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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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「いいか、これはお前の為にももう一度言っておく。あいつは躊躇なく人を殺せるような人間だ。そしてあいつ自身人を人だと思った事なんて一度もない。あいつにとって人は実験用マウスにすぎないんだ。一歩間違えればアンタも…いや、いい。とにかく。俺から話したこと以外のあいつについての詮索は不要だ。」

あんたも、という言葉に安室は引っ掛かりを覚えた。が今は先に彼の話を聞くことにした。なんせこれは貴重な情報源だから。

「わかりました。その忠告は素直に聞くことにします。…ですが、彼女についての情報があまりにも少ない。最初は貴方自身の事から聞き出そうと思いましたが…それは重要ではない。…そうですよね?貴方自身もコントロールしきれなかったアブサンを僕に押し付けたいというのが本音ではないんですか?」
安室はそんなこと思っていなかった。しかしあえてそう言ったのだ。的外れなことを言ってそれを相手に指摘させる。そして情報を落としてくれるのを待つ為。

「はっ。とんだ勘違いだな。俺はコントロールしきれないんじゃない。しないんだ。それに、あいつをコントロールしてほしいならアンタに預けに来ない。まず普通の人間にアブサンをコントロールするなんて無茶な話だ。…あいつのことを誰かに押し付ける気なんざさらさらねぇよ。…だが、あいつの教育者は俺じゃダメだ。その協力者としての適任がアンタなんだよ。バーボン。…3つの顔を使い分け、あらゆる方面の知人がいるだろう。…俺にはそういう方面の知人はあいにく居ないもんでな。」

「友達、いないんですか?」

「失礼な!この国にだよ!ドイツにいたんだからこっちに知り合いなんて片手でことたりるくらいの人数しかいねーよ!」

「なれその数少ない知人に預けるというの手では?」
安室がそういうとシルバはポケットの中のスマホをチラリと見ると席を立った。

「…それができてたら苦労してねーよ。…知人も含め俺たちは一度ドイツに帰る。アンタには悪いがしばらくアブサンの事をたのむよ。…そろそろあの店員が帰って来る頃だろ。…会計とこいつは置いていく。」
シルバはそう言ってわざとアブサンの鞄を置いて席を立った。

そして会計時にニ枚のメモを残した。

「何かあったらそこに連絡をくれ。俺の番号だ。あとアブサンに直接繋がる番号はこっちだ。俺の代わりに世話を頼むぞ。」

「わかりました。」

「あぁ、それと。あいつはたまに妙なモンに興味を持つ。それをうまく利用すればいいかもな。」

そう言い残してシルバは店を出て行ってしまった。

「妙なもの…?」
安室はシルバが出て行った後しばらく考えこんでいたが梓が帰ってきて考えるのをやめた。

「あ!安室さん!いけません!ちゃんと在庫の確認はしないと!」
冷凍庫を開けてアイスの在庫がある事に気付かれてしまった。

「すみません、うっかりしてました。梓さんが出て行った後に気が付いて彼にはメロンクリームソーダをお出しできたんですけど、梓さんには申し訳ないです」
しゅんとしてみせると梓はもう、と言いながら仕方ないと許してくれたようだ。

「でも大変だったんですよ?どこのスーパーも売り切れって!バニラアイスだけ全部!何でバニラアイスだけ売り切れ出たんでしょう…?」
梓は探偵の真似事のように考え込む素振りをした。

「ハハっ、よほどのバニラアイス好きが引っ越して来られたんですかね?」
そう言いながら安室はシルバの姿を思い浮かべた。

その頃シルバは…

「おい、玲。バニラアイス食わねーか?」
シルバはアイスを片手にアブサンに差し出した。

「いらない。それよりお砂糖ないの。」
シルバを冷たくあしらったアブサンは拳銃を磨いていた。

「はぁ。…だよな、お前は超偏食だもんな…」

「お砂糖は?はやく。」

「はいはい。…糖分って意味じゃ一緒だろう…」
シルバは深くため息をついてバニラアイスを冷凍庫に戻しに行った。

「なんか言ったでしょ。」

「なんも言ってねーよ。この地獄耳。」

「やっぱり言ったんだ。」

「チッ。…ほらよ、砂糖。」
シルバはアブサンの前に角砂糖をみせると彼女は黙って口を開けたのでシルバは角砂糖を彼女の口に放り込んだ。

「ん。」
それは彼女なりのありがとうの意味の「ん。」だった。

「ったく…まともに礼くらい言えよなっ。」

「礼のかわりに聞いてあげる。…彼は利用価値有りなの?」

「今のところ微妙だが…まぁ、ゼロじゃないな。僅かだが利用価値があると俺は思ってる。」

「ふーん。わざわざ私に荷物を忘れるように仕向けてそれを置いてきた価値はあったってわけね。」

「まぁ、そうだな。"俺達"は明日ドイツに戻る。バーボンがお前に接触してくるだろうよ。」

「へぇ。そんなとこまでこじつけてこれたんだ。…シルバにしては有能だね。」

「お前相変わらず失礼だな」

「褒めたつもりだけど。まぁいいや。私は"昔の私"を演じればいいんでしょ?」

「はっ…本当、お前は恐ろしいよ。…そうしてくれ。これは俺たちの国にとっても重要な事だ。」

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