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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT123    『その力故に……』



「……人類が持つ最強の兵器、コロニーレーザー。それさえも、ユニコーンガンダム1号機と2号機は封じ込めてしまったんです」

 ブリック・テクラートは、イアゴ・ハーカナ少佐のことをまっすぐに見つめながら語る。少佐は表情を曇らせた。

「とんでもないハナシだが……アンタらも言っているということは、事実なわけだ」

「機密情報ですから、そう出回ってはいませんが。明らかに人知を超えた世界の力を、ユニコーンガンダムたちは発揮してきた」

「νガンダムの継承機体に、ニュータイプを乗せれば、そうなるんだろうよ……アクシズをはね返す力を出すことだってあるんだぜ?……レーザーぐらい防ぐだろう」

「……奇跡として、人類を災厄から救う力だけならば、まだマシですが……滅びを招く力にもなり得ることを、多くの人々が危険視している」

「ニュータイプを信じないか」

「そういうことでしょうね。ヒトが持つには、余りにも大きすぎる力だと思います」

「だが……それを、アンタたちルオ商会も求めているんだな?……いや、ステファニー・ルオは違うのか?」

「ええ。ステファニーさまは、『シンギュラリティ・ワン』を……『フェネクス』を回収することには反対なのです」

「……アフリカの連邦軍は、彼女に協力的なようだな」

「ニュータイプという力を危険視している。ニュータイプの意志を反映して、奇跡を起こす装置……サイコフレームに対して、ステファニーさまも、地球の主導的な連邦軍指導者たちも望んではいないのでしょう」

「……マトモなハナシに聞こえるが。その実は、ニュータイプに対しての差別というか、排除意識の表れのようにも感じるな……」

「ニュータイプとオールドタイプの差かもしれない。新たな人種の壁が、生まれようとしているのかも……『ラプラス事変』において、ニュータイプに政治力を持たせよう、進化した人類へ希望を託そう。そんなメッセージが、かつてヒトの総意として示されていたことが明らかにされた」

「それが力を持つのかは疑問だが……新たなイデオロギーの形成に、一役買うことになるのかもしれないな……」

「ええ。それを警戒するオールドタイプは、少なからずいる。ヒトの本質の一つにあるものは、排他的な攻撃性ですから。ニュータイプとオールドタイプが共存できる可能性は、あまりにも少ないと考えています」

「……悲しいハナシだ……」

「そう発言して下さる方だと、ミシェルさまは見込まれていたのかもしれません」

「……ニュータイプびいきなのかな、オレは……?」

「はい。そう見えますが?」

「……そうなのかもしれんな…………とにかく、このまま宇宙港に行く。そして……」

「ミシェルさまの手配した輸送機で、ニューホンコンに向かいます。そこから、シャトルで宇宙へと上がることになる」

「……かなりの大移動になってしまうが……そうするしかないということか。ニューホンコンの……ルオ商会の縄張りに入れば、我々は安全なのか?」

「オーストラリアにいるよりは、はるかに。オーストラリアの連邦軍は、我々と協力関係を結んでいましたが……アフリカの連邦軍が、ステファニーさまと組んだとなれば、その情勢は不透明です。最悪、この場に止まれば、拘束される可能性があります」

「……襲われても、こちらはナラティブガンダム一機しかない。武装も虚弱だ」

「フレームが剥き出しの状態ですからね。とにかくニューホンコンに向かえば、モビルスーツもあります。宇宙戦闘仕様に改造された機体が」

「だが……ステファニー・ルオの妨害も強まるのではないのか?」

「ニュー・ホンコンでは問題は起こせませんよ。ルオ商会の長老たちが睨みを利かせています。長老たちの過半数は、ミシェルさまを次の会長にと推しています」

「……養子なんだろ?」

「実力があれば、血筋など問題ない……それに、ミシェルさまは、女です。ルオの一族の正統な継承者を産むことも可能ですから」

「ルオ家に嫁ぐか?」

「……嫁がなくても、方法はあります」

「あー、いいや。プライベートなことには興味はない。ルオ商会の内輪モメなんて、オレには関係ないしな。知ると……長生きしにくくなる要素が一つ増えそうだし」

「賢明な判断だと思います」

 ……地球最大の経済的なリーダー、ルオ商会。その内部のもめ事に関わるか。モビルスーツをいくらでも用意出来る?……もはや、地球連邦政府の支配が及んでいないほどの力を持っているか。

 無秩序な者は滅びる―――イアゴ・ハーカナ少佐はその持論からの視点で状況を分析したとき、ステファニー・ルオの運命に危機感を覚えてしまう。そして、それはブリック・テクラートも同じなのかもしれない。

「……アンタのご主人さまは、大丈夫なのか?」

「……やり遂げると思います。私たちは、そのためにいる。イアゴ・ハーカナ少佐……永遠の命の存在を、貴方は信じますか?」


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