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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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緊迫した空気が続く中、それを破ったのは彼女だった。

「おかわり。」
そう言ってバーボンとシルバの間に角砂糖の入っていた皿を置いた。そして残りのコーヒーを飲み終えると空になったグラスも皿の横に置いた。

「シルバ、喋りすぎ。黙れ、うざい。」
反抗期の娘のように不貞腐れたような表情で誰とも目を合わせずただテーブルの上にあるお絞りを意味なく触りながらそう言った彼女はまたテーブルの下で小さくシルバの足を蹴っているようだった。

「あ、わかったわかったから蹴るなって!この服今日おろしたてなんだからな!」
シルバがそう言うとアブサンはフンっと鼻を鳴らすとシルバの頬をつねった。

「シルバは言い方がキモい。…単刀直入にいう、バーボン。」
そう言って彼女はバーボンと目を合わせるとバーボンをまっすぐ見たまま言葉を続けた。

「探られるの嫌いなの。コソコソキモい。聞きたいことがあるのなら直接聞いてきて。」

そうい終えると彼女は「あとおかわり早くして。」と机を爪でコツコツと鳴らしてバーボンを急かした。

バーボンはそう言われてどうしようか、瞬時に考え余裕のある笑みを見せておいた。

「わかりました。貴女に回りくどい方法はむだなようですね。ならこちらも単刀直入に聞かせてもらいましょうか。…貴女は何者ですか。」バーボンがそう言うもアブサンの表情はぴくりともかわらなかった。

そしてバーボンはアブサンご要望のものを用意しながら続けた。

「貴女には不可解な点が多すぎましたから。ベルモットから聞いたところ、貴女は組織に入って1日でコードネームを貰うほど異例の出世だとか。どのような仕事をこなしたんですか?どれだけ調べても貴女の仕事に関する記録がありませんでした。一体どんな手を使ったんです?…あなたがNOCならば僕は貴女について報告して組織の中枢部に潜り込もうと思って探っていたのですが…貴女についての情報はお手上げ状態。探りが得意な僕も骨が折れる思いですよ。一体、どういうギミックが隠されているんです?」

悪い顔をしてそう静かに言ったバーボンにシルバは「おぉ、言うねぇ〜」と感心しながらも楽しむようなそぶりを見せており、アブサンはまたフッと鼻を鳴らすと口を開いた。

「だから探られたくないから情報が出ないように手を回してるのに。コソコソされるとほんとキモい。…だから、私からも忠告。」そう言うと彼女は少し間を空けてバーボンをまっすぐに見据えた。

「私もバーボンについての情報は握ってるの。ただ言わないであげてるのは面白いから…それだけ。貴方が私の情報を握ったところでメリットは"ゼロ"なのに対して私にとってはメリットもデメリットも一つもない。下手に私に探りを入れて組織から疑いをかけられるのと、大人しく私から手を引いて今貴方にできる、貴方のやるべき事だけをやるのか…どちらがお利口なのか少し考えたらどうなの。」

彼女がそう言い終える頃には安室の顔は強張っていた。
自分が公安である事は既に彼女に知られていて、おまけにこちらは彼女についての有力な情報は持ち合わせていない。
もし、万が一。彼女が自分の情報を組織にリークしたら…そんなことを思うと自然と深刻な顔になってしまった。

そんな凍りついた空気を破ったのはシルバだった。

「まぁそう怖い顔すんなって!言うこと聞いてこいつから手をひけば"今は"何もしねーよ!安心しな!」

シルバはそう言ってニカッと笑ったが言葉の裏がありそうだとバーボンは感じ取った。

「…わかりました。貴女について調べないことにします。」
バーボンはここで条件を飲んでおくべきだと判断した。

「是非そうして。…シルバ、私先帰る。眠い。」バーボンの了承を得たアブサンはさっさと席を立ちポアロを出て行った。

「あ!またあいつ俺に会計も荷物持ちも任せやがって!クッソ!」
アブサンかお会計をせずに出て行ったことに気がついたシルバはそう言って机を軽く叩いた。そしてバーボンに向かって「メロンソーダ追加だ!」と勢いよく言った。

と同時に梓が戻ってきた。
「遅くなっちゃってすみません!いつものスーパーが売り切れてたので探すのに時間かかっちゃいました!」
そう言って安室にスーパーの袋を手渡した。

それを見ていたシルバはにやりと笑い、何かを思いついたようだった。

「あ!買出し係帰ってきたんじゃん!俺、メロンクリームソーダが飲みたいって言ってんのにアイスがないからダメだって透が言うもんだからさ!困ってたんだよ〜」
まるで昔からの知り合いのように。シルバは透と親しげにバーボンを呼んだ。バーボンは「は?」と言いそうな顔を堪えて笑っていた。

「え!お知り合いだったんですか?あ!それじゃあ私アイス買ってきますね!」梓は安室が「ちょっと待ってください」と引き止める声も聞き終わらぬままお店を出て行ってしまった。

「どういうつもりだ」
バーボンのどすの利いた声がシルバの耳に届いた。その時のバーボンの顔といえば般若の如く。
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