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アブサン

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
目次

20

そのころ風見達は…

風見「まったく!どういうつもりですか!こんなに大怪我をして!」

「そんなに大したことないと思うんだけど。」

風見「無茶しすぎです!」

「安室よりましだけどね。」

風見「…完全に肯定はできませんが…一理ある…。それにしてもこんな傷を作って…おまけにあのビルから飛び降りて来るなんて!」

「いや、だって協力者は守らないとでしょ?違う?」

風見「それもそうですけど!!」

「まぁいいじゃん。全員無事だったんでしょう?」

風見「えぇ。ただ、なぜあの場所の爆弾だけ残したんですか?」

「スイッチ押して爆破しなかったら奴らは疑うでしょ?それなら初めに作動させるであろう爆弾をわざと残しておくのが妥当じゃない?」

風見「でもなぜそれを先に言っておいてくれないんですか!」

「え、だって安室ならわかってくれると思って。」

風見「そんなのわかりませんよ!!!全くあなたと言う人は…」

「いや、わかってるはずだよ。ただ、私が裏切る可能性を捨てきれなかった。ただそれだけだよ。」

風見「そんなことは…」

「風見って多分優しいよね。私に気を使わなくていいよ。私、そういうのあまり気にしてないから。」

風見「…」

「安室の判断は正しい。私が万が一裏切り者だったとしたら。…今頃爆弾は解除されてないまま、爆破されたりしたら…中にいた人は全滅。それどころかコナンくんを人質に取る可能性だってある。だけどコナンくんを私に託してくれただけでも十分だよ。そこで安室が用心深すぎるとコナンくんさえ連れてきてくれなかっただろうし、そうなれば全ての爆弾を解除することはできなかったよ。」

風見「そう…ですか…」

「あまり暗い顔されちゃうとあとで安室に私が風見をいじめたと思われちゃうのも困るしね。」

風見「いじっ…?!」

そんな会話をしていると降谷が2人の目の前に現れた。

降谷「怪我の具合はどうだ。」

「問題ないよ。大したことないし。」

降谷「全く…無茶をする…」

「大丈夫。私できないとわかってることはしない主義だから。あ…でも、できることは何でもするよ。」

降谷「ホォ…それは味方なら頼もしい限りだが…」

「敵なら脅威。そう考えるのは当然のこと。」

彼女がそう言うと安室は驚いた顔をした。

「別に、疑われるのも裏切られるのも慣れてるから。好きにして。あ、ねぇ。もう手当終わったから帰れる?早く帰りたいんだけど。」

彼女はそう言って立ち上がった。

が、次の瞬間

ふらりと前のめりになるとそのまま先程ま目と前で仁王立ちしていた安室の腕に抱きとめられた。

「…っ。あ、ごめん…。」

そう言って頭を抱えながら安室から離れた。

風見「大丈夫ですか?顔色が…」

「何でもない。…もう帰っていいよね。…安室の車近くにあるんでしょ?」

降谷「お前…。」

「煤にまみれたからはやくシャワーをあびたいの。」

そう言った彼女に降谷は何かを察して回れ右をした。

降谷「付いて来い。すぐ近くに停めてある。…後は頼んだぞ、風見。」

風見「は、はいっ!」

そうして二人は救護場所を後にした。

2人はあたりに散らばる爆破の残骸を避けながら歩いていき、路地を出たところに降谷の車があった。

彼女は大人しく車に乗り込むと目を閉じて窓に頭をよりかけた。

降谷「いつからだ。」

「何のこと?」

降谷「体調が悪かったんだろう。さっき支えた時に熱があったように思えたが。」

「気のせいじゃない?」

そう言うと閉じていた目を開けてきちんと座り直した。

降谷「寝ておけ。着いたら起こしてやる。」

降谷は何か言いたげに彼女の方をちらりと見たがそのまま車を発進させた。

そして降谷の家に着くまで2人は無言のままだった。

自宅の駐車場に着くなり彼女は車を降り、降谷より先に階段の方へと歩いていく。

それを追いかけるわけでもなく、ゆっくり着いていくとドアの前で開けろとばかりに立つ彼女の横から鍵を開けた。

「お邪魔します。…お風呂借りるね。」

そう言って降谷の返事を待たずにお風呂に入っていった彼女。

いつもなら何か一言小言を言ってやる所だが降谷は「あぁ。」と一言返事をして彼女の着替えを持って帰っていないことに気がつきすぐに自分の服を脱衣所に用意してやった。

少ししてシャワーを浴び終えたのか、ガタッと脱衣所の方から聞こえてきたのでもうリビングに戻るものだろうと降谷も自分の風呂の用意を始めた。

しかし、10分経っても20分経っても彼女が脱衣所から出てくる気配がなかった。

まさか、倒れでもしているんじゃないか、そう思って降谷は脱衣所の扉をノックした。

降谷「おい、大丈夫か?…開けるぞ」

降谷はそっとドアを開けた。

「あむ…じゃないな、降谷か。」

降谷「全く…こんな所で何をしている。髪も乾かさずに…」

脱衣所には座り込んでタオルを頭にかぶっている彼女がいた。

「別に…あ、そうか。降谷も風呂入んないとだね。すぐに出るよ。」

そう言って彼女はふらっと立ち上がると降谷の横を通り過ぎてリビングでまた同じように座り込んでいた。

ハロがそんな彼女に心配そうに近寄るがそれにさえ反応する様子はなかった。
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