第一問⑤
「ち、違うよっ! ちょっとお茶目な十六歳につけられる愛称で」
「その通り、バカの代名詞だ」
「肯定するな、バカ雄二!」
「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路さんが小首を傾げながら尋ねる。そんな仕草をみたら襲い……コホン。
「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそういった類の雑用を、特例として物に触れるようになった試
験召喚獣でこなすといった具合だ」
「そうなんですか? それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そ
んなことができるなら便利ですよね」
そうだ、思い出した。
本来召喚獣は物に触れることができないけど、中には物に触れることのできる特別製の召喚獣があるって
学校案内に書いてあったはず。
ただ、召喚獣のダメージの何割かは所有者にフィードバックするはずだから、そこまで便利とは言えない
能力だ。
そして、そんな特別製の召喚獣を使役できる数少ない人物が、成績不良かつ学習意欲に欠ける生徒に与え
られるペナルティ、観察処分者である吉井明久なのだろう。
『おいおい。 ≪観察処分者≫ ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』
『だよな。それならおいそれと召喚できないヤツが一人いるってことだよな』
「気にするな。どうせ、いてもいなくても同
じような雑魚だ」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」
「さらに――」
そこまで言うと、何故か不敵な笑みを浮かべる雄二。
その不適な笑みのまま俺の方を見てきたので、俺はノーマルだとアイコンタクトで伝える。
「俺もノーマルだっ!」
どうやらちゃんと伝わったらしい。
「ん、コホン。さらに、俺達には切り札がある」
『切り札?』
雄二の言葉に俺を含めたクラス中の生徒全員が首を傾げる。
『そんなもんあるのか?』
「ああ。決定的な切り札がな」
これまた自信満々にうなずく雄二。そんな切り札が本当にあるんだろうか?
「まぁ、切り札って言うのはギリギリまで隠すものだからな。それが何か、今は誰にも言えないんだが……
期待はしていいぞ」
そんな雄二の言葉を聞いてか、吉井のせいで下がっていた士気が回復する。これなら、Aクラスに勝てないまでも、いい勝負はするかもしれない。
「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
『『『おおっ!』』』
「皆、この境遇は大いに不満だろう?」
『『『当然だ!!』』』
「ならば全員筆 (ペン) を執れ! 出陣の準備だ!」
『『『おおーーっ!!』』』
「俺達に必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『『『うおおーーっ!!』』』
「お、おー……」
クラスの雰囲気に圧されたのか、姫路さんも小さく拳を作り揚げていた。そんな姿を見ると、なんだか守
ってあげたくなる。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
「……下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」
姫路さんを見ながら妄想を膨らましていると、雄二と吉井がそんな話をしていた。
「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すような真似はしない」
「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
少しの間を空けて、吉井は使者になることを了承する。
クラスメイトの歓声と拍手に送り出され、吉井は毅然とした態度でDクラスに向かって歩き出した。
自己紹介の時から思っていたけど、吉井って――
「バカ……なのか?」
数分後、予想は見事的中した。
「その通り、バカの代名詞だ」
「肯定するな、バカ雄二!」
「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路さんが小首を傾げながら尋ねる。そんな仕草をみたら襲い……コホン。
「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそういった類の雑用を、特例として物に触れるようになった試
験召喚獣でこなすといった具合だ」
「そうなんですか? それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そ
んなことができるなら便利ですよね」
そうだ、思い出した。
本来召喚獣は物に触れることができないけど、中には物に触れることのできる特別製の召喚獣があるって
学校案内に書いてあったはず。
ただ、召喚獣のダメージの何割かは所有者にフィードバックするはずだから、そこまで便利とは言えない
能力だ。
そして、そんな特別製の召喚獣を使役できる数少ない人物が、成績不良かつ学習意欲に欠ける生徒に与え
られるペナルティ、観察処分者である吉井明久なのだろう。
『おいおい。 ≪観察処分者≫ ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』
『だよな。それならおいそれと召喚できないヤツが一人いるってことだよな』
「気にするな。どうせ、いてもいなくても同
じような雑魚だ」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」
「さらに――」
そこまで言うと、何故か不敵な笑みを浮かべる雄二。
その不適な笑みのまま俺の方を見てきたので、俺はノーマルだとアイコンタクトで伝える。
「俺もノーマルだっ!」
どうやらちゃんと伝わったらしい。
「ん、コホン。さらに、俺達には切り札がある」
『切り札?』
雄二の言葉に俺を含めたクラス中の生徒全員が首を傾げる。
『そんなもんあるのか?』
「ああ。決定的な切り札がな」
これまた自信満々にうなずく雄二。そんな切り札が本当にあるんだろうか?
「まぁ、切り札って言うのはギリギリまで隠すものだからな。それが何か、今は誰にも言えないんだが……
期待はしていいぞ」
そんな雄二の言葉を聞いてか、吉井のせいで下がっていた士気が回復する。これなら、Aクラスに勝てないまでも、いい勝負はするかもしれない。
「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
『『『おおっ!』』』
「皆、この境遇は大いに不満だろう?」
『『『当然だ!!』』』
「ならば全員筆 (ペン) を執れ! 出陣の準備だ!」
『『『おおーーっ!!』』』
「俺達に必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『『『うおおーーっ!!』』』
「お、おー……」
クラスの雰囲気に圧されたのか、姫路さんも小さく拳を作り揚げていた。そんな姿を見ると、なんだか守
ってあげたくなる。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
「……下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」
姫路さんを見ながら妄想を膨らましていると、雄二と吉井がそんな話をしていた。
「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すような真似はしない」
「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
少しの間を空けて、吉井は使者になることを了承する。
クラスメイトの歓声と拍手に送り出され、吉井は毅然とした態度でDクラスに向かって歩き出した。
自己紹介の時から思っていたけど、吉井って――
「バカ……なのか?」
数分後、予想は見事的中した。
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