変化
近侍を鶴丸に固定してから1週間が経過した。
最初はどうなることかと思っていたが、以外にもその仕事ぶりは真面目で、思っていたよりも仕事もはかどっている。
今までは公平性を重視して、交代制にしていたが、仕事に慣れる機会を提供出来ていなかったのかもしれない。
日を追う事に鶴丸は効率よく仕事を進めるようになり、事務的な仕事は昼には終わることが多くなった。
それは大変喜ばしいことなのだが、最近は仕事が早く終わりすぎて、やることが無い。
近侍以外の仕事は、皆慣れたものでほとんど指示だしがいらない。
特殊な出来事や、重要な案件がない限り、私は基本フリーになる。
普段なら皆の様子を見たり、資材の在庫管理・兵装の作成をしたりするが、人の目が気になって今はそれもままならない。
優秀なのは助かるが、正直とても暇だ。
それに加えて、仕事が終わったからと自室に篭ろうとすると、見守りが必要だと鶴丸は自室にもついてくるようになった。
他の男士に誤解されないようこっそりと来るのだが、神様にいつも見張られているのはなかなかに落ち着かない。
私の手は相も変わらず透ける仕様だ。
原因も未だ不明らしい。
心なしか透ける時間と頻度が多くなったような気がする。
包帯を巻いたりして隠そうとはしたのだが、逆に目立つと鶴丸から指摘を受けてやめた。
確かに、怪我をしていると勘違いされて、注目を集めてしまっては元も子もない。
着物の袖を若干長くして、指先しか見えないようにしてはみたが、それでもバレる危険があるのは変わらない。
思わず口からため息が漏れる。
いつになったらこの緊張感から解放されるのだろう…。
正直、手が透けようが透けまいが日常生活に支障がなければ大して気負うことも無いのだ。
しかし、主として指揮をとらねばならないという重圧、下手に混乱させることはの抵抗、バレないように気を遣うことが何より辛い。
人の目が気になって何も行動できないのは、私にとって相当なストレスだ。
そんな、私の様子を見かねてか、鶴丸はおやつ時になるとお茶とお菓子を持ってくる。
今日のおやつはカステラだ。
ふわふわしっとりした食感と優しい甘みが、私の緊張を和らげてくれる。
イタズラ好きなのは玉に傷だが、本当はとても優しいのだと、最近わかってきた。
近侍にするよう脅迫してきたのが嘘みたいに、毎日尽くしてくれている。
神様に尽くされるなんて、バチが当たりそうで怖い。
しかし、私へのイタズラは減ったものの、刀剣男士たちには積極的にイタズラを仕掛けているようだ。
バレそうになった時、誤魔化すために必要だろ?と言われてしまったが、わたしの部屋でイタズラの仕込みを始めるのは辞めて欲しい…。
仕掛けがわかってしまうし、それに引っかかる被害者が不憫でならない。
今も、後ろでなにやら怪しげなものを作っている…。
そんな鶴丸を後目におやつを食べていると、鶴丸は何かを思いついたようにバッと顔をあげる。
「なあ、主。明日は暇か?」
「日頃の業務が終われば特に用事はありませんが…。」
それを聞いて鶴丸はにんまりと笑う。
嫌な予感しかしない。
「じゃあ、明日は俺と万屋へ行こう!」
この本丸では、休日であれば外出は制限していない。
お小遣いもそれなりの額を渡しているため、各々好きなように使っている。
「えっと…、何か欲しいものでもありましたか?」
「ちょっとな!」
何故教えてくれないのだろうか…。
背中に嫌な汗がつたう。
欲しいものがあるなら1人で万屋に行って欲しい…。
「…でしたら、明日はお休みにしましょう。別に1日くらいそばを離れても大丈夫です。」
「いや、それはダメだ!何かあったらどうするんだ!」
「1日自室に篭もっていますから…」
「駄・目・だ!」
鶴丸はふたりで行きたいようで頑として譲らない。
なかなか頑固な性格をしている。
最近、近侍業務ばかりで鶴丸も退屈だったのかもしれない…。
いや、休みをあげようとしても本人が拒否をしている状態だし…。
いやいや、そもそも私に信用がないから休みを取りたくても取れない可能性もある…。
だとしたら、迂闊な私が悪いのだし万屋くらい付き合わなければいけないのでは…?
