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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
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第七問④

「明久、随分と思い切った行動に出たのう」


「まあ、良くやったよ、お前」



 終戦後、木下と共にBクラスに戻り、最初に明久にそう告げる。



「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」



 100%全てが返るわけじゃないとはいえ、素手で鉄筋コンクリートの壁を壊したんだから、その痛みは
並じゃないはずだ。



「なんとも……お主らしい作戦じゃったな」


「で、でしょ? もっと褒めてもいいと思うよ?」


「後のことを何も考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴しい作戦じゃな」


「……遠まわしに馬鹿って言ってない?」


「馬鹿だな、お前」


「直接的に言われたっ!?」



 学校の壁を壊すなんて、問題にならないわけがない。明久の放課後は、職員室でのハートフルコミュニケ
ーションで埋まってしまったことだろう。乙。



「ま、それが明久の強みだな」



 いつの間にやら近づいていた雄二が、バンバンと明久の肩を叩く。
 馬鹿が強み……。不名誉だな。



「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談といくか。な、負け組代表?」


「…………」



 床に座り込んでいる根本。さっきまでの強気が嘘のようにおとなしい。



「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除し
てやらんでもない」



 そんな雄二の発言に、ざわざわと周囲が騒ぎ始めた。



「落ち着け、皆。前にも言ったが、俺達の目標はAクラスだ。ここがゴールじゃない」


「うむ。確かに」


「ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を飲めば解放してやろうかと思う」



 Dクラス戦でも同じことを言ってたし、皆すんなり納得してくれたようだ。雄二の性格を理解し始めてい
るのだろう。



「……条件はなんだ」



 力なく根本が雄二に問う。



「条件? それはお前だよ、負け組代表さん」


「俺、だと?」


「ああ。お前には散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったんだよな」


「そうだそうだー!」


「やかましいぞ転校生!」


「何でっ!?」



 凄い言われようだけど、周りの皆からのフォローがないのを見るあたり、根本はそれだけのことをやって
いるのだろう。


「そこで、お前らBクラスに特別チャンスだ。Aクラスに行って、試召戦争の準備が出来ていると宣言して
来い。そうすれば今回は設備については見逃してやってもいい。ただし、宣戦布告はするな。すると戦争は
避けられないからな。あくまでも戦争の意志と準備があるとだけ伝えるんだ」


「……それだけでいいのか?」



 疑うような根本の視線。俺としては、それだけじゃ物足りないんだが。



「ああ。Bクラス代表がコレを着て言った通りに行動してくれたら見逃そう」



 そう言って雄二が取り出したのは、先ほど木下が着ていた女子の制服。

 おそらく、根本の制服、正確には制服に入っている封筒を手に入れる為だろう。……雄二の個人的感情も
入っているような気がするけど。



「ば、馬鹿なことを言うな! この俺がそんなふざけたことを……」



 同じ男でも、木下は躊躇いもせずに着たのに……。

 男としては、根本の方が正しい気がしないでもないが。



『Bクラス生徒全員で必ず実現させよう!』


『任せて! 必ずやらせるから!』


『それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな!』



 Bクラスの仲間達の暖かい声援。これを見るだけで、根本がどんな行動をしてきたのかがわかる気がする。



「んじゃ、決定だな」


「くっ! よ、寄るな! 変態ぐふぅっ!」


「くたばれ、糞が。……黙らせたぞ、雄二」


「お、おう。すまんな」



 今まで色々とやられてきた分、根本の腹部に拳を打ち込む。だいぶスッキリした。



「んじゃ、着付けをしてやってくれ、明久」


「了解っ」



 ぐったりと倒れている根本の服を脱がせる明久。

 その姿は変態に見えなくもない。



「う、うぅ……」



 うめき声をあげる根本。まずい、目を覚ましそうだ。もう少し強めに殴っておくべきだったか。



「死ね!」


「がふっ!」



 念のため追加攻撃。その後、明久が見慣れた男子の制服を剥ぎ、女子の制服をあてがう。



「うーん……。これ、どうするんだろう?」



 明久の手が止まる。やり方がわからないのだろう。

 そうして明久が困っていると



「私がやってあげるよ」



 Bクラス女子の一人がそう提案してくれた。



「そう? 悪いね。それじゃ、折角だし可愛くしてあげて」


「それは無理。土台が腐ってるから」



 酷い言いようだ。



「じゃ、よろしく」



 明久はその女子に根本を託し、脱がした男子用制服を持ってBクラスから出ていった。

 きっと、あの封筒を姫路さんの元に返しに行くんだろう。

 はぁ……。また明久の好感度だけが上がるのか。くそっ! 忌々しい!




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