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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT073    『女王陛下と傭兵と……』




 隊長の仕事は早い。ミシェル・ルオに連絡を入れたのだ。彼は、主に嘘をつく男ではなかった。

「……ゴミからあふれたクズどもですが、腕は立つ連中です。一人は、オレに次ぐ力量の持ち主でしょうな。ミシェルさま、我々の戦力に組み込みませんか?」

『……オーストラリアでお仕事しているの、バレていたの?』

「申し訳ありません。ミシェルさまの動きは、それなりに大きい。ステファニー・ルオの派閥に邪魔されないように、影ながらサポートしようとしていたのですが」

『……いい忠誠心ね』

「ミシェルさまのためなら、何なりとやっちまいますよ」

『嬉しい言葉をくれるわ!……ねえ、隊長。貴方って、そこまで私にルオ商会を継がせたいの?』

「ええ。それが目下、最大の願いですなぁ。その他のことは、あまりどうでもいい。とにかく、有能なモビルスーツ乗りを、一人確保することが出来ます。報酬次第では、何でもする男ですよ」

『使い勝手が良さそうだわ。分かった。こちらの任務に合流させて』

「……ありがとうございます」

『それで。どこから情報が漏れているの?』

「……上海支部に、ルオ商会が自社開発しようとしているモビルスーツの研究施設があります。そこから、ミシェルさまがオーストラリアに派遣した部隊へ、何人ものエンジニアが送られています。そこのチーフ・エンジニアは、ステファニー・ルオへ情報を流していました」

『……なるほどね』

「彼は、貴方の暴走の証拠を集めさせられていた。ステファニー・ルオは、貴方の落ち度を集め、力を削ぐつもりでしょう」

『……そのチーフは、どうしたの?』

「いかがいたしましょうか?」

『今はどうしているのかしら。もう殺してる?』

「……いいえ。使える駒ですから、まだ生かしていますよ。ステファニー・ルオへの報告書を、いくらか改ざんさせています。貴方へのマイナスの評価を、20%ほど低下させています」

『20%なのね!』

「ええ。オレの部下のアイデアですよ。いきなり評価を大きく変えれば、怪しまれる」

『傭兵は、慎重なんだ。いい考えだと思う。ステファニーお姉さまは、そういう動きには敏感でしょうからね。あまり大きな動きはしない方がいいはずよ。その子、褒めておいてあげてね』

「感涙モノでしょうな。後から、部下に伝えておきますよ。ですが……ステファニー・ルオは貴方を警戒しています。経済部門の支配者ですからな」

『……そうね』

「いつでも殺せるように準備しておきますので、そのようなお気持ちになられたら、連絡を下さい。連絡から、12時間以内に暗殺出来るように、手はずは整えておきます」

『わかった。そうしておいて。でも、ステファニーお姉さまは、あくまでも私の姉だということを、忘れないでね』

「はい。勝手に、彼女の命を奪うことはしません。全ては、貴方の命令のもとに動きますよ。オレは、ミシェルさまのための傭兵ですからなぁ」

『恐い男ね。でも、嫌いじゃないわ。そういう駒じゃないと……お姉さまを怯えさせることは出来ないものね……』

「目的があるのなら、全てをお使い下さい」

『……そうするわ。隊長、あなたの新しい駒を借りるわよ。私がブリックと連絡を取って、彼の部隊に合流させる。名目上は、オーストラリア軍らしく見せて、より安全に『積み荷』を運ぶこと』

「……『積み荷』……ですか。実戦をヒヨコに経験させますか。貴方がしたように、魂に敵の血と悲鳴を浴びさせて、『研ぐ』わけですな」

『そうよ。強くするの。でも、死んでもらっちゃ困るのよね。護衛は、たしかに多い方がいいのかもしれない』

「ええ。事前情報が、狂っていますからな」

『そうよね。敵のジェスタが6機は、多すぎる。もっと雑魚のハズだった。こちらのジェスタは、2機が合流する予定……戦力では、不利ね』

「偽りの情報を、掴まされたのかもしれません」

『というか、こちらの情報が漏れている。介入すべき力を持つヒトに』

「……そうでしょうなぁ。ヒヨコがジェスタ6機を相手にして生き残るのは、難しい」

『そうだわ。ジュナのデビュー戦にしては、ハード過ぎ』

「……とにかく、こちらが新たに手配する護衛の一人は天才じゃあります。加減は任せられる男です。ヒヨコが死なない程度には、守らせますよ」

『アハハ。そいつってば、器用な駒なのね。ますます気に入ったわ。さすがね、隊長』

「その言葉があれば、オレは楽しく仕事に励めますな」

『それと……後で、ステファニーお姉さまに情報を流していた男を、私の前に連れて来るように手配しておいてね?』

「了解しました。拷問が得意な、オレの部下を同行させますよ。彼との会話が、より円滑に行われるように、オレからのささやかなサポートです」

『ウフフ!……ああ、お父さまを思い出すわね!』

「会長のいた頃の、『本物のルオ商会』を復活させちまいましょう。オレたちは、ルオ商会の『恐い方』担当ですぜ。舐めたマネをする敵は、放置すべきじゃありません。存在価値どころか、命まで失うことになる」


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