ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
目次

第三問①

「……なあ、雄二」


「何だ? 転校生」


「俺も突撃したいんだが」


「駄目だ」


「……けち」



 春の暖かな日差しが、ボロボロの窓から差し込むなか、ついにDクラス戦が始まった。


 今現在前線で格上相手に奮闘しているのは、木下率いる先行部隊。そして、そことFクラスの間あたりに
明久が部隊長の中堅部隊が配置されている。


 そんな友人達が頑張っている中、この俺、竜崎智也はFクラスの教室で雄二を含むクラスメイト数名とバ
バ抜きなんぞを興じていた。


 何故こんなことになっているかと言うと、雄二曰く、



『切り札ってのは、ここぞってときまで見せないもんだ』



 とのこと。理屈は分からんでもないが、皆が力戦奮闘してるときにのんびりババ抜きなんて……。

 こんな光景を――あ、ババ引いちまった――こんな光景を明久達に見られたらなんて言われるだろうか。



「なあ、雄――」


「駄目だ」


「……まだ何も言って無いぞ?」



 こんな会話が、さっきから何度も交わされている。

 仕方がない、ここは戦場の雰囲気だけでも感じよう。戦闘の様子を聞き取るんだ。



『さぁ来い! この負け犬が!』


『て、鉄人!? 嫌だ! 補習室は嫌なんだっ!』


『黙れ! 捕虜は全員この戦闘が終わるまで補習室で特別抗議だ! 終戦まで何時間かかるかわからんが、
たっぷりと指導してやるからな』


『た、頼む! 見逃してくれ!あんな拷問耐え切れる気がしない!』


『拷問? そんなことはしない。これは立派な教育だ。補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮
金二郎、といった理想的な生徒に仕立て上げてやろう』


『お、鬼だ! 誰か、助けっ──イヤァァ── (バタン、ガチャ)』


「………………」



 …………き、聞き間違い……だよな?



「……雄二」


「ん? 何だ?」


「俺、おとなしく教室にいるよ」


「そうしてくれ。おい横田、このメモに書いてあることを明久に伝えてこい」



 そう言って、小さな紙切れに何かを書いて、クラスメイトに手渡す雄二。何が書いてあるんだろう?














 横田が教室から出て数分後。



『全員突撃しろぉーっ!』



 どこからか、明久の叫び声が聞こえてきた気がした。


「ところで雄二」


「あん?」


「俺、試験召喚戦争のこと詳しく知らないんだけどさ……っし、上がり」


「クソッ、またお前が一番かよ。……で?」


「ああ。説明してほしいなぁって」



 しかたないな、と文句を吐きながらも、雄二は説明してくれた。




一、原則としてクラス対抗戦とする。各科目担当教師の立会いにより試験召喚システムが起動し、召喚が可
能となる。なお、総合科目勝負は学年主任の立会いのもとでのみ可能。


二、召喚獣は各人一体のみ所有。この召喚獣は、該当科目においてもっとも近い時期に受けたテストの点数
に比例した力を持つ。総合科目については各科目最新の点数の和がこれにあたる。


三、召喚獣が消耗するとその割合に応じて点数も減点され、戦死にいたると0点となり、その戦争を行って
いる間は補習室にて補習を受講する義務を負う。


四、召喚獣はとどめを刺されて戦死しない限りは、テストを受けなおして点数を補充することで何度でも回
復可能である。


五、相手が召喚獣を喚びだしたにもかかわらず召喚を行わなかった場合は戦闘放棄とみなし、戦死者同様に
補習室にて戦争終了まで補習を受ける。


六、召喚可能範囲は、担当教師の周囲半径10メートル程度 (個人差あり)。


七、戦争の勝敗は、クラス代表の敗北を持ってのみ決定される。この勝負に対し、教師が認めた勝負である
限り、経緯や手段は不問とする。あくまでもテストの点数を用いた 『戦争』 であるという点を常に意識す
ること。



「と、まあそんなところか」


「……さっぱりわからん」


「……詳しいことはこれを見ろ」



 言われたとおり、雄二に渡された紙を見る。

 そこに書かれていたのは、先程雄二の口から聞いたことと全く同じものだった。

 多分、雄二はこれを何度も見て暗記したんだろう。案外こいつは頭がいいのかもしれないな。今回、対D
クラス戦の作戦を考えたのもこいつだし……。




「須川っ! 離しなさい! 吉井を殺しに行くんだからっ!!」


「だから落ち着けって島田!」



 そんなことを考えていると、なにやら廊下から物騒な会話。

 引き戸特有の効果音を鳴らしながら教室に入ってきたのは、島田さんと、羽交い絞めしてそれを引きずる
……え~っと……そう、須川だった。



「何やってんだお前ら。島田、前線はどうした?」



 雄二がそう尋ねるも、島田さんから返ってくるのは 『吉井コロス』 の一言だけ。

 ……戦場は人を変える。本か何かで見た言葉を、俺は何故か思い出していた。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。