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Moon face

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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10

剛田「終わりました!」

「よし、では動ける人から…剛田さん!!後ろ!!」

剛田「え…」

…グサっ…バシィッ!!…

殆ど同時だった。

敵が剛田を庇った彼女の腕を刺したと同時に美弥妃は相手の鳩尾に一発食らわせ、近くにいた部下の一人が投げ出されたナイフを慌ててとった。

「剛田さん、怪我は!」

剛田「ない…です…」

「よかった…。では皆さん、動ける人から伸びてる人間を護送車に運んでください!外には降谷さんと風見さんがいるはずなので状況を説明して下さい!そのほかの指示はお二人に仰いで下さい!現場にはまだ他に仲間がいるかもしれませんので最新の注意を!運び終えたら物品の押収を!薬品関係があるので注意して下さい!」

暗闇の中で刺された事は誰にも気づかれることはなかったので美弥妃はそのまま指示を出し、薬品関係の押収を始めた。

部下達が動き出すと同時に外から降谷の怒号がとんでいた。

しばらくして美弥妃は出血がひどく、限界が来る前に休もうと剛田を呼び止めた。

「剛田さん、ちょっと良いですか」

剛田「はい」

「今回取り押さえたのは降谷さん、風見さん、そして剛田さん達の名前で上に報告して下さい。」

剛田「でも…俺たちは…」

「その代わりここの片付けとか任せていいですか?」

美弥妃は腕や脚、あとは掠ったくらいとはいえ刺された場所が悪かったのか貧血でフラフラだった。

剛田「矢神さん大丈夫ですか?様子が変ですけど…」

「さっきあれだけの人数を相手して疲れて…少し休みたいんですけど…」

剛田「俺達が無茶なことしたから…すみません。ゆっくり休んでて下さい。」

「助かります。」

剛田になんとかあとを任せることが出来ると美弥妃はなるべく邪魔にならない端の方に腰を下ろした。


現場が片付き出した頃、降谷は美弥妃が居ない事に気がついた。

降谷は近くにいた部下の一人を呼び止めた。

降谷「斎藤。矢神さんはどこだ」

斎藤「疲れたから中で休んでます」

降谷「休んでる…?」

おかしい。降谷はそう思った。

するとまた別の部下が押収したナイフを確認したのか血相を変えて中に走っていくのが見えた。

降谷は風見にその場を任せると建物の中へと走った。

すると端の方からゆっくり歩いて来る彼女の横で松本という部下が何やら狼狽えている様子だった。

松本「肩貸しますから無理に動かないで下さい!!」

降谷「どうした」

松本「降谷さん!矢神さんが…!」

「すみません、全てお任せしてしまって…」

壁に手をつきながら刺されたあしをかばうようにひょこひょこと歩く彼女はこんな時でも何事もないかのように振る舞った。

松本「俺が気付かなかったから…」

「あの、松本さん、たかが腕や脚を刺されたくらいで私が死にそうな言い方しないで下さいよ(笑)」

松本に気を使わせないためか、へらりと笑う彼女に降谷は怒鳴りつけた。

降谷「なぜもっと早く言わないんですか!!それに自力で動こうとして!!」

「死ぬような傷じゃないですし…それに今は現場を収めるのが仕事ですから皆さんの手を煩わせるわけにいきません。これくらいの傷一人で車で病院に行けますよ?幸い刺されたのは右足じゃないですし」

降谷「そういう問題じゃない、!早く病院に行きますよ!!」

降谷はそう言うとひょいっと彼女をお姫様抱っこした。

「降谷さん?!いや、スーツに血がついちゃいますから、いいですいいです、おろして下さい!

降谷「そんな事気にしてる場合ですか!!黙って運ばれてて下さい!!」

「いや…でも…」

降谷は何やら降ろせとブツブツいっている彼女を無視して外に出るなり部下達に向かって叫んだ。

降谷「おい!手が空いてるやつ!タオルか何か持ってこい!」

「いや、本当大丈夫ですよ?大した事ないですって」

そうは言うものの彼女の顔は真っ青で一目で貧血だとわかる様子だった。

流石にだんだんきつくなってきたのか口数が減っていた。

「あ、降谷さん」

降谷「何ですか」

降谷は部下に持って来させたタオルで止血をしていると不意に彼女から車のキーを渡された。

「病院までの運転、誰かにお願いできますか?」


降谷がキーを受け取ったのを見届けると美弥妃はぐったりと目を閉じた。

降谷「矢神さん!!」

降谷に釣られて周りの部下達も声を上げるが彼女は刺されていない方の腕を上げて

「生きてます。殺さないで下さい。少し寝かせて下さい」

と呑気にそう言ったので全員がほっと胸を撫で下ろした。

降谷は再び美弥妃を抱き上げて急いで彼女の車まで向かうと病院まで車を飛ばした。

病院に着くと彼女は気を失っていて降谷はサーっと血の気が引くのを感じた。

慌てて病院に駆け込んだが幸いにも貧血を起こしていただけで傷も後遺症が残るものはなかった。

病室のベッドで青白い顔をしながら眠る上司は寝顔を見れば25歳のまだ若くか細い女だった。

そんな彼女がこれ程までに周りを気を使い、あれほどの勢いで大切な部下だと言い切った。普段から嫌がらせや陰口をされていたのにも関わらずだ。その上勝手な行動をした部下達を庇って自ら刺されに行った。彼女の明かされていない経歴と何か関係があるのか…そんなことを考えながらも降谷は本部に彼女の無事を伝えるために電話をしようと病室を出た。
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