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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

カスターの日記

カスターは部屋の中に戻ってくると、ドフラミンゴに早口で訊ねた。

「あなたは悪魔の実の能力で糸人形というものを作れるそうですね。それを身代わりとして使うことは可能ですか」

「…」

ドフラミンゴは口を堅く結んだままだった。ドフラミンゴは今起こっていることを実感できないでいた。自分はどうやら脅迫されているらしい。しかし、脅迫しているのがこの物腰も語り口も柔和なカスターというのは、どうしても拍子抜けするのだった。

廊下を二人の足音が近づいてきた。バーティとさっきの看守だった。バーティとこの看守は寝室の前にいる看守と短い会話をした後で、中に入ってきた。

「どのくらい具合が悪いのですか」バーティはさも慌てたように大声を張り上げ、ベッドの側に走り寄った。

「熱はさほどではないようですが、苦しさや痛みを訴え続けています。でも、どこがどう苦しいのかを聞いても、うわ言だけで…。よほど悪いのかもしれません。横にならせたほうがいいでしょう。二人とも、手伝ってください」

カスターはこう言って、ベッドに腰かけていたドフラミンゴの肩を押さえつけて、強引にベッドに寝かせようとした。バーティと看守も一緒になって腕を引っ張ったり、頭を押さえつけたりして、力ずくでドフラミンゴを押し倒した。

(うう、こいつら何しやがる…)

やはりカスターとバーティは力が強い。ドフラミンゴは抵抗しようかどうしようか迷っていた。
カスターに脅されていることもあったし、海楼石が付けられているのにまあまあ元気に動けることが看守にバレるのも困る。

しかし、カスターに首を押さえつけられた時、ドフラミンゴは思わず3人の手を振り払った。

「お前らいい加減にしろっ!おれを殺す気かっ?!」

「ひ、ひええ~っ!囚人が反抗した~~っ!!」

看守がドフラミンゴの怒鳴り声に怯えて悲鳴を上げると、カスターが「ああ、これはいけない!」と声を上げてドフラミンゴの頭をポカリと殴った。

すかさずバーティがドフラミンゴをベッドに倒して押さえつけ、予備の海楼石の鎖でベッドごとドフラミンゴをぐるぐる巻きにした。

「囚人は具合が悪くて機嫌が悪いようです。こうしておけば大丈夫でしょう」
とカスターが言うと、バーティがドフラミンゴの額に手を当てて、

「やはり熱があるようです。看病と拘束を兼ねて、何日間かこの状態で監視しましょう」
と同調した。

寝室の前にいる看守が「応援は必要ですか」と声をかけてきたが、カスターとバーティはこれを断った。

寝室の中にいた看守が震えながら仲間のところに戻っていくと、バーティが「…上手くいきましたね」とこっそり言った。

カスターもにやりと笑って「はい。準備を進めましょう」と返した。

そして、大きな声で「囚人が寒がっているので、上掛け布団がもっと必要です。私が取ってきます」と言って、部屋を出て行った。

そして何枚もの羽根布団を抱えて戻ってきた時、緊急事態を知らせる声がレベル6中に響いた。

「上の階で暴動が起こったぞ!可能な者は応援に向かえ!!」

寝室の前にいた看守二人は、互いに顔を見合わせた。

「こんな時に暴動かよ…」
「どうする?」

すかさずカスターとバーティが看守達に言った。

「ここは私達がいるので大丈夫です」
「あなた方は応援に行ってください」

「はいっ。では、ここはお任せします!」
「この階の看守が全員いなくなることはないと思いますので、カスターさん達も何かあったらすぐに他の者に応援を求めてください」

二人の看守が上の階に行ってしまった後、カスターとバーティは部屋の中に突っ立ったままでひそひそ話した。

「…全員いなくなることはないそうですよ。もっと大きな暴動を起こした方が良かったでしょうか」
「しかし、あまり派手にやって全体的に警戒が強くなってもいけませんし…」

ドフラミンゴはベッドに縛り付けられたまま、これを聞いてため息をついた。

二人はぐずぐずしていなかった。
カスターが、さっき持ってきた上掛け布団のカバーの中から、牢番のブルーゴリラの着ぐるみを取り出して言った。

「これを着てください」

バーティはドフラミンゴとベッドをぐるぐる巻きにした鎖を解いた。そして、その勢いでという訳ではないのだろうが、ドフラミンゴの手足に付けられていた枷まであっさり取り外した。

「それでは、糸人形を作ってください」
「見張りが手薄なうちに早く」

ドフラミンゴは久しぶりに自由になった手首と足首をさすりながら、自分を脅迫している二人の顔を見た。


***
カスターの日記より

×月×日
今日から数日間、特別室に泊まり込まなければなるまい。

ドフラミンゴの糸人形はなかなか精巧である。動くし、話しまでする。しかし、バーティの糸人形はない。

ペラムに何事もないといいと思う。
二人の不在を気付かれないようにしなければ…。


×月×日
ドフラミンゴは高熱のせいか意識が錯乱しており、バーティのことを自分が子供の頃に飼っていたカメの生まれ変わりだと信じ込んでいて(どこかで聞いたような話しだが)、握った手を離そうとしない…と看守達に話す。

バーティが部屋の外に出てこない言い訳が、一応成り立ったと思う。

ドフラミンゴが熱のせいで暴れるから危ないというと、看守達は恐ろしがって部屋に入ってこない。この調子で隠し通せればいいが。
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