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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
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第六問②

(智也、下位クラスは負けたら設備のランクを一つ落とされるんじゃ)



 木下がそっと教えてくれる。そうだったのか。



「設備のランクを落とされるんだよ」



 明久が答える。どうやら、姫路さんにこっそり教えられていた様だ。



「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」


「そうだな。常識だ」


「では、上位クラスが負けた場合は?」


「「悔しい」」



 明久と声が重なる。



「ムッツリーニ、ペンチ」


「ややっ。僕等を爪切り要らずの身体にする気かっ!?」


「やめてくれぇー! 暴力は何も生まないからぁ!」



 間違ってないと思うんだけど。悔しいよな?



「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」



 またもや姫路さんのフォローが入る。いい子だなあ。



「つまり、うちに負けたクラスは最低の設備と入れ替えられるわけだね」


「ああ。そのシステムを利用して、交渉をする」


「交渉、ですか?」


「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替え
たらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備で済むからな。まずうまくいくだろう」


「ふんふん。それで?」


「それをネタにAクラスと交渉する。 『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』 といった具合にな」


「なるほどな」


 学年で二番手のクラスと戦った後に休む暇なくまた戦争。これはさすがのAクラスでもキツいだろう。

 Fクラスも連戦にはなるが、俺達には不満というモチベーションがある。勝っても何のメリットもないA
クラスの生徒はFクラスごときに時間をくうのも嫌がるはず。モチベーションの差は歴然としている。



「じゃが、それでも問題はあるじゃろう。体力としては辛いし面倒じゃが、Aクラスとしては一騎打ちより
も試召戦争の方が確実であるのは確かじゃからな。それに──」


「それに?」


「そもそも一騎打ちで勝てるのじゃろうか? こちらに姫路がいるということは既に知れ渡っていることじ
ゃろう?」



 FクラスがDクラスに勝ったとなると、当然その勝ち方に注目が集まる。姫路さんの存在はもはや周知の
事実だろう。そうなると、当然相手も姫路さんに対してなんらかの対策を練ってくるはず。



「そのへんに関しては考えがある。心配するな」



 皆の不安とは対照的に自信満々な雄二。



「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」


「ふーん。ま、考えがあるならいいけど」



 残念なことに、今は雄二の考えとやらを信じるしかない。

 まあ、Dクラス戦のときの様になんとかなるだろう……多分、な。



「で、明久」


「ん?」


「今日のテストが終わったら、Bクラスに宣戦布告して来い」


「断る。雄二か智也が行けばいいじゃないか」


「貴様っ、何故俺を巻き込む!」



 嫌に決まってるだろう。



「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」


「ジャンケン?」



 確かに、それなら公平だけど……。



「OK。乗った」


「……なあ、それって俺もやるのか?」


「当然!」


「……はぁ」


「よし。負けたヤツが行く、で良いな?」



 雄二に嫌々コクリとうなずいて返す。



「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦でいこう」



 そんな雄二の提案。

 心理戦? どういうことだ?



「わかった。それなら僕はグーを出すよ」



 と、明久。さて雄二はどう出る?



「そうかそれなら俺は──」



 明久が馬鹿正直にグーを出すと思うのか。それとも裏をかいてくると思うのか。



「お前がグーを出さなかったらブチ殺す」



 ちょっ……! なにその心理戦!?

 しょうがない。明久には悪いけど……。



「行くぞ、ジャンケン」


「わぁぁっ!」



パー (俺&雄二)
グー (明久)



「決まりだ。行って来い」


「絶対に嫌だ!」



 だろうな。俺でも嫌だ。



「Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」


「それもある!」


「それなら今度こそ大丈夫だ。保障する」



 雄二がまっすぐな目で明久を見る。



「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしい」


「そっか。それなら確かに大丈夫だね」



 いや、駄目だろ。



「でも、お前不細工だしな……」



 雄二が溜息混じりに呟く。その通りだ。



「失礼な!365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」


「5度多いぞ」


「実質5度じゃな」


「いや、5度もねえよ。頑張って1度が限界だな」


「三人なんて嫌いだっ!」


「とにかく、頼んだぞ」


「頑張れ、美少年 (笑)」



 こうして昼食はお開きになり、再びテスト漬けの午後が始まった。



「……言い訳を聞こうか」



 午後のテストも無事終了し、放課後。

 Bクラスに宣戦布告に行った明久は暴行にでもあったのか、千切れかけた袖を手で押さえながら帰ってき
た。



「予想通りだ」


「くきぃー! 殺す! 殺し切るーっ!」


「落ち着け」


「ぐふぁっ!」



 雄二が鳩尾を強打する。これはさすがに同情せざるを得ない。



「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」



 爽やかに言い残して教室を出て行く雄二。外道だ。



「うぅ……腹が……」


「……大丈夫か?」



 横になったまま腹部を擦る明久。



「うぅ……智也は僕を心配してくれるの……?」


「ああ……さすがに、な」


「そう……なら僕のこと保健室の連れてってよ」


「だが断る!」


「ええっ!? なんでさっ!?」


「や、めんどいから」


「最低だっ!」



 じゃあな、と告げて、教室を後にする。


 教室を出るとき、ふと、視界の端に姫路さんが写った。

 鞄を抱え込んでキョロキョロとあたりを見回している。かなり挙動が不振だ。まるで何かを警戒している
ようにも見える。


 ……明久宛てのラブレターでも書いたのかもしれないな。


 そんなことだろうと思って、俺は特に気にせず、そのまま帰路についた。
























 この選択を後に後悔することになるのを、このときの俺は、まだ知らない。


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