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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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「そんな怒んなよ!俺がせっかく気を利かせて男同士の話をしようとしてるのに!」
シルバはそう無邪気に言った後、前のめりに肘をついて挑発的な顔をした。

「気になるだろ?アブサンについて。俺との関係もな?」

そう言うとニヤリ、と笑った。

安室はそれにどう反応しようか一瞬迷ったが瞬時にバーボンとして取り繕った。

「えぇ。興味深いですね。アブサンについても貴方についても。」

バーボンがそう言うとアブサンは怪しげな笑みを一瞬浮かべたがすぐに爽やかな笑顔を向けた。

「んじゃ、アブサンについて話す前に俺達が掴んでいるアンタについての情報だな。」
シルバがそう言うと安室は思わず息を飲んだ。

「予想はついてるだろうが…俺達が掴んでいるのはアンタが公安の犬ってことだ。そんでもってアンタの同僚は既に自害している。その件に関わったFBIの赤井秀一と犬猿の中だとか。…あんたの直属の部下の風見裕也も俺達はマーク済みだ。…そして協力者についてもな。あとは家がメゾン木馬だったかな?顔に似合わず和風の…」

「家の中まで…」

「ま…アレだな。セキュリティのしっかりした家に住んでない方が悪い。」
悪びれる様子もなくヘラっと笑うシルバに安室は殴りたくなる気持ちを抑えた。

「で、犬1匹と同居中。ここでバイトを始めたのは上の階に住む毛利小五郎っていうへっぽこ迷探偵に弟子入りする為。…ま、本来の目的は毛利小五郎の家に転がり込んでいる小さな探偵さんに近づく為だろうがな?あのガキもなかなか頭がキレるそうじゃないか。…流石は毛利小五郎の知恵袋と賞賛される程の実力の持ち主だな。」

「そこまで調べ上げられているなんて思いもしませんでしたよ。貴方達の調査能力はわかりました。」

「問題はそこからだ。あんたは言われてるんだろう?シルバーブレッドには手を出すな、とベルモットからな。あとエンジェルだったか?ベルモットのお気に入り。」

「さぁ。どうでしょうか」

「俺たちに隠し事は無駄だぜ。諦めろ。今から言うことにとぼけたら…」

シルバはそう言うと大きめに着ていたスカジャンの袖から銃口を見せた。

「俺もまだ目立ちたくないんだ。」

「わかった。」
安室はゴクリと息を飲んでそう答えた。

「よし。じゃあ話を続けようか。…俺の第一の目的はそのシルバーブレッドに近づくことなんだ。そして本来の力を借りたいと思ってる。だが俺が近づく訳にはいかない。そこでアブサンに動いてもらっているというところだ。」

「なぜ貴方が直接動くことができないんです?」

「それはまだ言えないな。ま、俺については後で話す。それよりもだ。バーボン、アンタには少々協力してもらいたいんだ。取引をしようか。」

「協力…?」

「あぁ。あいつの協力者になってもらいたい。毛利小五郎の知恵袋、江戸川コナンという少年に近づくための協力者にな。」

「断る…とは言わせてもらえないようですね。」バーボンはシルバの服の袖口から見えるキラリと光る銃口をみてそう言った。

「協力っつっても簡単だ。しばらくの間あいつの面倒を見てもらいたい。そして江戸川コナンに接触する機会を作ってくれ。俺からの要望はそれだけだ。」

「僕にメリットがあるようには感じませんが。…取引というのはお互いにメリットがないと成立しないのでは?」

「あぁ、メリットなら大ありだ。アブサン直々に組織の情報を流してもらえるっていうな。…普通の捜査じゃ出てこないような情報もだ。」

「ホォ。それは確かな情報ですか?」

「あぁ。アブサンの情報に誤りがあったことはない。保証はしよう。…ま、もとよりあいつが情報を与えるのは信頼に値する存在だと思う相手にしか教えないがな。」

「ホォ。つまり彼女の世話をしながら交流の糸口を見せ、信用される必要があると。」

「そういうことだな。…どうだ、悪くない話だろ?」

「えぇ。かなり難易度は高そうですがね。」

「あいつは俺以外の人間と交流したことがない。…組織の人間もただの仕事仲間くらいにしか考えていない。相当難しいぞ。」
そう言うとシルバは銃口を覗かせていない方の袖をめくりあげた。

「これくらいの傷は序の口だと思え。」

そこには腕全体に酷い傷跡があった。
驚きのあまり安室は言葉を失った。

「これはあいつと初めて出会った時に付いた傷だ。未だに痛むことがある。ま、アンタもそれなりに鍛えてるようだし、早々に殺されることは無いだろうが………殺されても文句はなしだぞ。」
そう言うシルバの顔からは笑顔が消えていた。

「えぇ。くれぐれも殺されないように気をつけますよ。」

「なら取引成立だな。…じゃ、手始めにあいつについて話しておくか。」

「えぇ。彼女について少し教えていただかないとうっかり殺されてしまいそうですから。それは是非。」

「よし、いいだろう。ただ俺が今から話すのは俺が出会ってからのアブサンの話だ。それ以前については俺も知らない。それだけは頭にいれておいてくれ。」

「わかりましたよ。」
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