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カロスの洞窟

原作: ポケットモンスター 作者: kokoro
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近い未来の話

「う…。それより、イーブイが野生で見かけるようになったこと、ダイゴさんも知ってたんですね。」

聞かれていないと思っていた独り言を、ダイゴにバッチリ聞かれていたハルカは、なんだか妙に気恥ずかしさを感じていた。

「まあね。カナズミの近くのカナシダトンネルにも、時々石を探しに行くんだよ。その通り道に丁度イーブイがいてね。とは言え、警戒心が強いみたいで姿を見たのは二回くらいしかないけど。」

ダイゴは更に、こう見えてもフィールドワークの範囲は広い方だからね。と付け加えた。

「行動範囲が広いのは知ってますよ。暇があればすぐにエアームドに乗って、ムロでもバトルリゾートでも行ってるじゃないですか。」

「それもそうだね。けれど、イーブイだけにこだわらなくても、カロスに行けば沢山のフェアリータイプのポケモンがいるんだ。直接カロスに行ってから、どのポケモンをゲットするか決めても遅くはないと思うよ。」

ダイゴは散らばった書類の山を、更にかき分けながら言う。それに対して、ハルカはメレシーを撫でる手を止めながら答える。

「うーん…。確かにイーブイって不安定な遺伝子を持ってるから、絶対にニンフィアに進化するか分かりませんよね。だとするとサーナイト…でもカロスにいるデデンネも捨てがたい!」

サーナイトもデデンネもフェアリータイプを持つポケモンで、デデンネに関してはホウエン地方に生息していないので、ゲットするにはそれこそカロスに行ってからとなる。しかし、サーナイトならば進化前であるラルトスが、トウカシティとコトキタウン付近の草むらでゲットすることができる。

(そういえば、ミツル君が初めてゲットしたのもあの辺で、ポケモンもラルトスだったな…)

ハルカは彼が初めてのポケモンをゲットするのを、近くで見守っていた。今ではそのラルトスも立派なエルレイドに進化し、ミツルもその辺のトレーナーよりも遥かに強くなった。

(なんだか遠い昔みたいにかんじるなぁ)

これまでにミツルにバトルで負けたことは無いハルカだが、バトルを重ねる度にミツル達はどんどん強くなっている。もちろんそれはユウキも同じ。ホウエンの各地を忙しなく移動してフィールドワークの日々を過ごしているユウキもまた、旅先でのバトルでどんどん強くなってきている。

「あ、ハルカちゃんあったよ。あれ、端っこが破けてる…いつのまに。まいっか。欲しくて貰った写真じゃないし。」

(ダイゴさん、なんかミクリさんの扱いが雑なような…)

古い付き合いの友人の写真を、乱雑に積まれた本と一緒に放置している挙句、破れていても大して気にしていないことに、ハルカは少しばかりミクリを気の毒に思った。

「ダイゴさんとミクリさんは、その…お友達なんですよね?」

「そうだね。話してる途中に度々奇妙なポーズをするのはいい加減止めてほしいとは思っているけど。」

「あー。ジム戦の前と終わった後にもポーズ決めてました…。そういえば、ルチアも話しながら急にポーズ取ったりしていた気が…。」

叔父と姪。揃いも揃って同じことをするなんて、やはり血は争えないということらしい。

「まったく…ミクリの美意識の高さにはついていけないよ。彼は昔から変わってないんだ。」

ダイゴは呆れたように肩をすくめながら、手に持っていた写真をハルカに差し出した。ハルカは受け取った写真を見ると、ある疑問湧いた。

「あの、これって何年くらい前の写真ですか?」

「ミクリがコンテストスターじゃなくなる少し前だから…6年前くらいだと思うよ。」

ダイゴは顎に指を当てて、考え込むような仕草をした。

「6年も前なのに、ミクリさん今と全然変わってないんですね。服も同じ…。」

写真に写っているのは、ステージの上でミロカロスと見慣れたポーズを決めているミクリ。今現在、普段彼が来ている服とまったく同じデザインの服を着ている。極めつけは、その容姿が6年間の歳月を感じさせないということだ。

「6年も前とは思えないよね…。美容に口うるさいだけのことはあるよ。」

「でもミクリさんだけじゃなくて、ミロカロスの美しさもこの頃から変わっていないんですね。」

ミクリの隣に堂々と佇むその姿は、とても誇らしそうな表情にも見える。ジム戦の時にもミクリとの息のあったコンビネーションと、まるでステージで踊っているかのような可憐さだった。そう、自身の愛するみずタイプの良さを、全て引き出しているような。ハルカはその時のミクリに強い憧れを抱いていた。それが今、更に強い思いへとなるのを確信したのだ。

「私もミクリさんみたいに、もっともっと自分のポケモン達の良さを引き出せるように頑張らないと!まずはめざせ!全マスターランク制覇!!」

ハルカは大きくガッツポーズをしながら意気込むと、くるりとダイゴに向き直った。

「ダイゴさん!私がマスターランクを制覇して、ルチアと同じステージに立つ日が来たら、絶対に応援にきて下さいね!」

同じステージに立つ日が来たら…。それは確実に未来の話で不確かなもの。けれどハルカの目には力強い光が宿っていて、その未来が近いうちに必ずやってくるだろうと予感させる。ダイゴは微かに口元を緩ませながら答える。

「もちろん。その時はリーグを閉めてでも駆けつけるよ。」

冗談のように笑いながら言ったものの、その言葉は本気だった。ダイゴはハルカに訪れる未来を、誰よりも楽しみにしているのだから。

おわり
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