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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT110    『ストレガ・ユニット/対峙』




 ミサイルを全弾、撃ち尽くした『フルコート・ナラティブガンダム』は左斜め後方に逃げながら、猛烈な勢いで接近して来る『ネームレス2』に牽制射撃を行う。

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 オーストラリア駐屯軍のサブ兵器である、22ミリ・マシンガンだ。平均的なモビルスーツの装甲に対しても、有効な打撃を行う。放射性物質と、化学物質の拡散が少ないという面でも、採用されている兵装であった。

 ジュナ・バシュタ少尉は、この兵装が地球環境に優しいから使っているわけではない。正直に言えば、もっと大型のビーム・ライフルも背中にありはするのだが―――それに持ち替える時間が足りなかったのである。

 それほどまでに、『ネームレス2』の勢いは桁違いだ。せっかく遠距離から射撃を命中させてみたのにな。アドバンテージを失うのも、すぐなのかもしれない。

『いいな!!シェザール7!!距離を保ち続けろ!!』

『そうだぞ、姉ちゃん!!ヤツに近づくなよ!!絶対に、近づくな!!』

「……わかっているよッ」

 さっき聞いたことを、何度も言わないで欲しいモノだ。ヤツと対峙している私の方が、ヤツがどれだけ気持ち悪い存在なのか、分かっているし―――あんな常識離れのスピードで迫られたら、サイコ・ジャックがあろうがなかろうが、危険な機体だと判断できる。

 マシンガンの弾をばらまいているが、ヤツはその半分以上を回避して、かすった弾丸もサイコフレームの紅いかがやきの前には無効化されているように感じる。

「……エンジニア!!こちらの攻撃が弾かれているように見えるぞ!!」

『……サイコフレームでしょうからな、あの紅いかがやきは』

「……まったく、どいつもこいつも、協定違反の機体ばかりだな!!」

『ジェスタの固有改造機体です。彼女たちもまた、シェザール隊と同じように、特殊部隊なのでしょう。おそらくは……地球圏の勢力』

『アフリカらしいぜ』

『……ん。貴方は?』

『アフリカから来た男だ。オレたちも、ルオ商会に雇われて、アンタたちを護衛する予定だったんだが……どうにも、予定が狂ってね』

 大尉は黙っておくことにした。自分たちが戦いあって、戦力を失ってしまっていたことを。アフリカから来た三人組が、軍からの脱走兵であることも、黙っていた方が得な気がするのだ。

「……もっと、重いのでドカンがいいのか?」

『いいえ。半分近くは当てています。あの機体は、フル・サイコフレーム・モビルスーツとして開発されたわけじゃありません。基本はジェスタです。重力下で、あれだけの動きをしていれば、その内、壊れるでしょう。マシンガンの弾による衝撃も、ダメージにはつながっています』

『そうだ、シェザール7!そのペースでいい!!……だが、もっと精確な射撃が出来ないのか?』

『悪くない腕だが、よく見積もっても、上の下ってところだ。スワンソンくんよりも下手だぞ?』

『……オレを下手クソ呼ばわりするな!!』

『そりゃスマン』

「……仲良しサンなのね、アンタたち……」

 ちょっと呆れるわ。私が命がけで敵から逃げ回っているというのに?……そもそも、私を護衛する役目だった連中のくせに、なんで合流したら全滅しているのだろうか。

『とにかく、ジュナ・バシュタ少尉。オーバーコート・パーツのホバー機能を頼りつつ、距離をキープしましょう』

「持久戦か。カッコ悪いわね」

『英雄的な行動を求めるな、シェザール7。お前の腕は、おおよそ把握することが出来たぞ。お前の腕では、高度な戦闘は難しい。たとえ、サイコ・ジャックが無かったとしても、ヤツとまともに戦うのは、練度不足だ』

 イアゴ・ハーカナ少佐の瞳は正しい。彼はジュナのパイロット・センスを、上の下以下と判断していた。悪くはない。

 動きも、射撃も……格闘戦は見てはいないが、それが下手クソだったとしても、中距離から遠距離の戦いでは、及第点。

 もちろん、シェザール隊の水準には、届いてはいないが……あのヘンテコなモビルスーツとの相性は良さそうだしな。

『とにかく、遠距離で戦え。可能なら、弧を書くんだ。今みたいに左に逃げながらな』

「……ええ。ヤツの右側にダメージを蓄積させるわ」

『そうだ。マシンガンの残弾に注意しろ』

「そうね。バルカン砲もあるから、その隙にマガジンを替える!!」

 ダルルルルルルルルルルルルルッッ!!

 ナラティブの頭部バルカン砲を唸らせながら、『ネームレス2』を牽制し、新たな弾倉をマシンガンに装填する。スムーズだった。悪くない動きであり、及第点をつけてやれるとイアゴ・ハーカナ少佐はニンマリする。

『とにかく、ダメージを蓄積させつつ、逃げ回れ。ヤツは、もう一段はスピードを上げてくるぞ!!その前に、少しでもダメージを与えろ!!それが、お前の生きるための唯一の方法になるぞ!!』


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