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Moon face

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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16

降谷「全くです。あまり部下を心配させないでください。家どこですか」

「あ、品川区×××・・・・です」

美弥妃が住所をつたえると降谷は地図もみないまま車を進めた。

「このあたり詳しいんですか?」

降谷「まぁ。近いので」

「へぇ、奇遇ですね。何かあったらいつでも私の家に避難しにきて良いですよ」

降谷「あまりそういうことを言わないでください」

降谷は危機感のない彼女にため息をついた。

「あ、そうですね。降谷さんを避難しないといけないような危険にさらさないように精進します。」

全く意味の伝わっていない彼女に降谷はさらに大きなため息をついた。

降谷「だからそうではなく―」

「あ!ここで止めてください!私の家ここなんです」

降谷がいいかけた言葉をさえぎって美弥妃は近くのアパートを指差した。

降谷「は?」

降谷は絶句した。

「ありがとうございます。お疲れさ…」

降谷「あれが貴女の家ですか?!」

今度は降谷が美弥妃の言葉をさえぎった。

「え?そうですけど…。あぁ、あんまりのオンボロアパートにびっくりしてます?」

降谷「こんなセキュリティもなっていないようなところに一人で住んでいるんですか?!」

「ここ事故物件でもとから家賃もやすかったんです。あ、事故って言っても私の部屋じゃないんですけどもう3件も殺人があって」

降谷「わざわざ事故物件に住まなくてもそれなりの稼ぎはあるんじゃないんですか?!」

「あー、まぁ。もともと何件も事故があったところなら私が万が一何かで死ぬことになっても大家さんに大きな損害はないかと思ったので。ま、駐車場も裏手に借りれましたし家賃も安いですしほとんど寝に帰るくらいなので丁度良かったんですよ」

そういってへらりと笑う美弥妃に降谷はどうしてこの人は自分が死ぬかもしれないという可能性を残しているんだと腹が立っていた。

降谷「どうしてあなたは…」

「あ、遅くなってしまいましたね。すみません。じゃぁ降谷さん、お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね」

彼女はそういうと車を降りてアパートへと帰って行った。


美弥妃を降谷が家まで送ってから数週間が過ぎた。

最初こそ嫌がらせや陰口を叩いていた部下たちは前回の一件から美弥妃を上司として尊敬するようになり、軽口を叩くような仲にもなっていた。

そして最近は嵐の前の静けさと言わんばかりに落ち着いた日々が続いていたが美弥妃は影でコソコソと何かを調べているようだった。

部下たちが一通りの仕事を終えて美弥妃の元に他に仕事はないかと言うが彼女はいつも定時になると自分のデスクに仕事がたまっていようと部下達を帰らせた。勿論、風見や降谷もその部下に入るのだが。

今までトリプルフェイスとしてやってきた降谷にとっては体力が有り余るほどで。

いつものように自宅に帰るなりふと気になった彼女の経歴について調べることにした。

出てくる情報は大方彼女の自己紹介と変わらないのに配属先や所属部署といったデータが全くもってでてこないのだ。

降谷「過去を調べるよりも現在を調べた方がよさそうだな…」

翌日、休みだった降谷はそう呟くと車のキーを持って彼女の住んでいるアパートに向かった。

降谷「あの、すみません」

降谷は腰を曲げてアパートの周りを掃除している60代くらいの老人男性にに声をかけた。恐らく大家といったところだろう。

老人「ん?なんだい?見かけない顔だね」

降谷「あの、この辺りに出した従姉妹がすんでいるみたいなんですけど…。数年前に家出してから会ってないんですけどたまたまこの近くで見かけたものですから探しているんです。もう何軒もまわったんですけど居なくて…知りませんか?矢神っていう25歳くらいの女なんですけど…」

降谷は咄嗟に思いついた嘘をペラペラとならべた。いままで安室透として生活して居たことが役に立つなんて。人受けの良い笑顔は相手を油断させるのに最適だ。

老人「あぁ!矢神さんだね!知ってるよ!彼女にはいつも世話になってるからねぇ」

降谷「ほんとうですか?!会いたいのですが…」

会えないことはわかっていた。彼女は恐らく今頃本部で仕事をしているはずだ。それでも怪しまれないために降谷は会いたいと伝えた。

老人「どうだろうねぇ、あまり家に帰ってこないから今日会えるか…」

降谷「そうですか…。実は叔父も叔母もすごく心配していて…彼女がこの10年どう過ごしていたのか知りませんか?せめて近況だけでもわかれば叔父も叔母も少しは安心すると思うのですが…」

そう言うと老人は快く話をしてくれると言った。


老人は降谷を招き入れるとお茶を出した。

老人の部屋は6畳くらいの畳のワンルームでバスルームとトイレが一体になっている本当に一人暮らし用の狭い部屋だった。

老人「私はここの大家をしていてね。美弥妃ちゃんがここに来たのは…いつだったかな。数年前の春先だったよ。愛想のいい子で電球の取り替えとかも困っていたらいつも助けてくれたよ。ここは年金生活の老人がほとんどだからね。事故物件で身分証ひとつで入居できるし家賃が安いから老い先短い老人達は住んでくれるんだけど、若い人は珍しかったからよく覚えているよ。オートロックもないところにあんな可愛らしい女の子が一人で済むって言うから大家なのに私も思わず止めてしまったくらいでねぇ。…でもその時に不思議なことを言われたんだよ」

そう言うと老人はお茶をすすった。
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