第五問③
「……ん?」
ふと、視界の端に入る姫路さんの姿。手に持ったバッグを身体の後ろに隠しながら、顔を赤らめもじもじ
としていた。……なるほど。
「ちょっと待て、お前ら。昨日の会話、もう忘れたのか?」
言って、姫路さんの方を見る。姫路さんも俺の意図に気付いたのか、意を決した様に皆の方を見る。
「え、えっと……、お、お昼なんですけど、その、昨日の約束の……」
「おお、もしや弁当かの?」
「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」
と、身体の後ろに隠していたバッグを出す。
「迷惑なもんか! ね、雄二!」
「ああ、そうだな。ありがたい」
「そうですか? 良かったぁ~」
ほにゃっと嬉しそうに笑う姫路さん。その笑顔を見ただけで、さっきのテストの疲れが吹きとんでいく。
「むー……っ。瑞希って、意外に積極的なのね……」
明久を親の仇のように睨む島田さん。そんな彼女を見て、もしかしたらと悪い予感がしたが、それは考え
ないことにしよう。今は、姫路さんの弁当を、楽しみたいからな。
「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上でも行くかのう」
「そうだな。こんなとこじゃ、気持ちよく食えないだろうし」
木下の提案に、俺も賛同する。姫路さんの弁当は、こんな汗臭い教室で食べていい代物じゃない。
「そうか。それならお前らは先に行っててくれ」
「ん? 雄二はどこか行くの?」
「飲み物でも買ってくる。昨日頑張ってくれた礼も兼ねてな」
「あ、それならウチも行く! 一人じゃ持ち切れないでしょ?」
「そういうことなら、散歩がてら俺もついていこう。どうせなら目一杯腹を空かしてから食べたいからな」
「悪いな。それじゃ頼む」
「おっけー」
「任せろ」
雄二も快く了解してくれる。
「きちんと俺達の分をとっておけよ」
「大丈夫だってば。あまり遅いとわからないけどね」
「そう遅くならないはずだ。じゃ、行ってくる」
「もし残ってなかったら……死ぬぞ?」
「誰がっ!?」
バッグを持って、雄二と島田さんと共に教室を出る。
目的地は一階の売店だ。
☆
「しっかし、島田も大変だな」
ガコン、と自販機からジュースが出てくる。それを取り出しながら、雄二はそんなことを言い出した。
「え? 何がよ?」
「気の利く恋敵がいるとさ」
「なっ!?」
「…………ゑ?」
雄二の爆弾発言に、島田さんは見る見るうちに顔を赤くしていく。
気の利く恋敵……それはきっと姫路さんのことだろう。そして、姫路さんが好
きなのは、明久。さて、島田さんの好きな人は?
「…………はぁ」
そんなのいくら馬鹿でもわかる。島田さんが好きなのは明久だ。さっきの悪い予感、当たっちまったな。
「どうした? 何で転校生が落ち込んでるんだよ?」
「……いや、Fクラスの女子は二人とも明久が好きなら、俺は誰と青春すればいいのかな、って思ってさ」
「なっ!? な、なな、何言ってるのよ! ウチは別に吉井のことなんて……その……」
「はぁ……行こうぜ? 弁当が待ってるぞ。……はぁ」
「ちょっ!? 竜崎聞いてるの? う、ウチは別に吉井のことなんて……」
「もうやめて! 俺のライフは……もう、ゼロなんだ……っ!」
未だに顔の赤い島田さんと、楽しそうに笑っている雄二。二人と共に階段を上り、屋上へと向かう。
なんかもう……この学校、嫌になってきた。
ふと、視界の端に入る姫路さんの姿。手に持ったバッグを身体の後ろに隠しながら、顔を赤らめもじもじ
としていた。……なるほど。
「ちょっと待て、お前ら。昨日の会話、もう忘れたのか?」
言って、姫路さんの方を見る。姫路さんも俺の意図に気付いたのか、意を決した様に皆の方を見る。
「え、えっと……、お、お昼なんですけど、その、昨日の約束の……」
「おお、もしや弁当かの?」
「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」
と、身体の後ろに隠していたバッグを出す。
「迷惑なもんか! ね、雄二!」
「ああ、そうだな。ありがたい」
「そうですか? 良かったぁ~」
ほにゃっと嬉しそうに笑う姫路さん。その笑顔を見ただけで、さっきのテストの疲れが吹きとんでいく。
「むー……っ。瑞希って、意外に積極的なのね……」
明久を親の仇のように睨む島田さん。そんな彼女を見て、もしかしたらと悪い予感がしたが、それは考え
ないことにしよう。今は、姫路さんの弁当を、楽しみたいからな。
「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上でも行くかのう」
「そうだな。こんなとこじゃ、気持ちよく食えないだろうし」
木下の提案に、俺も賛同する。姫路さんの弁当は、こんな汗臭い教室で食べていい代物じゃない。
「そうか。それならお前らは先に行っててくれ」
「ん? 雄二はどこか行くの?」
「飲み物でも買ってくる。昨日頑張ってくれた礼も兼ねてな」
「あ、それならウチも行く! 一人じゃ持ち切れないでしょ?」
「そういうことなら、散歩がてら俺もついていこう。どうせなら目一杯腹を空かしてから食べたいからな」
「悪いな。それじゃ頼む」
「おっけー」
「任せろ」
雄二も快く了解してくれる。
「きちんと俺達の分をとっておけよ」
「大丈夫だってば。あまり遅いとわからないけどね」
「そう遅くならないはずだ。じゃ、行ってくる」
「もし残ってなかったら……死ぬぞ?」
「誰がっ!?」
バッグを持って、雄二と島田さんと共に教室を出る。
目的地は一階の売店だ。
☆
「しっかし、島田も大変だな」
ガコン、と自販機からジュースが出てくる。それを取り出しながら、雄二はそんなことを言い出した。
「え? 何がよ?」
「気の利く恋敵がいるとさ」
「なっ!?」
「…………ゑ?」
雄二の爆弾発言に、島田さんは見る見るうちに顔を赤くしていく。
気の利く恋敵……それはきっと姫路さんのことだろう。そして、姫路さんが好
きなのは、明久。さて、島田さんの好きな人は?
「…………はぁ」
そんなのいくら馬鹿でもわかる。島田さんが好きなのは明久だ。さっきの悪い予感、当たっちまったな。
「どうした? 何で転校生が落ち込んでるんだよ?」
「……いや、Fクラスの女子は二人とも明久が好きなら、俺は誰と青春すればいいのかな、って思ってさ」
「なっ!? な、なな、何言ってるのよ! ウチは別に吉井のことなんて……その……」
「はぁ……行こうぜ? 弁当が待ってるぞ。……はぁ」
「ちょっ!? 竜崎聞いてるの? う、ウチは別に吉井のことなんて……」
「もうやめて! 俺のライフは……もう、ゼロなんだ……っ!」
未だに顔の赤い島田さんと、楽しそうに笑っている雄二。二人と共に階段を上り、屋上へと向かう。
なんかもう……この学校、嫌になってきた。
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