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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT122    『悪意在る世界にて』




 激闘から一夜が明けて、ジュナ・バシュタ少尉たちを乗せた一行は、建設途中の宇宙港へと辿り着いていた。

 偵察兵として先行してくれた、大尉と双子たちからの情報を無線で受信ながら、イアゴ・ハーカナ少佐はアゴ髭をいじっていた。

「……無人と来たか」

『ああ。無人だぜー。誰もいなーい!フリーダムを感じる!!』

『不用心だな、事務所泥棒とか怖くねえのかよ?』

『放射性物質の汚染もそれなりに深刻な地区の中央だ。除染はしているかもしれないが、風が吹けば幾らでも有害な物質は飛んで来る……もともと、自動化されていた気もする。いたとすれば、最小限の人数だっただろう』

「……なるほど。とにかく、安全なんだな?」

『安全だ。地雷も何も仕掛けちゃいない。監視カメラの映像も、一般企業レベルのものだった。すっかりと無効化してやったよ。警備会社には連絡が行くだろうが……』

「逃げてしまえば、後の祭りということか」

『そういうことだ。だが、本当に来てくれるのか、ルオ商会の連中は、内輪モメしているんだろう?』

「……ミシェルさまは、この任務を曲げることはありません。必ずや成し遂げる。そのためには、あらゆる困難を排除しようとするでしょう」

 ブリック・テクラートはモビルスーツ運搬用の、大型トレーラーの操縦室で断言した。イアゴ・ハーカナ少佐は、再びアゴ髭をかく。ブリックの鋭い視線が、眼鏡の下で動く。

「……信用なさっていないのでしょうか?」

「いや。シェザール7の友人なんだろ、ミシェル・ルオは?」

「幼なじみ……『奇跡の子供たち』の一人です。ジオンのコロニー落としを予言した、三人の子供の一人。昨夜、貴方は二人にお会いした」

「ジュナ・バシュタと……リタ・ベルナル―――後者は、何というか、『一部』だったようだがな」

「ええ。それでも、ジュナ・バシュタ少尉は『対話』を果たした。ニュータイプとして、覚醒しつつあるのでしょう」

「本人は、ニュータイプではないと否定したがっているようだが?」

「そう呼ぶに相応しい力を、すでに発揮されています。死者との対話を果たした。『ストレガ・ユニット』との接合をせずに……感応波で、やり取りをしたのでしょう」

「……よく分からんハナシになるな。ニュータイプの力ってのは、神秘なところがある。完璧に、オカルト染みているが…………オレは、アムロ・レイが星を動かす虹を呼んだのを見たからな」

「その経歴も、ミシェルさまが貴方がたを選ぶための要素となったのですよ。貴方は、ニュータイプが起こした奇跡の目撃者だ。ニュータイプを救う任務なら、モチベーションも高まるでしょう」

「あー。何でもご存じなんだな……ルオ商会の特別相談役の、ニュータイプさんは……」

 自分の過去を探られる。あまり心地よくなる行為ではない。しかし、たしかに、この不可思議な任務に対しての適性には、なるのかもしれないと少佐は納得することにした。

「……オレたちに献身的に働いて欲しいと?」

「その必要は出て来るでしょう。実力だけで、どうにかなる相手ではありません。死力を尽くしていただくことになりますから」

「……光速に近い速度で、地球圏から離脱するフル・サイコフレーム・モビルスーツ……しかも、ガンダムタイプであり、操縦者はニュータイプか」

「……強化人間としての処置を受けている以上、彼女は元・ニュータイプの強化人間という存在なのかもしれません」

「脳を……弄られているんだったな」

「一部は切除されて、除去されたようです。機械と繋ぐためには、過去はいらない」

「……くそ。ヒドいことしやがる……」

「そうですね」

「……昨夜のパイロットは、どうなっているんだ?」

「メディカル・スタッフによると、脳内にはそれなりに深刻なダメージが見られると」

「バシュタ少尉は……鼻血となって、自分が流れ出て行くと言っていたが?」

「痛ましいですが、経験則であるのならば……正しい表現なのかもしれませんね」

「……あのパイロットは、社会復帰出来るのだろうか?」

「記憶障害が残る可能性は高いそうです」

「彼女も、記憶を失ってしまったのか……?」

「その方が、『ストレガ・ユニット』と接続しやすいのかもしれない……詳細は、不明ですがね。我々が、破壊してしまったので」

「……正しい選択だった。むろん、アフリカ戦線には、それらがまだ残っているのかもしれないが……いや、宇宙にだって、あるのかもしれん」

「……今まさに、世界のどこかで、新たな被害者が生まれているかもしれない。サイコフレームだって、表向きは封印されてはいますが……有効な兵器です。地球連邦側はもちろん、ジオン共和国側も―――ネオ・ジオンなどと通じることで、秘密裏に研究を行わせているでしょう」

「大きすぎる力は、あまりにも危険だ。それ故に、封印することに同意したハズだってのにな……」


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