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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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「全く恐ろしい限りですね。…そういえばまだ彼女の名前を教えていただいてませんが…」

「あぁ、そうだったな。正直言えば俺はあいつの名前を知らないんだ。出会った時はNo.0と名乗ってたから暫くはゼロって呼んでたけど今はあいつにぴったりのコードネームを貰ったからな、アブサンっていうな。」

「名前も歳もわからないのに運転免許があるんですか?」

「正しく言えば偽造して発行してる。ちょっとやそっとじゃわからないほどに精密にできあがってるよ。」

「それを作ったのは誰ですか?」

「俺。…っていうのは嘘。俺じゃなくて作ったのはアブサン本人だ。俺は偽名を考えてやっただけだ。難波 玲ってな。山田花子は流石に不味いとおもってな。No.0のNoを難波、ゼロをレイって呼んだ名前にさせたんだ。なかなかだろ?」

「難波、玲ですか…」

「あぁ、確かアンタの本名も零だったか?ま、アブサンにとって名前なんて自分につけられた番号くらいにしかおもってないから気にするなよ。…あ、そうだ。それから、これは悪魔で俺が直接得た情報じゃないんだが…」

「…?」

「名前のついでに教えといてやる。アイツはどうも変な組織に育てられたみたいでな。そこでは被験体として育てられただけで人として生活していたわけじゃないようだ。…あくまでも俺の情報のスペシャリストに又聞きした話だがな。被験体としてだから名前の代わりに番号。人と意思疎通することに膨大な時間を要した。そういうことだ。」

「被験体…として…」
降谷は考え込んだ。

「どうも俺に襲いかかってきた時はその組織から脱獄してきたみたいでな。…今はどうかわからないが…あいつを人として見ると足元をすくわれることがある。…気をつけろ。」

「どういう意味ですか?」
降谷のその言葉を無視してシルバは続けた。

「俺の仲間の中であいつは利用価値有りと判断された。…人間が本来持っている筈の感情を一切持たず、犯罪におけるスペシャリストと言ってもいい。余計な感情がない分、躊躇することも迷うこともなく任務を遂行できる。…あいつはそういう人種の生き物だ。」

先程まで仲良く食事をしていた相手の話をしているようには思えない程の酷い言い様に降谷は余程のことなのだろうと考えていた。

「あなたとアブサンはそれなりに仲が良いように見受けられましたが…そんな言い方をするとは。」

「仲がいい、ねぇ…。どうなんだか。」
シルバはそう言うと悪い笑顔をして鼻で笑った。

「アブサンのことについてこれ以上話せることはなさそうに見えますが…貴方自身についても教えていただけますか?…シルバさん」安室は前のめりになりながらシルバの前にメロンクリームソーダを置いた。

「わざわざ二駅も先の駅から歩いて15分かかる業務用スーパーに梓さんを買い出しに行かせたんですから?最初から長話をする計算だったんでしょう?それならば、しっかりと話してもらわないといけませんね。」
安室は挑発的な目をシルバに向けた。

「ハハッ…気づかれてたのかよ。…まぁいい。いずれ話すことになるだろうしな。それに、少し話したところで問題なんておきやしない。」

「ホォ、随分と余裕なんですね。」

「"まだ"こっちにはアブサンがいるからな…」シルバの"まだ"という表現に違和感を覚えながらも安室はシルバの言葉を待った。

「俺はドイツ在住。ドイツ人の父と日本人の母の間に産まれてる。国籍はドイツにある。職業は、いろいろ。歳は32。」

「32…?」
安室は驚きのあまり目を大きく見開いた。それも無理はない。目の前にいる彼はどう見ても10代。顔立ちから体格、服装、雰囲気、全てをとっても10代にしか見えないのだ。唯一30代らしいといえば所々の話し方くらいだろうか。

「おいおい。アンタにだけはそんなに驚かれたくないもんだな?アンタもとても29には見えないぜ?」

「…っ」
安室は驚いていた。名前を知られている時点で歳くらい知られているとは思っていたが年齢まで詳しく調べられているとは思うと気分は良くなかった。

「まぁいい。あとは何だ。何が知りたい」

「職業はいろいろと仰ってましたが…その仕事は組織と関係があるんですか?」

「んー、ない、とも言い切れないし、ある、とも言い切れない。今はグレーゾーンってところだな。」

「組織と関わりがあったとして、組織側の人間なのか、それとも組織に噛み付こうとしている犬なのか、どちらが近いですか?」

「それもグレーゾーンだ。」

「ではアブサン単体では?」

「おいおい、俺への興味はそれだけかよ!結局アブサンにゾッコンじゃねーか!」

「答えてください。」

「はぁ…。仕方ねぇな。…その答えもグレーゾーンだ。」

「は?」

「最初に言ったはずだ。アブサンを人としてカウントするなと。…あいつは限りなく組織に近しい存在で、限りなく遠い存在でもある。近いとか近くないとかの話じゃねんだ。人じゃないものに白黒着けようなんざ無理難題もいいところだ。」

「仰ってる意味がわかりませんね。」
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