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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT076    『意志を重ねるのだ、生きるために』





 ステファニー・ルオに暗殺部隊を送り込まれた。その事実は、ナラティブ・チームに緊張感を発生させているのが、ジュナ・バシュタ少尉には分かった。

 まあ、自分たちの上司にそんなことをされたら、混乱ぐらいは発生しても当然なことではあった。

「……どこの職場も大変だな」

『……そんなありふれた言葉で、済ませてもらいたくはありませんが……たしかに、大変な職場です』

「ステファニーってのは、そんな血なまぐさいことをする性悪女なのか」

『いいえ。むしろ、常識的な方です。本来は、ですが』

「常識的な方が、地球連邦軍の特殊部隊を、妹の邪魔をするために派遣してくるわけがないだろう?……私の言葉は、的外れなのかな、ブリック・テクラート?」

『……今回については、貴方の仰るとおりでしょう。ステファニーさまにも、暗黒の面があった』

「ミシェル同様にか」

『……ミシェルさまは……我々を犠牲にしようとは考えません。とくに、ジュナ・バシュタ少尉。貴方のことを、ミシェルさまは大切に思っているのですから』

「……だろうな。分かっちゃいるよ。軽んじられてはいないってことはさ……」

 幼なじみとして?……あるいは、恋愛とか肉欲に対象としてか。どんな感情だって、構わない。たしかに、ミシェル・ルオは、私の……いいや、私たちの『敵』じゃないのは確かだ。

「……どうあれ、ブリック・テクラート。そして、ナラティブ・チーム……私たちは、この戦いで負けるワケにはいかない。生き残って、目標を達成する。私たちは、『不死鳥狩り』を成功するためのチームだ。戦艦のブリッジを消滅させるような相手だ―――暴走する新型モビルスーツと対峙する仕事を引き受けたんだ。命の危険だってあることは、最初から理解済みだろ?……皆、色々と落ち着きはしないだろうが、だからこそ仕事に打ち込め!……私と、シェザール隊と、その追加の護衛機で。お前たち全員、守ってみせる!」

『……しょ、少尉っ』

『た、たのみますよう。ぼ、ボクは、まだ死にたくないんです』

「ああ。任せておけ。『フェネクス』を仕留めるための訓練を積んできた。その成果を見せる。私と、お前たちが組み上げて調整して来た、ナラティブガンダムを信じろ!!私とこの子は、アムロ・レイとνガンダムにさえ、引き分けたんだからな!!」

 ……あのまま戦いが続けば、負けていただろうが―――今は、いい。皆を安心させるための嘘ならば、別についたって構わない。

 我々は、すでに戦場に放り込まれたのだ。作戦予定地点に進めば……ジェスタ6機に襲われていた。ジェスタが6機?……νガンダムと戦うよりも、生き残ることは難しいだろう。

 こちらは楽な任務を想定してきた。ジェガン3機を襲う、簡単なお仕事だったからな。しかし、状況が変わったことを、先んじて知れたのならば……そのアドバンテージを活かしてみせればいい。

「サイコスーツを持って来て。いつでも戦いに望めるようにして備えておく。そして、ジェスタのマニュアルも、こっちに回して!あるでしょ?」

『は、はい。データだけなら。シミュレーターにつなぎますか?』

「そうね。Gのかからない、目と指を使うだけの訓練になるけれど……ジェスタとの戦い方を、少しでも頭に叩き込む。サイコスーツと……ナラティブの……座席に仕込んでいる、『おかしなシステム』にも反映させるわよ」

『……少尉、NTDに気づいていたんですか?……機密事項なんですがね』

「NTDって?」

『……ブリック・テクラートさん。彼女に情報を開示すべきかと?……我々は、一丸となる必要があります。ステファニー・ルオが敵に回ったのなら、力を結集して、抵抗すべきですよ。ここで少尉とナラティブを失えば、私たちは自衛の力を失う』

 ジュナは翡翠色の瞳を細めながら、エンジニアの言葉を分析しようとした。彼らは考えているようだ。

 ステファニーに敵として認識された以上、彼女に対して『投降』を試みたところで、色よい返事で迎えられることはないと―――常識的な人物?……ルオ商会の関係者は、全くもって非常識なヤツらで固められているような気がしてならない。

 ブリック・テクラートは沈黙しながら思考していたが、やがて口を開く。無線越しで、ナラティブ・チームに青年の言葉は届いた。

『……そうですね。ここで死ぬことは、許されません。情報を開示・共有し、敵に備えましょう』

『そう来なくては!』

「……で。なんだ、私に秘密の妖しげなNTDってシステムは?」

『ニュータイプ・デストロイヤー。その頭文字を連ねています』

「……ニュータイプを殺すためのシステムってことか?」

『ええ。その機能は、私よりも専門家に話してもらうべきでしょう』

「ああ、どこのニュータイプに対して使うつもりだったかは、分かりきっているから聞かないでいてやるよ、ブリック・テクラート。チーム内でモメてる場合じゃないからな」

『……ええ。今は、その配慮がありがたい。では……説明を、頼みます』
 

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