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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT178    『チーム・オーガその9』




 三機のグフ・カスタムが眠りから覚めたその瞬間、ハードナー基地を巡回していた連邦軍のモビルスーツ・パイロットたちは、青い戦鬼のうなり声に気がついていた。

『来るぞおおおおおおッ!!グフの動力が、フル解放されているッ!!』

『さっきよりも、連中は速く動くかもしれんッ!!警戒を緩めるなッ!!』

『ヤツらは消耗しちまっているんだッ!!数で囲んで、持久戦を仕掛けるぞッ!!』

『遠距離からの射撃で仕留めろッ!!ビームは必要ない。ヤツらは施設を盾にしやがるんだからなッ!!』

『バルカンやマシンガンで、削ってやれば問題は――――――』

 ザシュウウウウウウウッッ!!

 ジェガンの一機を、隊長のグフ・カスタムが斬り裂いていた。ビーム・サーベルだ。敵の機体から強奪した、最後の武器を使い、一刀両断にしてみせる。そのまま、グフ・カスタムたちは戦場の青い疾風と化けた。

 彼らの狙いは、ただ一つ……ステファニー・ルオが脱出するであろう退避路の出口のみである。

 その場所を目掛けて、三機はただひたすらに走った。そうだ、もはやスラスターはない。機体の運動能力だけが、この地獄のマラソンを戦うための『防御力』だろう。

 身を守る術は、もはや、動き回るしかない。

 スラスターが使えないとはいえ、それでもグフ・カスタムの運動性能は十分に速い。闇と煙に覆われて、炎が揺れる戦場を、オーガ隊は駆け抜けていく。

『離脱する気かッ!!』

『ジオンのテロリストどもを、絶対に逃すなああああああッ!!』

『仕留めろおおおおおおおおッ!!』

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 連邦軍のモビルスーツ伝統の、ヘッド・バルカン砲が唸りを上げて、戦場から逃げ出したグフ・カスタムたちの背後に砲弾を浴びせていく。

 砲弾を浴びた装甲が、火花を散らし、衝撃がコクピットを襲う。隊長は、チッ!と舌打ちする。雑魚に背中を見せることに、どうしても腹が立ってしまうのだ。

 それでも、止まることはない。とにかく、前進あるのみだ。ステファニー・ルオを乗せた車はもうすぐ坑道から飛び出して来るのだから……巻き込まなければならない。最良のシナリオはどうあるべきか?……もちろん、決まっている。

「……北北東に抜けるぞ!!あそこが、遮蔽物が多く、我々、ジオン軍の背中を守ってくれるものが多いッ!!ジーク・ジオン!!我らが、戦いに、宇宙の同胞らよ。魂を振るわせろッ!!我々は、まだ、諸君らの夢を代弁する剣であるッ!!」

『ジーク・ジオンっ!!』

『ジーク・ジオンッ!!』

 あえて言うのだ、自分たちはジオンの系譜にあるテロリストだということを、宣言するために。地球連邦の軍人たちは、そのセリフに腹が立ってしまう。

 彼らのなかには、ジオン公国軍のコロニー落としにより、親族を消し飛ばされた者たちも少なからずいる。

『この、スペースノイドがッ!!』

『お前たちは、帰る場所もない、ただのくたびれたテロリストだろうがッ!!』

『ジオン共和国は、お前たちを正規の兵士とは、認めてはいない!!それも、とっくの昔になッ!!』

『スペースノイドの夢など、もはや終わったのだッ!!独立など、誰も求めてはいないのだッ!!スペースノイドどもは、コロニーの豚どもは、とっくに、自治なんてあきらめちまっているんだよッ!!』

 砲弾と共に、かつての同胞たちへの侮蔑を浴びせられながら、それでも振り向き戦うこともなく、隊長はグフ・カスタムを走らせるのだ。

『オーガ1……そ、装甲が……もちませんッ!!』

「それでも走れ、オーガ2。オレたちは、すでに一人、欠けてしまっている」

『そうだぜ。オーガ2……任務を果たそうぜ。オーガ3の分までよ?』

『……ああ。そうしたかったんだけど。すみません、隊長……このままでは、三機ともダメージが蓄積しすぎてしまう……オレが、敵と刺し違えて、時間を稼ぎますッ!!』

「……分かった。頼んだぞ、オーガ2」

『はい。隊長は、そう言ってくれると信じていました。オーガ4……隊長をフォローしろよ』

『……ああ、地獄で、また会おう』

『おうよ!!……さあて、愉しませてもらうぜッ!!』

 オーガ2が敵の群れに振り返り、ビーム・サーベルを抜き放ち、特攻を仕掛けていく。

『来たぞ!!』

『仲間の盾になる気かよッ!!』

『それなら、その本懐を遂げさせてやれッ!!我々は、一機ずつ狩ればいいんだッ!!』

 砲弾の群れが、オーガ2に放たれる。オーガ2はマニューバを刻み、それらの多くを回避しながら進むが、次から次に被弾は進む。

 それでも、壊れながらも、崩れていきながらも、傭兵としての本能が、彼に笑顔を浮かばせる。

『ハハハハハッ!!オレの強さを、見やがれええええええええええええええええッッッ!!!』

 オーガ2のグフ・カスタムが、ジムⅢを両断して、さらに敵陣の深くへと切り込んでいく。勝算ゼロの無謀が過ぎた行いというわけではないのだ……敵の砲火の中心に位置取れば、おいそれと攻撃を出来なくなる。

『くそ!!オレたちを盾にするのか!!』

『そういうことだッ!!オレと一緒に、死ぬのは、誰だろうなッ!!』

 オーガ2は再びビーム・サーベルでまた一機のジェガンを撃破していたが、それでビーム・サーベルのエネルギーも切れてしまっていた。

 それでも、オーガ2は拳を使い、敵モビルスーツの頭部をもぎ取っていた……だが、次の瞬間、頭部おもがれたジェガンが放ったビーム・サーベルでの反撃が、オーガ2のコクピットへと深々と突き刺さっていた。


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