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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT144    『アナハイム・エレクトロニクス経由の情報』



「……ああ、やっぱりさー、多分そうだろうと考えてはいたんだけど……オレたちもっすかー?」

「正直言うと、宇宙ってのは、少し苦手なんだが……ぶっちゃけ、適性も高い方じゃないんだよなあ」

「人手不足なのよ。使えるパイロットは、一人でも多い方がいいし……可能なら、情報は秘匿しておきたい。アンタたちは並以上だし、それに大尉殿はモンスター級のパイロットなんだから。欠員が出そうな、シェザール隊の代役はしなさいな」

「あー。大尉が、スワンソンさんぶっ殺しかけたからか」

「そのせいで、オレたち、とんでもない怪物モビルスーツと戦うことになるっぽい」

「何でもかんでもオレのせいにするなよ。それに、スワンソンくんだって、すぐに良くなる……そもそも、オレの与えたケガよりも、あの女パイロットにやられた傷の方が深刻なはずだぞ」

 バカはすぐに魔女狩りを始めるんだ。アイツのせいで、こうなった……ってな。生来のトラブル・メーカーでもある大尉の人生には、大尉に対しての魔女狩りがよく行われて来た。大尉は、その魔女狩りをのらりくらりと躱すのが上手な男であった。

 しかし、今回ばかりは相手が悪そうだ。ルオ商会の『裏の中心』。そんなものが作戦に使うはずだった歯車の一つを、オレはぶっ壊しちまった。その『代償』をオレの命で支払えってことか。怖い姉ちゃんだ、このべっぴんさんは……。

 ミシェル・ルオはアフリカの三人組を見ることもなく、端末を操作した。

 ……戦闘の再現が始まる。

 星のように小さな点が―――モビルスーツを現しているその星が、ゆっくりと動き始めるのだ。6機ほどが空中を動き始めるが、その仲でも1機だけが、ずいぶんと突出している。

「……バカが一人いるな」

 組織戦の連携を重んじるイアゴ・ハーカナ少佐からすれば、その一機のモビルスーツの動きは、あまりにも傲慢すぎるものだった。

「僚機を置き去りにしているし……そもそも、数の有利を使えない。いい行動とは、呼べないな」

「……そうだな。私も、そう思う。コイツは……かなりワガママで、ガキっぽいヤツだ。きっと……自分の力を見せつけようとして躍起なんだよ」

 ジュナ・バシュタ少尉は冷静に分析した。イアゴ・ハーカナ少佐はシェザール7の考え方を気に入っていた。何故なら、ほとんど同じことを考えていたからだ。

「いいマニューバだし、素晴らしい加速性能ではあるな……他の機体は……速度と、遅れ方。そして……編隊の組み方している…………『袖付き』っぽいな、たしかに。ギラ・ズールのチームだ。一機は、違うがな」

「……ん。えーとー。ギラ・ズールってことは……」

「コイツら……ネオ・ジオンの『袖付き』……」

「さっき話していた部隊よ。コイツらが、『フェネクス』と戦ったと言われている連中ね……」

「どうして、そんなものを持っているんだ、お前……?」

「アナハイム・エレクトロニクスから流れて来たの。マーサ・ビスト・カーバインを確保していることと、元々の大株主でもあることから……彼らは、私の側に協力的なのよ」

「……そうだとしても、誰が、アナハイム・エレクトロニクスに、『袖付き』だかネオ・ジオンの戦闘データを渡したんだ?」

「当事者しか持たない情報だから。この戦闘に参加していた者の誰かが、上司か誰かに報告して、その上司がアナハイム・エレクトロニクスに提供していたんでしょうね」

「……『袖付き』……もしくは、ネオ・ジオンがっすかー?」

「闇を感じるぜ!!陰謀っぽい!!」

「……そのどちらでも無かった方が、もっと根が深い闇だとオレは思うぜ……」

 大尉はそんなセリフと共に、杏仁豆腐を食べ終えた。ちょっくら集中することになりそうだ。

 スワンソンくんの代わりをするとすれば……命がけの任務になる。そうでなくとも、何か別の厄介事を『親友』から渡されそうでもあるしな。

 ちょっとは本気を出さなければ、死んでしまうかもしれん。光速で銀河の中心へ向かって飛ぶような、『非科学的な存在』を相手に戦えば……命がいくらあっても足りない。ちゃんと、作戦と連携を使うべきだ。そうでなければ、とても狩れるようなシロモノじゃない。

 ……空中のなかで、一機がどんどん突出して行き、赤い光と遭遇する。

 ジュナ・バシュタ少尉が、切ない震えを伴う声でつぶやくのだ……。

「……リタ……っ」

「ええ。この赤い点が、ターゲット。つまり、ユニコーンガンダム3号機、『フェネクス』よ。そのテストパイロットは、リタ・ベルナル少尉……」

 攻撃が開始される。戦艦の主砲のような熱量を用いた攻撃―――ビームによる砲撃で、『フェネクス』が隠れている場所を焼き払った。

 その後は、撃ち合いに接近戦に、同士討ちの危険性もある、無茶な戦術を用いて……一機で突出していたパイロットは、『フェネクス』と引き分けていた。


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