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Moon face

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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降谷が美弥妃のいる部屋に駆けつけた時、美弥妃は自分の上司である狩生の上に跨って何度もなぐりつけていた。

「雪の苦しみがあなた達に分かるの?!雪が死んだらどうしてくれるの?!…雪が死んだら私も死んでやる!!あなた達が欲しがっている情報全部!!私だけが知ったままお蔵入りさせてやる…!!元はと言えば…あなたたち警察のせいで涼も…!!」

降谷「矢神さん!」

降谷が名前を呼ぶもその声は耳に入らないようだった。

狩生「ふ、るや…!」

狩生が声を絞り出すように降谷の名前を呼んで助けを求めた。

降谷「矢神さん!落ち着いてください!!」

降谷が美弥妃の腕を掴んで殴るのを止めたがその手は振り払われてしまった。

「離して!!触るな!!誰も…誰も私の領域(エリア)に入ってくるな!!」

そう言って降谷を突き飛ばしては美弥妃は上司を殴り続けた。

その時に降谷の頬に傷がついてしまった。

…パシィッ!!…

降谷「いい加減にしろ!!」

降谷は取り乱していた美弥妃の頬を叩いた。

そこでハッとしたのか美弥妃は力なく拳をおろした。

降谷「それ以上やったら死にますよ。」

降谷がそう言うと美弥妃は上司から離れた。

降谷「大丈夫ですか、狩生さん」

狩生「あ…あぁ…」

顔は酷く腫れていたがさほど重症ではないとわかると降谷は美弥妃の前に立った。

降谷「この件に関わってからおかしいですよ。矢神さん。…狩生さんとの間に何があったかわかりませんがやり過ぎです。」

降谷がピシリとそう言うと美弥妃はちらと降谷の顔を見てから背を向けた。

「止めてくださってありがとつございました。…私は部下に怪我をさせてしまいました。すみません。」

降谷「あなたが謝るのは僕じゃない。」

「…失礼します」

降谷の言葉を無視した美弥妃は静かに部屋を出て行った。

そんな時間の次の日、今回の案件から美弥妃以外の公安のメンバーが外されることになった。


その日、出勤してきた美弥妃は誰とも目を合わせようとしなかった。

降谷「どういうことですか。」

「…」

剛田「俺達が一度裏切った事は謝ります!!ですが、今回の件、外されるのは納得がいきません!!」

そう言って集まってくる部下達に美弥妃は冷たい一言を放った。

「足手まといなんですよ。私一人で十分な案件にあなた達がいると手間がかかるんです。あなた達はせいぜい残った報告書の処理でもしていて下さい。…私は今から現場に向かうので。」

剛田「何なんすかそれ!!」

剛田がそう叫ぶも美弥妃は顔をうつむかせたまま本部を出て行った。

剛田「くそッ…!!」

剛田が悔しがる中、降谷は何かを考えた後赤井に電話をかけた。

赤井「降谷くんか」

降谷「彼女以外の公安の人間が今回の件から外されました。」

赤井「やはりそうか。…こちらも首相の護衛のみの案件に変更されたよ。」

降谷「何…?!」

赤井「彼女は連絡を拒否し続けるしこちらはお手上げ状態だよ」

降谷「…何かを隠しているとしか思えない。…人格が変わったように異常な行動をとり続けている。」

赤井「あくまで噂だが…当日の組織の件、彼女一人に任せるという話が公安で出ていたらしい。ジョディがたまたま聞いたらしいが…」

降谷「一人で?!無茶だ!!」

赤井「あぁ。しかしそれはどうやら彼女の意思ではないようなんだ。彼女は部下を危険の少ない場所に配備したいと言っただけだ。それがどうなってか彼女一人に任せると。…上が決めたようだが…」

降谷「そうか…。わかった。…赤井」

赤井「なんだ」

降谷「手を貸して欲しい。」

赤井「言われなくともそのつもりさ。…すまない、こちらもその件で今から会議だ。また連絡する」

そうして電話が切れた後、降谷は部下達に向き合った。

降谷「全員手を貸してくれ。」

降谷の真剣な表情に部下達は賛同した。


日米首脳会談の前日のことだった。

それまでに降谷達はFBIと暗に連絡を取り合い当日に備えていた。

その日は大雨で雷もなっていた。

風見「嫌な天気ですね」

降谷「あぁ。」

そんな会話を交わした時、本部の扉が開いたかと思えばずぶ濡れの美弥妃が入ってきた。

風見「矢神さん?!」

全員が驚いて視線を彼女に向けるも彼女は俯いたまま自分のデスクに向かい荷物を取って出て行こうとした。

降谷「そのままじゃ風邪を引きますよ」

降谷がそういうも「ご心配なく。」と言うと静かに出て行ってしまった。

降谷はその後をこっそりとついて行くことにした。

彼女はふらりと廊下の椅子に座り込むと無気力といった感じに蹲っていた。

降谷はそんな彼女にタオルを頭から被せてやった。

榛名「首脳会談は明日でしょう。風邪なんてひいたら明日の動きに支障がでますよ」

「…」

降谷は何も返事を返さない彼女のとなりに腰を下ろすと優しく髪を拭いてやった。

「私に…構わないでください…」

そう言う彼女の言葉を無視して降谷は髪をふきつづけた。

すると突然すすり泣く声が聞こえてきた。

降谷はピタリと手を止めた。

降谷「矢神さん…?」

「…ぅっ…ひっく…っ」

降谷はそっとハンカチを渡すと再び髪をふきはじめた。
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