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俺様と姫様の物語

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: 渚
目次

後編

「大丈夫か!」

王子が勢いよく開けたドアも向にある部屋には、かろうじてまだ炎が回る前だった。まるで、この部屋だけが守られているようにも感じるほどの状況に王子は違和感を感じていた。

「ちょっとあんた!これはどういうこと?!
何が起こっているの?」

「はめられたんだ!ロレンスのヤツに、この国が滅ぼされる!」

「ちょっと、何言っているのかわからない!
ロレンス王子がそんな事するわけないじゃない!」

「いいから早く逃げないと、ここは危ない!黙って俺についてこい!」

王子は姫の手を強く握り、走り出した。部屋から遠ざかるほど火の勢いは増していった。大きな炎で囲まれた城の外に脱出し、唯一炎が行き渡っていない出口にから脱出した王子と姫の目の前に不適な笑みを浮かべるロレンスが立っていた。

「おまえ、なんでこんな所に!」

「それは僕の台詞だよ、王子。」

「てめぇ!何してくれてんだよ!」

「僕は、ずっと待っていたんだよ。君たちが仲違いする時を。
でも、いくら待っても君たちは小さなケンカをただただ無駄に繰り返すばかり。だから、いっその事君たちには潔く死んでもらおうと思ってね。」

「しかも、俺に全部の罪を擦り付けてか?」

「そうだよ。君たちの国がどれだけの迷惑をかけ続けてきたか知っているか?
僕の国にもその被害は大きく、危うく国が滅びる所だったよ。でもね、結局僕には関係のないことだったんだ。僕は3番目の王子。だから国を継ぐ事もなく、ただ適当な人生を送るつまらない日々が待っているだけだった。
そこで考えたんだ。今の地位を利用して君たちの国を僕の国にしてしまおうとね。前々から計画は進んでいた。今日この日に、君は罪人の王として語り継がれ、そして僕はこの国を救う救世主として姫を妃にもらう。そういう筋書きだった。なのに、君は姫を連れ出してしまった。僕の計画は全てダメになったよ。どう責任を取ってくれるんだ?
とりあえず、ここで死んでくれないか?」

「おまえの道理は知ったこっちゃない。ただな、こいつの旦那は俺一人だ!
こいつと国民を守るのが俺の役目だ!絶対にこいつを渡しはしない!」

「いいだろう。ここで死んでしまえば証人は誰一人残らない。
炎で焼かれてしまえば死人に口なしだ。」

ロレンスが勢いよく王子に向けて剣を振り下ろした。剣先スレスレで交わした王子は、近くにあった木の棒を構え、ロレンスに対抗する。火事の消火で大量に水をかけていたせいで辺り一面泥沼のようになっていた。その足場でバランスを崩したロレンスの一瞬を見逃さなかった王子の一撃が、ロレンスの腹部に直撃。ロレンスは、気絶しその場に倒れ込んだ。

「王子!無事ですか!先ほどの罪人を取り押さえてあります。」

「罪人は後だ!まずは城の消火が最優先だ!頼めるか。」

「「はい。」」

王子の身を案じ王子を探していた兵士達だったが、そのまま王子の号令で城の消火へ向かった。城の炎は中々収まらず、2日ほどの消火活動でやっと鎮火する事が出来た。
そして数日は、怪我人の手当と城の修復で忙し日々が続いていた。そんなある日の午後、使用人が姫に頼まれていたという届け物を持って姫の部屋を訪れていた。

「お妃様。ご要望の品がやっと届きました。」

「ありがとう。」

使用人が姫に何かを手渡すと、嬉しそうな顔で姫は王子の元へ向かった。
王子は復興活動を民や兵士ばかりにやらせずという事で、自らも率先して現場に立ち一緒に汗を流していた。

「ちょっと!あんた、泥だらけじゃない!
王子なんだから王子らしい格好しなさいよ。」

「うるせぇ。俺にはこのくらいが丁度良いんだよ。
で?なんかようか?」

「今は休憩でしょ?
だからお茶持ってきたの。一息入れなさいよ。」

「お!気が利くじゃないか、って熱い茶持ってくんなよ。
せめてこういうときは気を利かせて水出しの冷たいヤツだろ!」

「折角持ってきたのにそんなこと言わないでよ!」

「でも、折角だからもらうか。
お、うめぇじゃんこれ。」

「でしょ?私の一番のお気に入りなんだから。
大事な時にしか開けないやつよ。」

「じゃぁ、ありがたくもらっておくか。」

こうして、戦争ばかり続いた国同士の争いだけでなく、国を滅ぼそうとしていた企みも無事阻止する事に成功したのでした。
そして、相変わらずな二人の夫婦喧嘩ケンカは続きますが、変わらず国の平和も永遠と続いたそうです。
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