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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT093    『5対6    その4』




 大尉は改造ビーム・ライフルを放つ!……だが、ジェスタ・チームは左右に分かれた。そして、より強気な攻めに転じる。ビーム・ライフルは連射は出来ない。その隙を突くために、突撃を開始する。

「そう来るとは、思っていたぜ!!」

 より素早い反応を見せていた左側のジェスタ。その機体に対して、大尉は改造ライフルに付けたショットガン・パーツを機能させる!!……四十発に及ぶ、鋼の散弾の群れが、攻撃的な突撃を行って来たジェスタの正面に降り注ぐ!!

 ダガガガガガガガガガンンンッッ!!

 ビーム・サーベルを抜こうとしてたジェスタに、鋼の五月雨が命中して装甲の破片を撒き散らしながら、盛大に後方へと吹っ飛んでいた。

『貴様あああああッ!!』

 仲間を攻撃されたことで、片割れのジェスタのパイロットは激昂する。怒りに任せて雑なマニューバになってくれれば良いのだが……大尉はそんな期待をしているのであるが、現実はそうなることはなかった。

 練度の高いパイロットは怒りに呑まれたとしても、その行動が機械的なまでに冷静なものだ。感情を、殺意を、洗練された動きで表現するという領域に至っている―――だからこそ、ジェスタを与えられているのだ。

 νガンダムの性能に90%まで近づけたという機体。ハイスペックなモビルスーツを操れるのは、たしかにエースと呼ぶに相応しい一流のパイロットだけなのである。

 いいパイロットだと褒めるしかない。冷静さを保ち、華麗なまでの動きで……間合いを保ちながらマシンガンを撃ちまくってくる。

 もっと接近してくれていたら?―――大尉はジェガンとジェスタの間にある機体性能の差を克服することが出来た。

 距離はスピードで時間に分解することが出来る。逆に言えば?……距離が短ければ、スピードが劣っていたとしても、一瞬で白兵戦に持ち込むことが出来るわけだ。

 回避マニューバを機体に取らせながら、大尉はマシンガンの放つ弾丸を回避するが、ジェスタの旋回性能は優秀だ。そして、大尉のジェガンは、イアゴ・ハーカナ少佐との戦いで、脚部にダメージが残っている。

 ガンダリウム合金の溶けたフレームを使っていてくれたなら、あれぐらいの運動でも機体はビクともしなかっただろうにな―――ニューホンコンの怪物よ。やはり、新しい機体の方が良いと思うぜ、オレちゃんはよ……。

 だが、大尉はあきらめていない。回避にマシンガンの速射が追いつかれてしまい、右側に弾丸をドカドカと撃ち込まれていくが……理解している。マシンガンの弾倉が、そろそろ切れるということを。

 モビルスーツを破壊する弾丸は、小型に成功しているとは言いがたいものだ。ビーム兵器よりも連射が利くことは利点ではあるが、弾倉を交換しなければならないという弱点も存在している。

 ……特殊部隊に配備されているジェスタ・マシンガンの弾倉は、52発。撃ち尽くす頃だと読んでいたが……ドンピシャだ。右腕にダメージをもらいながらも、左腕に持ち替えていた改造ライフルは無事だった。

 大尉が愛機を敵の正面に向けた瞬間に、マシンガンは弾切れを起こしている。

『……貴様、タイミングを……ッ!?』

「オレちゃんは、そういうの器用なんでね!!」

 大尉は加速して行く。運命を相手に委ねていた。どう対応するかを選ぶといい。後方に逃げれば、ライフルのビームで射貫いてやろう。可愛そうだが、コクピットごと射貫くことにしてやる。

 マシンガンの弾倉交換を素早くして、オレのショットガン・パーツとの早撃ち合戦も悪くない。データ上は、99%はオレが勝つがな。

 至近距離で懐に入りながら、コクピットを振動で揺さぶる。機体は生き残るかもしれないが、中身は衝撃で死ぬことになる―――選ぶがいい。オレなら、そのどちらも選びはしないがな。

『……すまん、『ネームレス4』、離脱する!!』

 ジェスタのパイロットは、優秀なプロフェッショナルであった。敗北と、その先にある死を悟った時、彼は緊急脱出用のレバーを引いていた。ジェスタの上半身が裂けるように前倒れになり……操縦区画が空中高くに射出されていく。

「……いい判断だ。パイロットとして、どこまでも正しい。無意味に死ぬことはない……パイロットってのは、兵隊ってのは……死ぬために生まれているわかじぇない」

『……オレは、オレは終わっていないぞッ!!』

 背後から声が聞こえる。ショットガンの弾丸を浴びて、打ち倒されていたジェスタが、壊れてしまった胸部の追加装甲をパージしながら立ち上がる。本体へのダメージは、やや浅かったらしい。

 ビーム・サーベルを輝かせながら、その機体はマニューバを刻む。大尉が放ったライフルからのビームを横っ跳びで躱しながら、獣のような俊敏性で飛びかかって来る!!

 ガンダリウム合金が許す、無茶な運動性能だった。大尉はその跳躍に対して、無力だった。蹴りを浴びせられて、後ろ向きにジェガンは倒れてしまう。マシンガンの弾の群れを浴びていたジェガンにとって、その衝撃は致命的なダメージになる。

 何本か大切なフレームが折れたか曲がったか……重量とパワーで圧倒されつつ、大地に釘付け状態にされて―――ビーム・サーベルによる串刺しが迫るが、大尉は冷静だった。ジェガンには武器があるのだ。


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