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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT174    『チーム・オーガその5』




 オーガ3が死んだことを、オーガ隊の戦鬼たちは悲しみはしない。

 定めであると割り切ってのことだからだ。そんな感情に心を乱されている場合でもない。迫り来る敵が、そこかしこにいるのだ。

 作戦に忠実であらねばならない。武器も弾薬も燃料も底を尽きかけている。

 闇が隠れることを手助けしてくれてはいるが……それは完全なるバリアというには、あまりにも心許ないものである。それだからこそ、作戦には従順でいるべきであった。

 無言のまま、オーガ隊は闇のなかを走った。気配を消して、獲物に近づくために。

 狙うのは、輸送機の格納庫だ……その場所に近づき、3機になった戦鬼たちは、携帯してきた強力な爆薬を設置すると、再び闇のなかへと隠れていた。

 爆発が起きて、3カ所の輸送機の格納庫が崩壊してしまう―――これで、ターゲットの逃げ道を狭めることに成功した。

 ターゲット、ステファニー・ルオの位置は追跡している。ミノフスキー粒子が薄まりつつある今なら、彼女の位置を特定することがオーガ隊の面々には出来ているのだ。

 ステファニー・ルオの左手首に埋め込まれている、医療用インプラント。心臓に持病を持つ彼女の心拍数や血圧、BNPの変動を記してくれるものだ。

 そして、誘拐対策に警備部門により、発信機能もつけられている品だ。

 それを企図したのは、ルオ・ウーミン。ステファニー・ルオが拒むことを見越して、発信機能を搭載することは秘密裏に行われている。

 彼女は知らない。自分の左手首を切り落としてでもしない限りは、決死の哲学で行動している戦鬼たちの追跡を回避することは出来ないのである……。

 ……そのステファニー・ルオは、静けさを取り戻した戦場を見ながら、震えていた。戦場に巻き込まれるのは、久しぶりだった。

 サイコガンダムによる、ニューホンコン襲撃以来だった……死の恐怖が、ステファニー・ルオの心を埋め尽くしていく。そして、疑念も広がっていた。

 ……このタイミングで、襲撃されるなんて…………アレは、ミシェルの用意した戦力なのかしら―――正解ではあったし、ステファニー・ルオもそう確信はしている。

 だが、チャールズ将軍がいる前では、そんなことを口にすることは何があったとしても許されることではない。

 守らなければならないのだ。これが、たとえミシェル・ルオによる襲撃であったとしても、そのことは秘密にしなければならない。

 全ては、ルオ商会のために、である。彼女が心血を注いで、より大きく育て上げてきたルオ商会……その名に傷がつくことを、ステファニー・ルオは何よりも心配しているのだ。彼女は、自分の命よりも……ルオ商会の立場に傷がつくことの方を、恐怖してもいる。

 そして……ミシェルとルオ商会の力も信じてはいた。この襲撃犯たちが、ミシェル・ルオにもルオ商会にも繋がる要素は、一つとして残してはいないだろう。

 でなければ、これほど大がかりな作戦を選ぶことはない。私を確実に暗殺し、なおかつ、ジオンのせいにするために……これだけの被害を地球連邦軍の基地に与えたということか……それは、私を信じてもいるということね、ミシェル。

 私が、この襲撃に対して、貴方の関与を疑わせる発言をしないと、信じてくれてもいるわけね。

 貴方は、そういう『やさしい子』だものね。私のして欲しいことの大半は、いつの間にやらやっている有能さを持っているもの……私は、ここを生き延びたら……貴方を殺す。

 でも、貴方が私を今夜ここで殺せたら、私は秘密を抱えて死んであげましょう。これは……どちらがルオ・ウーミンの真の継承者かを決める戦いになる。私も……死ぬわけにはいかないわね……。

「……チャールズ将軍。賊の排除は済んだのかしら?」

「いいえ。敵は上手く隠れている」

「20メートル近い巨人を、見失ったというの!?」

「モビルスーツというのは、隠れることが上手なんですよ」

「だからといって……」

「安心しなさい。私はこの戦場を離れるワケにはいかないが、民間人である貴方は、地下のルートから避難して下さい。私の部下を二人、護衛につけます。彼らの誘導に従い、地下坑道を車で抜ける……それが、現状では最も安全なルートです」

「……そうね。敵は、ジオン軍の残党らしいものね。この司令室を狙ってくるかもしれない。将軍の首は、彼らにとってもトロフィーでしょうから」

「……貴方の首も、そうではないのでしょうかな?」

「私は民間人に過ぎません。私を殺したところで、ジオンの残党たちの名誉になるとも思えませんわ」

「確かにその通りだ。この襲撃は……そうだな。間違いなく、ジオンの残党によるものなのだろう……改造されてはいるが、古いグフだ……アレをあそこまで巧みに操れる者は、地球連邦軍にはいない。アレは……何とも操りにくい機体でもあるのですよ」

「モビルスーツ談義は、私の興味のないところです。チャールズ将軍、私は、ご厚意に甘えて退避させていただきますわ……ここにいても、何一つ、してさしあげられることはございませんものね……」

「ええ。安全なところに逃げ延び下さい。そこで……我々の勝利を祈っていて下さい」

「もちろんです……ご武運を、お祈りいたします」


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