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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
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閑話②

「……なんで……この写真を……?」


「なんでって、もちろん撮ったからだけど?」



 それがどうした、とでも言いたげな顔をする明日香。

 手にある写真には、高一の時に罰ゲームで本気女装をさせられた俺の姿が。



「…………」



 この黒歴史に関する物は、全て葬り去ったはずなのに……。



「その写真はそれ一枚きり。データも消したから復元もできない。だから紅茶を淹れなさい」


「…………わかったよ」



 俺はしぶしぶ紅茶を淹れにキッチンに向かった。


                 ☆



「……で?」


「で?」



 味が薄いだの、熱くて飲めないだの、挙句の果てには紅茶は飽きたから緑茶のしろだの、我が侭に振り回
されること二十分。ようやく落ち着いたところで、明日香に尋ねる。



「結局何でお前は俺ん家に来たんだよ? お前ん家からは大分離れてるのに」



 明日香の家からここまで来るのに、少なくとも三時間はかかるだろう。

 ただの気まぐれで、この悪女がわざわざこの家まで来るはずがない。コイツの性格は、長年の付き合いで
分かっている。



「まあ落ち着きなさい。そうだ、これ」



 言いながら、空になったシュークリームの箱を指差す。



「お土産」


「箱がかっ!?」


「勿論。中身は私が食べちゃったから」


「…………」


「冗談よ。そう睨まないで、ほら」



 明日香が次に指差したのは、有名なケーキ屋の箱。中を見ると、数種類の色とりどりのケーキが入ってい
た。



「へえ……お前にしちゃ気がきくな」



 今までの明日香なら、こんな良い物持ってこなかっただろう。さっきみたいなゴミか、せいぜい百均のた
わし程度だったはずだ。

 高校一年生が終了してから二週間。こいつも少しは成長したのかもしれないな。



「で? お前はどれを食うんだ?」


「ん? 全部」


「…………。なら俺はどれを食えば?」


「? おかしなことを言うのね、智也は。残っているものを食べればいいじゃない」


「…………。一応聞こうか。残っているものって何だ?」


「勿論、その箱のことだけど? ケーキの香りが染み付いていて、おいしいかもしれないわよ?」


「んなわけあるかっ!」



 前言撤回。やっぱりコイツは変わっていなかった。





 結局、明日香はしぶしぶショートケーキをくれたわけだが、上に乗ってる苺は当然のごとく明日香の胃袋
の中へ消えていく。


 これってショートケーキなの?



「さて、と。お腹も満たされたし……これから何して遊ぶ?」


「帰れよ!」



 時刻は六時半。そろそろ帰らないと、明日香の家の人たちも心配するだろう。



「大丈夫よ。今日は両親共に帰ってこないから」



 俺の考えを読んだかのように、そう言う明日香。



「いや、でも、深夜の夜道を女子一人で帰るのは危ないだろう? だから帰れよ」


「へぇ、心配してくれるの?」


「全然」



 そんじょそこらの男じゃ、明日香を襲っても返り討ちにあうだろう。

 実際、コイツは昔年上の不良二人を相手に喧嘩を吹っかけ、見事勝利した過去があるからな。



「……そこは嘘でも心配したと言うところじゃない?」


「そうか。心配だ。嘘だけど」


「…………」



 チラリ、と懐から写真を取り出し、それを俺に見せる。何故か、怒ったような顔で。



「……なっ!? おま、そんな写真まで!?」


「欲しい? そうか、欲しいんだ。なら、そうね……今夜は泊まっていってください明日香様って言ったら
、考えてあげる」


「…………くそっ!」



 明日香の手にある写真には、メイド服姿の俺 (WITHパンチラ)。

 勘違いするなよ? 俺に女装趣味はないからなっ!



「ふふ、冗談よ」



 いつものように微笑を浮かべ、俺の黒歴史を放り投げる。

 俺はそれを素早く拾うと、丸めてゴミ箱に突っ込んだ。



「今夜、私は近くの知り合いの家に泊めてもらうことになっているから、心配しなくても大丈夫よ」


「いや、してねえよ」


「さて、と。そろそろお暇させてもらおうかな」


「無視かよっ!?」



 どこに置いてあったのか、明日香は大きな旅行鞄を持ち、玄関へと歩いていく。

 仕方なく、俺はそれを見送るために、その後を追った。




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