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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
目次

第六門⑧

「………… (トントン)」


「お、ムッツリーニか。何か変わったことはあったか?」



 気が付けばムッツリーニがそばに来ていた。

 今日のムッツリーニは情報係で、戦闘には直接参加せずに周囲を警戒していた。相手の動きを逃さずチェ
ックする為だとか。



「ん? Cクラスの様子が怪しいだと?」


「………… (コクリ)」



 ムッツリーニの話によると、どうやらCクラスが試召戦争の用意をしているらしい。

 Fクラスのバカ達と違って、Aクラスを狙うとは思えない。ということは――



「漁夫の利を狙うつもりか。いやらしい連中だな」



 雄二の言うとおりこの戦争の勝者を相手に戦うつもりなのだろう。疲弊している相手ならやりやすいだろ
うから。



「どうすんだ、雄二?」


「んー、そうだなー」



 ちらりと時計を見る。四時半。まだそんなに遅い時間じゃない。



「Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラスを使って攻め込ませるぞ、とか言って脅してやれば俺達に攻め込む
気もなくなるだろ」


「そうかもな。それに、俺達が勝てるなんて思ってないだろうし」



 CクラスがFクラスと結ぶのはそう難しい話ではなさそうだ。



「よし。それじゃ今から行ってくるか」


「そうだな」


「秀吉は念の為ここに残ってくれ」


「ん? なんじゃ? ワシは行かなくていいのか?」


「お前の顔を見せると、万が一の場合にやろうとしている作戦に支障があるんでな」



 顔を見せると駄目になる作戦ってなんだろう。



「よくわからんが、雄二がそう言うのであれば従おう」


「なら俺も残ろう。めんどいし」


「お前は来るんだ! 一応、なにかあったときの為にな」


「えー」


「本気でシバくぞ」


「ごめんなさい」



 Fクラス勝利の為だ、頑張ろう。うん。

 ……けっして雄二が怖いわけじゃないんだぞ?



「じゃ、行こうか。ちょっと人数少なくて不安だけど」



 木下を残して、俺、明久、雄二、姫路さん、ムッツリーニというパーティーでCクラスに向かう。



「吉井。アンタの返り血こびりついて洗うの大変だったんだけど。どうしてくれんのよ」


「それって吉井が悪いのか?」



 廊下に出たところで、ハンカチで手を拭いている島田さんと鞄を肩に担いでいる須川に出会う。



「あ、島田さんに須川君。ちょうどよかった。Cクラスまで付き合ってよ」



 すぐさま明久が二人を勧誘する。考えてることはきっと一緒だ。



「んー、別にいいけど?」


「ああ、俺も大丈夫だ」




 盾、もとい生け贄ゲット。

「Fクラス代表の坂本雄二だ。このクラスの代表は?」



 Cクラスの教室の扉を開くなり、雄二がそこにいる全員に告げる。
 室内にはかなりの人数が残っていた。ムッツリーニの情報通り漁夫の利を狙って戦争の準備をしていたん
だろう。



「私だけど、何か用かしら?」



 俺達の前に出てきたのはまじりっけ無い黒髪をベリーショートにした気が強そうな女子。



「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間はあるか?」


「クラス間交渉? ふぅん……」



 雄二の言葉を聞いていやらしい笑みを浮かべる。



「ああ。不可侵条約を結びたい」


「不可侵条約ねぇ……。どうしようかしらね、根本クン」



 Cクラス代表は振り返り、教室の奥にいる人達に声をかけた。
 ん? 根本?



「当然却下。だって、必要ないだろ?」


「なっ!? 根本君! Bクラスの君がどうしてこんなところに!」



 奥から取り巻きを引き連れて現れたのは、短く刈り揃えた黒髪と口の周りに整えられてないヒゲ、見るか
らに性格の悪そうな目つきをした男子生徒だった。こいつがBクラス代表の根本なのだろう。



「酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて、試召戦争に関する行為を一切禁止したよな?」


「何を言って──」


「先に協定を破ったのはソッチだからな? これはお互い様、だよな!」



 根本恭二が告げると同時に取り巻きが動き出す。そしてその背後には先ほどまで戦場にいた、小柄な数学
の長谷川先生の姿が隠されていた。



「長谷川先生! Bクラス芳野が召喚を──」


「させるか! Fクラス須川が受けて立つ! 試獣召喚!」



 Bクラスの芳野が雄二に対して攻撃しようとしたところを、間一髪で須川が身代わりになる。ヤバい、今
の須川は格好良く見える。



「僕らは協定違反なんてしていない! これはFクラスとCクラスの──」


「無駄だ明久! 根本は条文の 『試召戦争に関する一切の行為』 を盾にしらを切るに決まってる!」


「ま、そゆこと♪」


「へ理屈だ!」


「へ理屈も立派な理屈の内ってな」


「明久、転校生、ここは逃げるぞ!」


「くそっ!」


「仕方ない、ここは偉大なる人生の先輩の台詞を借りよう。やな感じ~!」


「くだらねえことやってんじゃねえ!」



 戦闘を行っている須川に背を向け、Cクラスから離脱しようと駆け出す。



数学

Bクラス芳野孝之
        161点
    VS

Fクラス須川亮
         41点



「逃がすな! 坂本を討ち取れ!」



 背後から聞こえてくる根本の指示と複数の足跡。

 はっきり言ってこれはかなりマズい。明久たちはBクラス相手で勝負にならないだろうし、頼みの綱の姫
路さんも、今日の戦争で数学の点数は消費してしまっているはず。


 きっと根本は姫路さんが数学を消費しているのを知っているから長谷川先生を呼んだのだろう。汚いやり
方だけど、効果的だ。



「おい転校生! お前足止めしてこい!」


「貴様っ! 俺に死ねと?」


「この中でBクラス相手に戦えるのはお前しかいないだろうが! さっさと行け!」


「バカ野郎! 俺は数学が苦手なんだ! お前俺の点数知ってんじゃねえのかよ!」


「知らん!」



 ……あれ? 



「だってお前、戦力を把握するために俺に補充テスト受けさせたんだろ? それなのになんで知らないんだ
よ?」


「アレはお前にテストを受けさせる為の方便だ! お前が勉強できるってことは今日知った」


「死ねっ!」



 そういえば、教室が襲われたときに、Bクラスの生徒を倒したって言ったら少し驚いていたっけ。


 なるほど、あの時驚いていたのは、俺がBクラスの生徒を倒せるだけの学力を持っていないと思っていた
からだったのか。納得。


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