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バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
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第四問②

「と、とにかくだな。Dクラスの設備には一切手を出すつもりはない」


「それは俺達にはありがたいが……。それでいいのか?」


「もちろん、条件がある」



 まあ当然だろう。このまま解放したら、皆の士気も下がる以上この戦争の意味がなくなる。



「一応聞かせてもらおうか」


「なに。そんなに大したことじゃない。俺が指示を出したら、窓の外にあるアレを動かなくしてもらいたい
。それだけだ」



そう言った雄二の指差す方向には、Dクラスの窓の外に設置されているエアコンの室外機。



「Bクラスの室外機か」


「設備を壊すんだから、当然教師にある程度睨まれる可能性もあるとは思うが、そう悪い取引じゃないだろ
う?」



 この取引がDクラス側にとって悪い取引なわけない。事故をよそえば厳重注意程度で済むだろうし、それ
だけであの最低設備のFクラスで三ヶ月過ごすのを回避できるのだから。



「それはこちらとしては願ってもない提案だが、なぜそんなことを?」



 平賀の提案はもっともだ。俺達の目標はあくまでAクラスのはずだし、例えBクラスへの嫌がらせが目的
なら、もっとダメージを与えられる良い方法がたくさんある。

 それなのに、あんなエアコンにダメージを与えてどうするんだ?



「次のBクラス戦の作戦に必要なんでな」


「……そうか。ではこちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」


「タイミングについては後日詳しく話す。今日はもう行っていいぞ」


「ああ。ありがとう。お前らがAクラスに勝てるよう願っているよ」


「ははっ。無理するなよ。勝てっこないと思っているだろう?」


「それはそうだ。AクラスにFクラスが勝てるわけがない。ま、社交辞令だな」



 そのまま平賀はじゃあ、と手を挙げて去っていった。

「さて、皆! 今日はご苦労だった! 明日は消費した点数の補充を行うから、今日のところは帰ってゆっ
くりと休んでくれ! 解散!」



 雄二が号令をかけると、皆雑談を交えながら自分のクラスに向かい始めた。帰りの支度をするのだろう。



「雄二、智也。僕らも帰ろうか」


「そうだな」


「おう!」



 明久と雄二は、どこか疲れたような表情をしていた。実のところ、俺がこの戦争中にしたことはババ抜き
と姫路さんとの散歩だけだったりするので、疲労は全くと言っていいほど無い。

 点数も消費してないので、補充テストを受ける必要も無い。明日は楽だ。



「あ、あのっ、坂本君っ」


「ん?」



 皆の後に続くように教室に向かおうとする雄二を呼び止める声。姫路さんだ。



「お、姫路。どうした?」


「実は、坂本君に聞きたいことがあるんです!」



 胸に手を当て興奮気味に話す姫路さん。大事な話みたいだけど、姫路さんが好きなのは隣で馬鹿面下げて
いる明久のはず。じゃあ何を聞いてるんだろう?



「…………ああ」



 ふと思い出す試召戦争中の会話。姫路さんは、何故この戦争を起こしたか、それを聞いてるのだろう。…
…まあ確証はないけど。



「ま、元々興味があったが、きっかけはコイツがそんな相談をしてきたってコトだ」



 そんな思考をめぐらせていると、いつの間にか二人がこちらに歩いてきていた。



「あの、吉井君がそんなことを言い出した理由って……」


「さて。そう言えば、振り分け試験で何かあったみたいだが、それと関係があるかもしれないないな。バカ
にはバカなりに譲れないものがあった、ってコトだろ?」



 茶化すように、愛嬌たっぷりの笑顔で答える雄二。どこか誇らしげで楽しそうだ。



「振り分け試験って――それじゃ、やっぱり」


「俺の口から言って良い範囲はこれが限界だと思うが――多分、姫路の想像は間違っていないと思うぞ」



 ……ふむ。なるほど、馬鹿なりに譲れないもの……ねえ。

 ちらりと横にいる明久を見る。何故か雄二を睨んでいたが、どうせ馬鹿なことを考えているのだろう。



「さて明久、転校生。そろそろ帰るぞ」


「あ、うん。姫路さんとはもういいの?」


「ああ。これで決心も固まっただろうし、な?」



 雄二が問いかけると、ボンッと音が聞こえてきそうなほどに姫路さんの顔が真っ赤になった。これは凄い
隠し芸だ。



「ふーん、そっか。よくわからないけど、それじゃ帰ろうか。姫路さん、またね」


「あ、はい! さようなら!」



 顔を赤くしたまま手をブンブンと振る彼女。決心が固まった……ねえ。



「……頑張って、姫路さん。姫路さんならきっとうまくいくさ」


「ふぇ!? は、はい! ありがとうございます!」



 じゃあね、と手を振って先に出た明久と雄二を追いかける。本心としてはうまくいってほしくないんだけ
ど、友人の幸せを願ってないわけではないからな。



 ……まあ、うまくいったら明久を殺すだろうけど。
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