暇を持て余しているから男士へのイタズラも激化している可能性もあるし…。
ここで万事屋に行けば多少のリフレッシュになって、少しは落ち着いてくれるかもしれない…。
「……万屋だけですよ?」
何を言ってもふたりで行くと言い張り、なかなか休みをあげられない罪悪感、他の刀剣男士への被害を考え、ついには根負けしてしまった。
「よしっ!じゃあ、明日の未の刻に!」
心なしか鶴丸がウキウキしているように見える。
そんなに休みが欲しかったのだろうか…。
お願いだからイタズラグッズなどを買いませんように…。
そんなことを思いながらも、無邪気にはしゃいでいる鶴丸を見て、私も悪い気はしなかった。
まあ、喜んで貰えるならいいか…。
絆されているのはわかっている。
それでも、こんな距離も悪くないと思えるのはある意味成長したのかもしれない。
少しだけ明日が楽しみに思えた。
最初はどうなることかと思っていたが、以外にもその仕事ぶりは真面目で、思っていたよりも仕事もはかどっている。
今までは公平性を重視して、交代制にしていたが、仕事に慣れる機会を提供出来ていなかったのかもしれない。
日を追う事に鶴丸は効率よく仕事を進めるようになり、事務的な仕事は昼には終わることが多くなった。
それは大変喜ばしいことなのだが、最近は仕事が早く終わりすぎて、やることが無い。
近侍以外の仕事は、皆慣れたものでほとんど指示だしがいらない。
特殊な出来事や、重要な案件がない限り、私は基本フリーになる。
普段なら皆の様子を見たり、資材の在庫管理・兵装の作成をしたりするが、人の目が気になって今はそれもままならない。
優秀なのは助かるが、正直とても暇だ。
それに加えて、仕事が終わったからと自室に篭ろうとすると、見守りが必要だと鶴丸は自室にもついてくるようになった。
他の男士に誤解されないようこっそりと来るのだが、神様にいつも見張られているのはなかなかに落ち着かない。
私の手は相も変わらず透ける仕様だ。
原因も未だ不明らしい。
心なしか透ける時間と頻度が多くなったような気がする。
包帯を巻いたりして隠そうとはしたのだが、逆に目立つと鶴丸から指摘を受けてやめた。
確かに、怪我をしていると勘違いされて、注目を集めてしまっては元も子もない。
着物の袖を若干長くして、指先しか見えないようにしてはみたが、それでもバレる危険があるのは変わらない。
思わず口からため息が漏れる。
いつになったらこの緊張感から解放されるのだろう…。
正直、手が透けようが透けまいが日常生活に支障がなければ大して気負うことも無いのだ。
しかし、主として指揮をとらねばならないという重圧、下手に混乱させることはの抵抗、バレないように気を遣うことが何より辛い。
人の目が気になって何も行動できないのは、私にとって相当なストレスだ。
そんな、私の様子を見かねてか、鶴丸はおやつ時になるとお茶とお菓子を持ってくる。
今日のおやつはカステラだ。
ふわふわしっとりした食感と優しい甘みが、私の緊張を和らげてくれる。
イタズラ好きなのは玉に傷だが、本当はとても優しいのだと、最近わかってきた。
近侍にするよう脅迫してきたのが嘘みたいに、毎日尽くしてくれている。
神様に尽くされるなんて、バチが当たりそうで怖い。
しかし、私へのイタズラは減ったものの、刀剣男士たちには積極的にイタズラを仕掛けているようだ。
バレそうになった時、誤魔化すために必要だろ?と言われてしまったが、わたしの部屋でイタズラの仕込みを始めるのは辞めて欲しい…。
仕掛けがわかってしまうし、それに引っかかる被害者が不憫でならない。
今も、後ろでなにやら怪しげなものを作っている…。
そんな鶴丸を後目におやつを食べていると、鶴丸は何かを思いついたようにバッと顔をあげる。
「なあ、主。明日は暇か?」
「日頃の業務が終われば特に用事はありませんが…。」
それを聞いて鶴丸はにんまりと笑う。
嫌な予感しかしない。
「じゃあ、明日は俺と万屋へ行こう!」
この本丸では、休日であれば外出は制限していない。
お小遣いもそれなりの額を渡しているため、各々好きなように使っている。
「えっと…、何か欲しいものでもありましたか?」
「ちょっとな!」
何故教えてくれないのだろうか…。
背中に嫌な汗がつたう。
欲しいものがあるなら1人で万屋に行って欲しい…。
「…でしたら、明日はお休みにしましょう。別に1日くらいそばを離れても大丈夫です。」
「いや、それはダメだ!何かあったらどうするんだ!」
「1日自室に篭もっていますから…」
「駄・目・だ!」
鶴丸はふたりで行きたいようで頑として譲らない。
なかなか頑固な性格をしている。
最近、近侍業務ばかりで鶴丸も退屈だったのかもしれない…。
いや、休みをあげようとしても本人が拒否をしている状態だし…。
いやいや、そもそも私に信用がないから休みを取りたくても取れない可能性もある…。
だとしたら、迂闊な私が悪いのだし万屋くらい付き合わなければいけないのでは…?
暇を持て余しているから男士へのイタズラも激化している可能性もあるし…。
ここで万事屋に行けば多少のリフレッシュになって、少しは落ち着いてくれるかもしれない…。
「……万屋だけですよ?」
何を言ってもふたりで行くと言い張り、なかなか休みをあげられない罪悪感、他の刀剣男士への被害を考え、ついには根負けしてしまった。
「よしっ!じゃあ、明日の未の刻に!」
心なしか鶴丸がウキウキしているように見える。
そんなに休みが欲しかったのだろうか…。
お願いだからイタズラグッズなどを買いませんように…。
そんなことを思いながらも、無邪気にはしゃいでいる鶴丸を見て、私も悪い気はしなかった。
まあ、喜んで貰えるならいいか…。
絆されているのはわかっている。
それでも、こんな距離も悪くないと思えるのはある意味成長したのかもしれない。
少しだけ明日が楽しみに思えた。
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