、少佐?」
「……ああ。どんなに速くても、障害物が多い場所と、複数方向からの砲撃により、ルートを選ばせる……そうすれば、追いつける瞬間は作れる。そこを、サイコ・キャプチャーを用いて捕らえる。理想的な戦術は、そんなところだな」
「悪くなく聞こえるわね」
「……しかし、このGに耐えられるのか?」
「サイコ・スーツはそれが可能となるような設計をされています。それに、強化人間の心肺機能……そして脳内の血管網や……中枢神経系への薬物による変異の強制で、彼女たちは、ヒトには耐えられないレベルのGに耐えます。戦闘時には、感受性は上昇しますが、情緒的な処理は低下するように調整されていますよ、訓練と薬物と外科的な処置で」
「……詳しいな、工場長」
「……興味がありましてね。私も……その……先の『ラプラス事変』の時に……連邦軍が捕虜にした、『袖付き』の強化人間に対しての調整データの製作に関わりましたから」
「……へー。知っているわよ……サイコガンダムMk-Ⅱに乗っていたという強化人間のクローン体ね……?」
「そうです。耳が広いですな……プル・シリーズと言われるクローン体の一人。戦闘能力は、桁違いに有能でしたが…………戦死したようですね」
「……クローンまで作って、殺していたというのか……」
「ニュータイプのクローンね。効率的じゃないかしら」
「おい、ミシェル・ルオ」
「まだ、大切にされるんじゃないかしらね。期待に応えられる素材よ。いるべき場所にいれば、苦しみは最小限……私たちみたいな、ニュータイプのなり損ないみたいな者は、もっと悲惨な目に遭う。生かしてももらえないのよ」
「……しかし……兵器のために生み出される命など…………っ」
「……やさしいのね。でも、あまり気にしない方がいいわ。強化人間やニュータイプなんて、幸せになれた者は多くはいない。シャア・アズナブルも、アムロ・レイも……貴方のいた戦場で殺し合って、消えて行ったでしょう?……奇跡を見せてはくれたけど。それで、ヒトは何も変わることはないわ」
「……そうかもしれんが。だが、あのとき、あの場所に参加していた者として……オレには、ニュータイプや強化人間のために、悲しみ怒る義務があるのだと思う」
「自分の人生を行きなさい。自分の人生にまつわる、苦しみだけに集中した方がいいわよ。そうじゃなければ、悲しみや苦しみに囚われることになる……」
「……アンタ」
「なにかしら?」
「……どんどん、ニュータイプっぽくなっていく気がするぞ。共感性が上がっている」
「それは、貴方も同じでしょう。宇宙っていう環境や……ガンダムなんかに関わっていると、そうなるのかもしれない……」
「……ガンダムに?」
「あれは、象徴だからね。地球連邦のフラッグ・モビルスーツってだけじゃないわ。宇宙世紀における、奇跡を具現してきた存在だもの」
「……そういう存在に、オレたち自身が、勝手に意識してしまうということか?」
「そうなるわ。とくに、貴方はそうでしょう。イアゴ・ハーカナ少佐……ガンダムとニュータイプを結びつけている。私には、分かるわ。貴方の心がね」
「……ならば、ますます君はニュータイプとしての能力が研ぎ澄まされているな」
「そうかもね……ふふ。また脱線したわね」


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