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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
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第五問④

「おう、待たせたな! へー、こりゃ旨そうじゃないか。どれどれ?」



 屋上に着くと、雄二は真っ先に弁当へと手を伸ばす。意地汚い奴だ。

 おいしそうな卵焼きを掴み、口へと運び――



 パク    バタン──ガシャガシャン、ガタガタガタガタ



 ジュースの缶をぶちまけて倒れた。



「さ、坂本!? ちょっと、どうしたの!?」



 少し後ろを歩いていた島田さんが雄二に駆け寄る。なんだ!? 何が起きた!?

 小刻みに震える雄二に近寄る。よく見ると、ムッツリーニも雄二と同じように身体を震わせていた。



「あ、足が……攣ってな……」


「あはは、ダッシュで階段の昇り降りしたからじゃないかな」


「うむ、そうじゃな」


「そうなの? 坂本ってこれ以上ないくらい鍛えられてると思うけど」



 雄二を見る。明らかに死にそうな表情。足が攣った程度じゃこんな風にはならないだろう。



「ところで島田さん。その手をついてるあたりにさ」


「ん? 何?」


「さっきまで虫の死骸があったよ」


「えぇっ!? 早く言ってよ!」


「ごめんごめん。とにかく手を洗ってきた方が良いよ」


「そうね。ちょっと行ってくる」



 雄二の死因を解明しようとしていると、いつの間にやら島田さんが席を立っていた。


「島田はなかなか食事にありつけずにおるのう」


「全くだね」



 何故か朗らかに笑う男三人。



(明久、何があったんだ? 雄二に毒でも盛ったのか?)



 ビニールシートの上に腰を下ろし、小声で明久に尋ねる。

 すると、明久は遠い目をしながら答える。



(……姫路さんの実力だよ)


(……OK、理解した)



 雄二やムッツリーニがこんな状態になるくらいなのだから、よほど美味しくないのだろうか。少なくとも
見た目は美味しそうなんだが……。

 と、他の連中が後ろで必死に作戦会議を行っていたので、俺もそれに混ざる。



(明久、今度はお前がいけ!)


(む、無理だよ! 僕だったらきっと死んじゃう!)


(流石にワシもさっきの姿を見ては決意が鈍る……)


(雄二がいきなよ! 姫路さんは雄二に食べてもらいたいはずだよ!)


(いや、姫路さんが食べてもらいたいのはお前だろ、明久)


(そんなことないよ! 智也は乙女心をわかってないね!)


(お前には言われたくないわっ!)


(俺もわかってないのはどちらかと言うとお前のことだと──)


(ええい、往生際の悪い!)


「あっ! 姫路さん、アレはなんだ!?」


「えっ? なんですか?」



 明久が指した明後日の方向を姫路さんが見る。

 なるほど、明久の考えがわかったぞ。よし!



(観念しろ、雄二!)


(お、おい、何を――)


(おらぁっ!)


(もごぁぁっ!?)



 雄二の後ろに回りこみ、羽交い絞めにする。その隙に明久が雄二の口の中一杯に弁当を押し込んだ。目を
白黒させている雄二を見て、明久が顎を掴んで無理やり咀嚼させる。さすがに可哀想だ。



「ふぅ、これでよし」


「すまんな……俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ」


「……お主ら、存外鬼畜じゃな」



 木下の言葉と、更に激しく震える雄二。そんなもの気にしてたら今後生きていけないさ。




 ……いや……うん。雄二、ごめん。
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