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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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看守たちの長期休暇(奴らに見つかったぞ編)その2

バーティは高速旅客船の甲板にいた。船賃が普通の船の2倍もするくせに、船はとても混んでいる。

インペルダウンから生まれ故郷までは、船を全部で4便乗り継いで、最短で7日、気象等の条件が悪いと10日以上かかる場合もある。
船の乗り継ぎが上手くいかないのも一因だ。特に、最後に乗る船は、通常は三日に一便、季節によっては五日に一便しか運航していないから、事前に運航する日時を確認してスケジュールを組んでおかなければいけない。

ドフラミンゴ達と別れてから、三日目の朝だった。今乗っている船は2便目で、昨日の夕方から乗っている。

この船は今日の昼に降りるので、どうせ一泊だからいいだろうと2等寝台にしたのだが、一応個室で鍵もかかるが、せまい二段ベットのベット部分だけしかスペースがないので、起きている時は甲板に出ていたほうが気分がいい。
ちなみに、1等は2畳程度だが普通の個室、3等は男女で部屋は分かれているが雑魚寝だ。

バーティからやや離れたところに、新聞を読む准将1の姿があった。バーティの服は派手だから目立つ。見張る立場からすると目に付きやすくていいが、バーティの素性を知っている准将1は、あんなに人目を引いていいんだろうかと秘かに心配した。彼は母親にそっくりだというし…。

その日の正午、船は予定通りに港に着いた。バーティに続いて准将1も船を降りた。
バーティは人に訊ねながら、港の近くの小さなホテルに入っていった。普段はインペルダウンの中だけで生活しているので、決して旅慣れている訳ではない。

准将1は、フロントに立っている支配人の顔を覗き見た。金で口を割るような感じではない。
ホテルの裏口をしばらくウロウロする。すると、このホテルの使用人がバーティが来ていた服をカゴに入れて外に出てきた。服が派手だと、こんな時もすぐに分かるからありがたい。いくらかの金と交換に情報を聞き出す。

「あのお客さん、18時に出航する船に乗るってさ。それまで休みたいって、何日か前から部屋を予約してたんだ。予約の時に洗濯も一緒に頼んだよ」
「どの船に乗るか言ってたかい?」
「そこまでは分からないね。でも、ちょっと面白い人だよ。18時までだから、洗った服を乾かすのに乾燥機を使わないと間に合わないんだけど、大事な服は乾燥機に入れたくないって言って、洗濯に出すのと出さないのと、自分で考えながら分けてたよ。こだわりがあるんだろうねえ」

准将1は18時まで自分も休息を取った。バーティに尾行していることを気付かれないように、自分も服を別のものに取り換えた。

そして18時、バーティと准将1を乗せた旅客船は、夕日を受けながら出航した。
この船は、いくつかの港に寄港しながら終着の港まで行く。バーティがどの港で降りるのか、探る方法はあるだろうかと、准将1が考えていた時だった。

(…?あの男、前の船にも乗ってたか?)

准将1は、一人の男に目をとめた。年齢は20代前半、中肉中背、特に目立つような容姿ではない。
だが、准将1に不信感を抱かせたのは、この男が服を変えていたことだ。

(船旅中、港に着いた時に風呂屋に行って、服を着替えるというのはよくあることだ…)
しかし、この男は旅行鞄まで別のものに変えていた。准将1も同じだが。

男はバーティを観察しているようだった。だが、派手な服が物珍しくて見ているだけかもしれない。または、この二人は2便続けて同じ船に乗り合わせたことになるから、親近感を覚えたか何かでチラチラ見ているだけかもしれない。
もしも本当にバーティを尾行しているのだとしても、この男はおそらく素人だ。ただのスリか物取りという可能性もある。

(向こうはおれのことには気付いてないな)
少将1への報告は、もう少し様子を見てからで良いだろう。


***
ペラムはドフラミンゴ達が乗った船を降りた後、港に迎えに来ていた馬車に乗った。馬車には、この島にある高級リゾートホテルのマークが付いている。

ペラムを尾行する役目を負った少将2は、急いで辻馬車を拾って後を追った。ペラムが乗った馬車は海岸通りを走り、ホテルに着くと正門から中に入っていった。

少将2はホテルの裏口の近くで馬車をとめた。
(あの船は…)

このホテルは海岸の近くの丘の上に建てられており、近くの海岸はプライベートビーチと、ホテル専用の港になっている。宿泊客がヨットや釣り船に乗る時に使うための港だ。
その港に、大きさは10人乗り程度だが、豪奢な造りの船が停泊していた。風になびいている旗は、“空高く扇をかかげるマヌルネコとヨツコブツノゼミ”…ペラムの元実家のマークだ。

少将2は、いくらか多めに代金を渡して馬車を帰した。そしてホテルに裏口から入り、海軍の身分証を見せて支配人を呼び出した。
こういう場合は、自分が海軍であることを明かしたほうがいい。天竜人のことを聞き出そうとしても、ちょっと金を握らせただけでは普通はできない。情報を漏らしたのがバレたら、縛り首になってしまう可能性があるからだ。

「ついさっき馬車で到着した紳士のことを聞きたいんだが…」

少将2は支配人に、本人達には知られないように護衛する任務を負っていると説明した。少将2達の仕事の性質を考えると、これは全くの嘘でもないかもしれない。
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