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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT169    『決死隊』




『オーガ1ッ!発見されましたッ!!』

『警報が鳴り響いているッ!!』

「問題はない。雨に、曇天、日没間際。これにミノフスキー粒子を加えれば……グレーベースの迷彩でも、グフ・カスタムを隠してくれる。オーガ4!!ミノフスキー粒子を散布しろ!!」

『了解です!!……ミノフスキー粒子、散布しますッ!!』

 バシュウウウウウウウウウウウウッッ!!

 六連装のロケット砲が次々にハードナー基地の上空へと打ち上げられていく。ミノフスキー粒子と、そして無数のチャフが大気中に大量散布されていった。

 レーダーが死ぬ。

 火器官制の加護もパイロットから失われる。

「つまり、モビルスーツの機能に頼っているようなひよっこは、この戦場を生き残ることは出来ないってことだああああああああああああッッッ!!!」

 ブオオオオオオオオオオンンッッ!!

 隊長のグフ・カスタムが加速し、基地を守っていたジムⅢの一機に接近していく。ジムⅢは牽制射撃をしてはいたが、加速したグフ・カスタムの右から左に切り返すフェイントにより、射撃は雨空を撃ち抜くばかりであった。

『く、は、速いッ!!きゅ、旧式の機体の分際でええええッ!!』

「それだけ、長くつるんでいるってことだ!!グフのことを、オレより知っているヤツは人類にはいないんだよ!!」

 ジムⅢのコクピットに対して、隊長の操るグフ・カスタムのヒートブレードが突き刺さっていた。

『ぎゃあああああ――――――』

 焼け死ぬパイロットの悲鳴が、ミノフスキー粒子化で聞こえが悪くなった通信に乗る。それも一瞬のことだ。何の感慨も起きはしない……すべきことは一つ。とにかく、動き回り、敵を狩り続けるッ!!

『オーガ2!!エンゲージ!!敵と、交戦を開始しますッ!!』

『オーガ3、同じく接敵!!ジェガンだ!!壊してやるぜッ!!』

「そうだ。存分に暴れろ!!今日、オレたちは死ぬんだ…………すべては―――」

 ―――ミシェルさまと、ミシェルさまが率いるルオ商会。そして、戦士が戦士の誇りを保てる未来のためにであるが……我々は、演技をしなければならない。不本意ながら、今さら、この言葉を通信に乗せるぞッ!!

「―――『ジーク・ジオン』ッッッッ!!!我らが、スペースノイドの悲願、邪悪なる地球連邦からの独立のためにッ!!我らは、ジオンの残党は、その大義をここに示すッ!!我々は、ジオンのために生まれた、ジオンのための戦士であるッッッ!!!」

『そうだ!!ジーク・ジオンッッ!!』

『我らが、スペースノイドの独立のために!!敵を殲滅するぞッ!!』

 まったくもって、演技が上手と来てやがるぜ。傭兵稼業を長年、続けて来た成果なのだろうな。

 我々は、嘘まで熟練が利いているとみえる……さあて、さっさと、やり合おうとしようか!!

『……全機、発進しろ!!敵襲だ!!敵襲ッ!!時代遅れのグフ・カスタムが、ハードナー基地に襲撃して来やがった!!気をつけろ!!機体は古いが、乗りこなしている!!ヤツらは、キャリアのあるジオン系パイロットだッ!!』

 通信ではなく、スピーカーで増幅させた大声が基地に響く。

 悪くない練度だ。あちこちのモビルスーツ格納庫から、モビル―スーツが出て来ている。ああ……30機はいるな。どうにもこうにも、数が多すぎる―――だからこそ、楽しくて仕方が無い!!

 血が騒ぐというものだ!!我々、オーガ隊の終焉を飾るには、悪くない。派手な戦場だッ!!これぞ、傭兵の道の究極ではある……戦場で、愉しみながら、死ぬんだよッ!!

「ハハハハハッ!!」

 隊長は笑いながら、ビームライフルの一撃をかわす。踊るような軽やかさで半回転しながら、シールドが付きのガトリング砲で、自分を攻撃して来ていたジェガンに砲弾の反撃を浴びせるのだ。

 ダガガガガガガガガガガガッッッ!!!

『ぐはあッ!!く、くそッ!!かなり、衝撃が重いぞ、相当に改造していやがるッ!!』

「そうだ。グフ・カスタム相手に、止まるんじゃねえよッ!!シロウトがああああああああああああッッッ!!!」

 隊長の熟練の指が操縦桿を激しく動かして、グフ・カスタムにマニューバを打ち込んだ。

 グフ・カスタムは加速し、ガトリングの砲弾を浴びて動きを止めていたジェガンに接近する。

『くそおおッ!!くるなああああッ!!』

 ジェガンがビームサーベルを振り回すが、隊長はヒートブレードでその斬撃を受け止める。

 ジェガンが接近専用のバルカンを打ち放つより先に、ガトリング砲の零距離射撃をジェガンのコクピットに向けて打ち込んでいた。

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッ!!!

 耐久の限界を超えたジェガンが、爆散していき、その業火を貫くようにして、隊長のグフ・カスタムは次の獲物を狙うのだ。

『コンビネーションだ!!コンビネーションを使え!!コイツら、個々の技量が強い、強すぎるッ!!一対一を選ぶんじゃない!!多対一で、安全に――――』

 バシュウウウウウウウウウウウウンンンッッ!!

 ビーム・ライフルの一撃が、そう叫んでいたジェガンをまた一機沈める。

「いいぞ、オーガ4」

『ええ。チームってのは、やはり連携が大事ですからね』

「ああ。お前の後方射撃があれば、我々は、戦いやすいというものだッ!!」


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