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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

海軍のとある会議の議事録(超極秘) その3

【准将1】:ひとつを残して、全て消滅でありますか?!
【少将2】:そ、そんな…なんて恐ろしい。

【中将1】:当時も相当な衝撃だった。血の繋がった一族同士でいがみ合って争い、家屋敷を焼き払い、暗殺が企てられ…。しかし、この階級の人間には、世界政府も法律も手が出せない。
そして、あっという間に“紫の薔薇”の家系以外の人間が死に絶え、一族を代表する紋章の薔薇の色が黒から紫色に変わって、この争いは終わった。

この一族内抗争は、周囲から陰で「薔薇戦争」と名前が付けられた。それ程までにインパクトのある事件だったということだ…。

【准将1】:この一族の元々の紋章は“黒い薔薇”だったのですか…。知りませんでした。

【少将1】:考えてみると、恐ろしい事件ですね。消滅してしまった7つの家の人達は、本当にもういないんだろうか…。

【中将1】:…今回、現れたじゃないか。

【少将1】:ああ…。
【少将2】:し、しかし…。
【准将1】:ううむ…。

【中将1】:「薔薇戦争」の結末を考えると、もしもこの看守が“黒い薔薇”の家系とつながりがある人物だとしても、“黒い薔薇”の生き残りに対して、“紫の薔薇”が力を貸すとは思えない。
むしろ、この人物は“紫の薔薇”に見つからないように、自分の出生を隠す必要があるかもしれない。

“黒い薔薇”の紋章は、今はもう過去の遺物だ。
この人物が特別な身分にあったのは昔のことであって、今は普通の庶民であるからには、囚人を脱獄させたことに関して、法律の通りに処分を受けなければいけないだろう。

これは囚人のほうも同じだ。“黒い薔薇”の紋章が入ったほっかむりをしていようと、そんなものには何の効力もありはしない。

だがな、俺はこの部署に配属されて40年になる。これだけ長くこの仕事をやっていると、普通では聞けないような、内輪の情報も入ってくるようになる…。

【少将1】:ど、どのような情報ですか?

【中将1】:「薔薇戦争」からすでに45年だ。当時の当主ももうかなりの高齢で、とうの昔に当主の座を嫡男に譲って隠居生活に入っている。
そして、自分の死期を意識したのか、これまでの自分の罪を懺悔するようになったらしい。

数か月前からは、高僧を家に呼んで念仏三昧の毎日を送り、始終「あの争いは間違いだった」、「今からでも罪を償いたい」と話しているそうだ。

現在の当主である嫡男は、父親ほど権力欲はなく、親思いでもあるため、父親の心が休まるのであれば、償いとして自分達が滅ぼした一族の生き残りを探し出し、以前の地位に復権させることを考えているらしい。つまり…。

【少将1】:この看守が、この一族の一員として将来復権する可能性もあるということですね。
【准将1】:もし本当にそうなったら、後から何を言われるか分からないということですか…。

【中将1】:そういうことだ。少将2は悔しいかもしれないな…。

【少将2】:いえ…、私も自分の首は惜しいので、異論はありません。

【中将1】:理不尽だが、しょうがないと思うしかない。囚人の脱獄の件は、第三者に被害が出なかったということで納得してくれ。

【少将1】【少将2】【准将1】:はい…。

【中将1】:しかし…、こんなことを言うと、「じいさん訳分かんねえこと言ってんじゃねえよ」とか「もしかしてそれで対応が甘いんじゃねえか」とか思われるかもしれんが…。

個人的にはな…、この事件で“黒い薔薇”の家系の末裔が存在することを知ることができて…、嬉しいのだ…。本当に良かった…。

【少将1】【少将2】【准将1】:何か思い入れがあるのですか?

【中将1】:この写真の人物…。確かにこの四角い顔は、“黒い薔薇”の当時の当主にそっくりだ…。何でドフラミンゴと二人してこんな派手な服を着ているのかは分からんが…。

当時の“黒い薔薇”の家の当主は女性で、目が大きくて、背が高くて、髪型が印象的で…。
俺は学生の頃、あの方のブロマイドを集めていた。ご成婚された時は、一晩中泣き明かした…。

年齢が43歳ということは、薔薇戦争が終わった後に生まれたことになる。

この人物は、あの方のお子だろうか…。
ご本人はお元気なのだろうか…。

***

「おい、このマークは何なんだ?」
ペラムの行方不明事件が解決して、手漕ぎボートでインペルダウンに帰る途中、ドフラミンゴは自分がほっかむりしていた白いタオルを外して、広げながらバーティに訊いた。

ドフラミンゴは、本当は分かっているはずだ。なのにわざわざ質問してきた理由は何だろうとバーティは考え、言葉を選びながら答えた

「本当はペラムが乗っていた船のマークを描こうと思ったんですが、あの人質さんにマークを描くよう言っても、デザインが複雑でとてもじゃないけど描けないと言われたんです。まあ、しょうがないですが…。それで別のマークを描きました」

そして、ドフラミンゴの手からからタオルを受け取ると、ビリビリと破いてしまった。

「ふうん?人質に描かせなきゃいけなかったってことは、お前達はお互いのマークを知らないってことなんだろうな」

これはバーティにとって、言い当てられたからと言って、別に何ということもないことだった。
ただ、ドフラミンゴのこの態度が自分が原因であることを、この時思い当った。
(インペルダウンに空から侵入する案を却下したから機嫌が悪いのかな…)

「早く帰りましょう。波が穏やかですので転覆する心配はありません」
バーティはオールを漕ぐ手に力をこめた。
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