第九問⑥
「最後の一人、どうぞ」
「……はい」
Aクラスからは最強の敵、霧島翔子。
そして、ウチのクラスからは当然、
「俺の出番だな」
坂本雄二。コイツしかいない。
「教科はどうしますか?」
Aクラス側はやけに静かだ。霧島が負けるわけないとでも思っているのだろう。
そんな中、雄二は、高らかにこう宣言する。
「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は百点満点の上限ありだ!」
ざわ………!
雄二のそんな宣言に、Aクラスにざわめきが生まれる。
「上限ありだって?」
「しかも小学生レベル。満点確実じゃないか」
「注意力と集中力の勝負になるぞ……」
これで俺たちにも、勝利の可能性が見えてくる。
それが理解できたからか、Aクラスの生徒もざわついているのだろう。
「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。少しこのまま待っていてください」
ノートパソコンを閉じた高橋先生が教室を出て行く。
それを見送り、俺と明久は雄二に近づく。
「雄二、あとは任せたよ」
「負けたら……わかってるよな?」
「ああ任された」
「………… (ビッ)」
ムッツリーニが歩み寄り、ピースサインを雄二に向ける。
「お前の力には随時助けられた。感謝している」
「………… (フッ)」
ムッツリーニは口の端を軽く持ち上げ、元の位置に戻っていった。
「坂本君、あのこと、教えてくれてありがとうございました」
「ああ。明久のことか。気にするな。あとは頑張れよ」
「はいっ」
明久のこと……か。
「ん? なんで智也は僕のこと睨んでるの?」
「……気にするな」
「では、最後の勝負、日本史を行います。参加者の霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かって下さい」
戻ってきた高橋先生が、クラス代表二人に声をかける。
「……はい」
短く返事をした霧島が教室を出て行った。
「じゃ、行ってくるか」
「はい。行ってらっしゃい。坂本君」
「ああ」
姫路さんに送り出された雄二が戦場に向かう。
これでいよいよ決着。どのような結果であれ、これで試召戦争が幕を閉じる。
「皆さんはここでモニターを見ていて下さい」
高橋先生が機械を操作すると、壁のディスプレイに視聴覚室の様子が映し出された。
『では、問題を配ります。制限時間は五十分。満点は100点です』
画面の向こうで、日本史担当の飯田先生が問題用紙を裏返しのまま二人の机に置いた。
『不正行為等は即失格になります。いいですね?』
『……はい』
『わかっているさ』
『では、始めてください』
二人の手によって問題用紙が表にされる。
「いよいよじゃな、智也」
「ああ。いよいよだな」
「これで、あの問題が出なかったら雄二は……」
「……雄二の集中力や注意力が霧島に劣る以上、延長戦になったら勝ち目はないだろうな」
「うむ。じゃがもし出ていたら」
「ああ」
もし出ていたら、俺たちの勝ちだ。
誰しもが固唾を飲んで見守る中、ディスプレイに問題が映し出される。
出ているのだろうか……?
《次の( )に正しい年号を書きなさい》
( )年 平城京に遷都
( )年 平安京に遷都
流石は小学生レベルの問題。これなら明久でもわかりそうだ。
( )年 鎌倉幕府設立
( )年 大化の改新
「あ……!」
「む……!」
出て、いた……。
「と、智也っ」
「ああ」
「これでわしらのっ……!」
「ああ! これで俺たちの卓袱台が」
『システムデスクに!』
揃ったFクラス皆の言葉。
「最下層に位置した俺たちの、歴史的勝利だ!」
『うぉぉぉぉっ!』
大地を揺るがすような歓喜の声。
日本史勝負
限定テスト100点満点
Aクラス霧島翔子
97点
VS
Fクラス坂本雄二
53点
Fクラスの卓袱台がみかん箱になった。
「……はい」
Aクラスからは最強の敵、霧島翔子。
そして、ウチのクラスからは当然、
「俺の出番だな」
坂本雄二。コイツしかいない。
「教科はどうしますか?」
Aクラス側はやけに静かだ。霧島が負けるわけないとでも思っているのだろう。
そんな中、雄二は、高らかにこう宣言する。
「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は百点満点の上限ありだ!」
ざわ………!
雄二のそんな宣言に、Aクラスにざわめきが生まれる。
「上限ありだって?」
「しかも小学生レベル。満点確実じゃないか」
「注意力と集中力の勝負になるぞ……」
これで俺たちにも、勝利の可能性が見えてくる。
それが理解できたからか、Aクラスの生徒もざわついているのだろう。
「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。少しこのまま待っていてください」
ノートパソコンを閉じた高橋先生が教室を出て行く。
それを見送り、俺と明久は雄二に近づく。
「雄二、あとは任せたよ」
「負けたら……わかってるよな?」
「ああ任された」
「………… (ビッ)」
ムッツリーニが歩み寄り、ピースサインを雄二に向ける。
「お前の力には随時助けられた。感謝している」
「………… (フッ)」
ムッツリーニは口の端を軽く持ち上げ、元の位置に戻っていった。
「坂本君、あのこと、教えてくれてありがとうございました」
「ああ。明久のことか。気にするな。あとは頑張れよ」
「はいっ」
明久のこと……か。
「ん? なんで智也は僕のこと睨んでるの?」
「……気にするな」
「では、最後の勝負、日本史を行います。参加者の霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かって下さい」
戻ってきた高橋先生が、クラス代表二人に声をかける。
「……はい」
短く返事をした霧島が教室を出て行った。
「じゃ、行ってくるか」
「はい。行ってらっしゃい。坂本君」
「ああ」
姫路さんに送り出された雄二が戦場に向かう。
これでいよいよ決着。どのような結果であれ、これで試召戦争が幕を閉じる。
「皆さんはここでモニターを見ていて下さい」
高橋先生が機械を操作すると、壁のディスプレイに視聴覚室の様子が映し出された。
『では、問題を配ります。制限時間は五十分。満点は100点です』
画面の向こうで、日本史担当の飯田先生が問題用紙を裏返しのまま二人の机に置いた。
『不正行為等は即失格になります。いいですね?』
『……はい』
『わかっているさ』
『では、始めてください』
二人の手によって問題用紙が表にされる。
「いよいよじゃな、智也」
「ああ。いよいよだな」
「これで、あの問題が出なかったら雄二は……」
「……雄二の集中力や注意力が霧島に劣る以上、延長戦になったら勝ち目はないだろうな」
「うむ。じゃがもし出ていたら」
「ああ」
もし出ていたら、俺たちの勝ちだ。
誰しもが固唾を飲んで見守る中、ディスプレイに問題が映し出される。
出ているのだろうか……?
《次の( )に正しい年号を書きなさい》
( )年 平城京に遷都
( )年 平安京に遷都
流石は小学生レベルの問題。これなら明久でもわかりそうだ。
( )年 鎌倉幕府設立
( )年 大化の改新
「あ……!」
「む……!」
出て、いた……。
「と、智也っ」
「ああ」
「これでわしらのっ……!」
「ああ! これで俺たちの卓袱台が」
『システムデスクに!』
揃ったFクラス皆の言葉。
「最下層に位置した俺たちの、歴史的勝利だ!」
『うぉぉぉぉっ!』
大地を揺るがすような歓喜の声。
日本史勝負
限定テスト100点満点
Aクラス霧島翔子
97点
VS
Fクラス坂本雄二
53点
Fクラスの卓袱台がみかん箱になった。
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