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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT156    『サイコミュ談義』



「数も少なくなるかー……」

「その上、遅くなっちまうってか。腕のいいパイロットなら、無効化されそうだな」

 少なくて遅い、サイコミュ兵器……いつか下士官ネットで共有されていた、ネオ・ジオン軍のサイコミュ兵器の圧倒的な攻撃力を思えば……あまりにも弱々しく感じる。

 ハマーン・カーンのキュベレイとかいう、ニュータイプ専用のモビルスーツが解き放つ、小型の攻撃端末の群れは、恐ろしく速くて、恐ろしく的確にモビルスーツだろうが戦艦だろうが攻撃し尽くして、またたく間に撃沈させてしまっていた……。

 それに比べて、有線の遅くて数の少ない攻撃端末……あまりにも見劣りしてしまうではないか?もしかすれば、自分たちでさえ、それを撃墜することが出来るんじゃないかと双子は考えていた。

 ハマーン・カーンの攻撃端末の嵐は、とてもじゃないが生き残れるとは思えないほどに、反則的な強さに見えたものだが……。

「……『有線式遠隔攻撃端末』は、悪い装備じゃないよ。弱点が多いだけでね。本家のファンネルだって、高速機動戦やら間合いがある戦いでは、各個撃破で撃ち落とされることはあるんだから」

「大尉とかならー、ショットガン・ユニットで迎撃しちまいそうだわ」

「やるね。下手すれば、バルカン砲で撃ち落とせるかもな」

「……バルカン砲でファンネル対策か。いいね。それ……きっと有効だよ。弱点としては、バルカン砲の可動性の悪さかな。射撃用の角度が限定されそう」

「……エンジニア・スタッフの間違いなんじゃないかー?」

「そうだぜ。アンタ、そっちの臭いがする」

「まあ、そっちも大好きなんだけど。専門的な分野は、中枢神経……ひらたく言えば、脳みそを研究している。感応波の発生と、それを受信する能力があるかどうかを測定したりしているんだ」

「脳みそを開けてかー?」

「ド外道だな」

「そこまでしないよ。ボクらはね……連邦軍の一部は、そんな研究もしているらしいけれどさ。ボクらは、ミシェル・ルオの下で働いている者は、そんなことはしないよ」

「ミシェルさんも……『奇跡の子供たち』だったからすかー?」

「皆、強化人間には痛ましい思い出があるもんだなぁ……」

 そういう双子たちも、『ストレガ・ユニット』というトラウマを心に刻みつけられていた。子供たちの脳みそを刻んで、そいつを機械と繋いじまう?……超能力を兵器として使うために……?

 考えるまでもなく、ドがつく外道の行いであった。しかし……実際に、そういった兵器がこの世界に存在している……困ったことに、敵として遭遇してしまっていた。

「ガキってーのは、もっと楽な日々を生きるもんすけどね」

「まったくだぜ。悪人どもは、容赦がないと来ていやがる」

「……『力』に魅入られた者が、権力を抱くそうなりやすい。とくに、強化人間……『人工的なニュータイプ・パイロット』という存在を、製作することが出来たら……?その兵士を所有しているだけでも、地位が上がりかねないよ」

「大尉なら、何か銭にまつわる痛ましいコメントをしてくれそーだよなあ」

「ああ。オレたちバカだから分からないけどな……」

「……ともかくさ。サイコミュってのは、有効な兵器だし、別に脳を切り取らないといけないというわけでもない。この十数年で、ずいぶんとそれは進歩したんだよ。大きな犠牲を支払いながらだけれど、科学ってのは進歩するものなんだ」

「……それで、サイコミュってのはー」

「けっきょく、どういうシロモノなんだ?」

「分かりやすく言えば、ヒトの感応波を使った通信システムだね」

「……わかりやすーい……って、思えないぜ」

「まったくだな」

「そうかい?……通常、パイロットがマニューバを打ち込む時……コクピットからの情報は順々に伝わっていく。でも、サイコミュが操縦インターフェイスとして存在していたら?複数の動力に対して、同時にマニューバを送れるんだ」

「どういうことすかー?」

「難しいぜ」

「車で言えば、運転手がハンドルを切ろうとしただけで、車輪にもパイロットの意志が伝達され、ハンドルからもたらされる情報に先んじて動きを備えてくれる感じだけど……分かってもらえてないな」

「あー」

「ムリ」

「……複雑なシステムのことを、シンプルに言い表す行為はムリがあるんだけどね。とにかく、サイコミュってのは、ヒトの心を反映して動く機械たちのことだ。これには感応波が大なり小なり関わっている。ニュータイプは、複数のサイコミュを、同時に連携させて、自分の概念を戦闘行為に反映させているんだよ。一人で最高の連携を持つ軍隊になる」

「……自分の概念をー、戦闘行為に反映」

「好きなように、暴れまくれるってことかい」

「雑に言えば、そんなところだよ。サイコミュは、自分の人格を機械にコピーして、本体に強制的な服従を強いている装置でもある……その性格故に、人格障害がある改造人間が使えば使うほど、自我を失うことにも繋がりかねない」

「悪の兵器じゃーん」

「ひでえぜ、サイコミュ」

「……誤解だよ。それはそもそも強化人間の精神が不安定なことが要因なんだよ」


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