ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

看守たちの長期休暇(準備編)その4

マゼラン副署長は、ドフラミンゴの消灯時間後に行われた会議に出席した。会議の出席者は、マゼランの他にハンニャバル署長と3人の特別室担当の看守である。

カスターが状況を報告した。
「昨日からドンキホーテ・ドフラミンゴ囚がかなり荒れておりまして、これまでにない反抗的な態度を見せております。
具体的には、看守に向かってフォークを投げたのが1回、それから花瓶の花に向かって食事で出されていたナッツを投げたのが1回。いずれも悪ふざけ程度のレベルで、これによる被害は特にありませんでした。その他にも、不機嫌そうに小さな不満を一日中グダグダと言い続けています」

バーティが発言した。
「今までが従順過ぎたのかもしれません。収監されてから数か月が経ちますが、これまでに溜まったストレスが表に出てきてもおかしくありません」

続いてペラムも発言した。
「肩をいからせて下から見上げるように人や物を見て、気に入らないものを見つけると、口うるさくいろいろ言ってきます。壁に掛けた絵が曲がっているとか、テーブルクロスにシワがあるとか、本当に小さなことばかりです。
本日は入浴の日だったのですが、面倒だから風呂になんか入りたくないという訴えも初めてありました。でも単に不機嫌なだけだったようで、最終的には問題なく入浴しました。
また、今まで黙っていたけど自分が着ている囚人服の生地の肌触りが気に入らない、とも言われました。パンツのゴムの部分が当たって痒みが出るとも言われたので、入浴で服を脱いだ時に、本人に気付かれないように背後からこっそりチェックしましたが、肌が赤くなっている等の症状は私の目では確認できませんでした」

「う~ん…」ハンニャバルは両腕を組み、目をつぶって看守達の報告を聞いていた。

マゼランは一瞬、看守に向かってフォークを投げる行為は悪ふざけで済むのだろうかと思ったが、この疑問を口に出すのはやめることにした。こいつらが悪ふざけだと言うのなら、悪ふざけということでいいのだろう。

「原因に心当たりは?」
ハンニャバルが、なぜか看守達をギロリと睨み付けながら訊ねると、3人はそんなことに少しも動じていないように平然と答えた。
「特にありません」「思い当たるところは何も」「皆目見当もつきません」

ハンニャバルが歯ぎしりしているのがマゼランには分かった。無理もないと思った。
マゼランにしてみれば、ドフラミンゴが荒れている原因などはどうでもいいことだった。ここは病院や福祉施設ではなく、監獄なのだ。監獄の一番重要な目的は、罪人である囚人を牢獄の中に閉じ込めておくことだ。

ドフラミンゴが少しばかり厄介な囚人であることは確かである。世界政府の上層部から、奴の命を保証しろと言い渡されているからだ。
ずば抜けて強くて狂暴な性格の囚人を、殺すことなく安全に拘束するということがどんなに難しいことか、ドフラミンゴを収監することになって、マゼランも改めて思い知った。

そのドフラミンゴがこのような状態なのに、担当の看守3人は、インペルダウンに就職してから初めて取得する長期休暇のことに夢中になっているのか、あまり深刻にとらえていないようにマゼランには思えた。自分達が不在の間は、他の職員がどうにかするだろうと思っているのだろうか。

「君達の休暇だが…」
マゼランが口を開いたところを、カスターが遮った。
「囚人を監獄から出してはならないと言ったのは署長です」
そして、さらにこう付け加えた。
「私共としても、囚人を休暇に同行させなくていいなら、それに越したことはありませんし…」

マゼランは落ち着いた声でゆっくりと言った。
「あくまでも推測だが、囚人の前で楽しそうに休暇の話しをしたのではないか?」
「…」
看守達は黙るしかなかった。マゼランはフンと鼻をならした。
「責任を取って、囚人の機嫌を直すように。さもなくば…」

これを聞いて、看守は3人とも泣きそうな顔をした。さもなくば…、“休暇を取ることはできない”と言われたと彼らは思ったに違いない。
マゼランとハンニャバルからいくつかの注意を受けた後、看守達はしゅんとしたまま退室した。

当初、看守達はドフラミンゴを自分達の休暇に同行させようとしていた。しかも、誰か一人が同行させるだけではなく、全員がそれぞれの休暇に同行させる可能性すらあった。

と言うのは、看守達がこのように考えたからだ。
3人が同時に休暇を取れるなら、誰か一人が囚人を同行させればそれで済む。しかし、もしも自分が他の二人と同じ日程で休暇を取ることができず、かつ囚人を同行させなかったら、残る二人はいつもより少ない人数でドフラミンゴを監視しなければならないので激務になる。

そのような事態を避けるために、他の二人と同時に休暇が取れなかった場合は、囚人を休暇に連れて行くべきだろう。3人ともドフラミンゴを休暇に同行させることは嫌でなかったし、不可能でもなかったので、全員がこれを最良の方法だと思った。
この方法が実行された場合、ドフラミンゴは最高で三人の休暇に同行させられることになる。

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。