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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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「アブサンと出会ったのは今から15年前だ。正式な年齢はわからないが当時13歳くらいだろうか。仕事でドイツにいた時だ。日本人なんて観光客以外で見ることなんてほとんどなかったからな。まさかあんな出会い方をするとは思わなかったよ。…黒いフルスモークのリムジンからあいつは飛び降りてきたんだ。そしてそのまま俺の車のトランクに潜り込んだ。…目にも留まらぬ速さでトランクの鍵を空けてな。…ただの子供じゃ無いとは思ったがさほど警戒もしていなかったんだ。様子を見に行こうとトランクを開けたらいきなり液体をぶっかけられてな。すぐにトランクに引きずりこまれた。そんで暗いトランクの中でいきなり何度も切りつけられてな。死ななかったのが不思議なくらいだ。そしてあいつは何度も日本語でこう言った。"私に触れるな"そう言われても触れてきたのはそっちだろって話だがな。」

「それで、どうしたんです?」

「わかったから止めろと言ったが聞く耳も持たないもんでな。俺の血がトランクの外に漏れて大騒ぎになったんだ。幸い騒ぎに気付いた友人がトランクを開けてすぐに俺と拘束したアブサンをその場から移動させてくれたよ。血まみれの車もすぐに知人に連絡して片付けさせたから騒ぎにはならずにすんだがな。」

「随分とそういう事にご友人の方はなれていたんですね?」

「察しろ。普通の友人じゃ無いことくらいわかるだろう。まぁいい。…で、その後だ。俺はもちろん病院送り、拘束したあいつは逃げ出しては捕まりの繰り返し。俺が回復して動けるようになったのは1年後。その1年後にまた俺はあいつを見つけて拘束した。そん時にまた俺は半殺しにされるところだったんだけどな、幸い防弾チョッキを着てたからギリギリセーフってところだ。ま、防弾チョッキが1枚ゴミ切れになっちまったがな。…あいつと話す為にわざわざ熊用の檻に入れて話をしたんだ。」

「熊用って…」

「ま、それでも2度逃げられているがな。3度目の正直ってやつか?やっと話せたと言ってもあいつは自分のやりたい事に必要なものを用意してもらえるなら大人しくすると訳の分からない条件を提示してきた。俺たちはそれを飲んでまずあいつに紙とペンを用意した。」

「紙とペン?」

「あぁ。俺が檻に持っていくと奪い取るようにそれを取って床に這いつくばって計算を始めた。ガリレオかよってな。…で、式ができ上がるなり薬品を要求してきた。流石にあいつには薬品をかけられたこともあったからすぐには了承せず、あいつと取引をすることにしたんだ。」

「取引?」

「あぁ。俺のもとで生活するなら好きな薬品を与える、そういう取引をしたんだ。意外にもすぐに飲んでもらえてな。だがそれで更に5回逃げられてあいつがこうして普通にしてくれたのは出会ってから3年後だ。」

「3年もかかったんですね…」
これは大変な取引を受けたかもしれないとバーボンは思った。

「で、俺のもとで生活するうちにあいつが訳の分からない言語を喋ることがわかった。…どこの国の言葉でも無い言葉だ。その言葉を理解するのに5年。言葉を理解してからは俺のことを信用できる存在だと思ったのか、あらゆる情報を持ってくるようになったんだ。俺の仕事に関する重要な情報をな。」

「なるほど…気を許してもらえれば貰うほどこちらに有利ということですね。」

「そうだな。…ま、一つを除けばだけどな。」

「何か問題でも?」

「あいつは人間生活における常識がなっていない。ま、さっきの食生活を見たからわかるだろうけど、あいつは本当に困ったやつだ。決まった時間に寝ないし偏食だし交通ルールまるっきり無視だ。」

「免許は持ってるんですか?」

「…一応な。何でも操縦できる。だが死にたくなければあいつの運転する乗り物に乗らないことだな。…俺は数え切れないぐらい殺されかけた。これはマジでヤバい。」
そう言われたが自分も無謀な運転をしたことがあるのでそんなに心配していなかったが安室はこの甘い考えを後々後悔することになるのはまだ先のこと。

「肝に命じておきますよ」
軽く流して話の続きを聞こうとした。

「あとはそうだな…あぁ、これは大事だ。あいつに砂糖を与え忘れるとエネルギー切れでどこから構わずぶっ倒れて寝る癖があるから気をつけろ。銃弾が飛び交う戦場だろうが運転中だろうが本当にどこかれかまわずだ。気をつけろ。」

「信じがたいことですが、わかりました。」

「あいつの脳みその動きはもはや人間じゃねーよ。よっぽど糖分が頭に使われるんだろうな。多分さっき帰ったのもまた何か思いついたからだろうな。」

「彼女は一体何にそんなに頭を使うんです?」

「主に研究が多いな。組織でもその能力をかわれてんだ。…それ以外もだろうけど。爆弾、薬品、武器、なんでも作れるぞ。どこで覚えたんだか…全くと言っていいほど普通とは異なる作りをしている。爆弾なんて作らせたら誰にも解除できやしない。本当に恐ろしい限りだ。」
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