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ポケモンアドベンチャー

原作: ポケットモンスター 作者: ruru
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8話「コトブキシティ~ソノオタウン」

コトブキシティを出てからその夜、ソノオタウンに着いた。

ソノオタウンは花畑が綺麗で、観光地としてシンオウ地方では有名だ。しかしソノオタウンに行くトレーナーはあまりいない。ハクタイの森を通らなければいけないからだ。ハクタイの森にある洋館には幽霊がいるという噂があり、虫取り少年やオカルトマニア以外誰も近づかない。コトブキシティを通ってソノオタウンに行き、コトブキシティに戻る観光客ぐらいしかいないという事だ。

手持ちポケモンをポケモンセンターに預けていると、何やら周りで厄介な事件が起きている噂を耳にする。ミツハニーの住処である木が荒らされ、ミツハニーが集めた蜜も全部食われているようだ。

「もう今月で何度目だ?これじゃ甘い蜜も手に入らねぇし、ミツハニー達も可哀想じゃねぇか」

「しかしそんな怖そうな奴、俺達じゃ相手出来ねぇぞ。トレーナーが寄り付かないこの町で、一体誰が泥棒を捕まえられるんだ」

「あの、それなら俺がそいつを捕まえましょうか?」俺が2人に声を掛ける。

「おぉアンタ、トレーナーかい!?頼む、蜜泥棒をもう悪さをしないくらいにちょいとばかしボコボコにするだけでいいからやってくんねぇかな?」

最後の言葉が少し不可解ながらも、俺はそのポケモンの退治を引き受けた。仕方ない、俺しかトレーナーがいないのならば。

翌日、俺は早速被害のあった木を調べる。ミツハニーは泥棒に住処を追いやられ、辺りには全くいない。木には食い荒らされたかのような跡が残っており、蜜だけを狙っていると思われる。

手がかりがあまりなくて悩んでいた時、俺より年下の少女が声を掛けてくる。

「ねぇお兄ちゃん、お兄ちゃんってここの近くに住んでるんじゃないでしょ。どこか遠くから来たんだよね?あたしに付いて来て!今日風船さんが見られるんだから!記念になること間違いなしだよ!」

そして、俺をたにまの発電所の方に連れていく。どうやらこの少女はこの発電所の所長の娘らしく、よくここに来るらしい。

すると発電所の前にある甘い香りのする木、ミツハニーの新たな住処のようだが、そこでミツハニー達が逃げ回っていた。思わぬ幸運、蜜泥棒を犯行時に見つけた。それはなんとポケモン、ゴンベだったのだ。

「ゴンベ!泥棒はポケモンだったのか。ありがとう、良い情報を教えてくれて!」

「え?まだ風船さんいないよ?」

少女の言葉をかき消すかのように俺はバリヤードとエレキッドを繰り出す。そしてバリヤードでサイコキネシス、エレキッドに電気ショックを繰り出すが、このゴンベはとても気性が荒いようだ。2匹の攻撃を喰らいながらも体当たりで2匹を吹っ飛ばす。そしてゴンベは周囲の木になっているオレンの実を俊足の速さで食べて回復、かなり手強い。

アンノーンの大群の時のような全の力ではなく今回はゴンベ一匹の個の力に振り回される。改めてポケモンの奥の深さを知ることになったわけだ、なんて言ってる場合じゃない。

ゴンベの強さに苦戦していたその時、そんなバトルはお構いなしに空を見上げていた少女が大きな声を上げる。

「あーっ!見えたよ、あれ!」

少女がそう言い指さした空の先に、紫色の風船のようなものが見える。何だあれは?

その風船が地上まで降りてきてポケモンなのだと分かった。しかしスクールの教科書のポケモン早見表に載っていたような気がするが、名前が思い出せない。

すると血の気の多い戦闘狂のゴンベは木からジャンプして風船にのしかかる。少女が「あっ!」と悲しい顔で風船を見るが、風船はダメージを負っていない様子。確か風船はゴーストタイプだから、ノーマルタイプののしかかりは効果がないんだ。

そして突然、あっけにとられる出来事が起きた。風船の手か足の部分に甘い蜜が付いてしまう。そして風船が風に吹かれてどこかへ旅立っていこうとするその時、ゴンベが甘い蜜の付いた風船の手にしがみ付く。風船は当然あがこうとするがゴンベの重さでびくともしない。そして風船ポケモンはなんと、大爆発を行ったのだ。俺と少女はバリヤードのバリアーで大爆発から防御されたが、それでも守り切れないとバリヤードが盾になってくれた。ありがとうバリヤード、俺達を守ってくれて。

爆発の煙が消えた後、そこには倒れたゴンベと風船がいた。風船はまた別の風船がやって来て、そいつに連れ去られる。あの風船にも感謝しないといけないな。

すると爆発に気付いたのか、発電所の中から人が出てくる。

「一体何が・・ってうわっ!発電所の前が何でこんなことに・・・?」

発電所は運良く大爆発の被害を受けていなかった。そしてこの人は所長、少女の父親らしい。俺は事の顛末を洗いざらい話す。

「なるほど、そんなことがあったんだ。とにかくユイたちが無事で良かった。フワンテは危険だから、ここに来ちゃ駄目って言っただろ?」

「はーい、ごめんなさーい」少女は謝るのに慣れてるかのように父親に謝る。この娘、注意を無視して何回も来ているな。

「思い出した、あの風船はフワンテっていうんだ。でもフワンテが危険って、どういうことですか?ゴンベが蜜泥棒であって、フワンテは違いますよ」俺は所長に尋ねる。

「あぁ、君もそのくらいの年なら覚えていた方が良い。フワンテっていうポケモンはね、子供をあの世に連れていくという言い伝えがあって、ソノオタウン周辺では子供の行方不明はほぼフワンテによる誘拐だと言われている。証拠はないけどね」

「証拠はない、じゃあ迷信だ。フワンテは俺とこの娘を助けてくれた良いポケモンですからね」

「実はソノオタウン周辺の子供の行方不明事件は、ほとんどが全く見つからなくて死亡届が出された事件が多い。しかもいなくなるのは毎回この発電所の近辺だっていう話」

「えっ、それって・・・」俺は少し震えながら所長の顔を見る。

「ま、証拠はないけどね」そう言い俺を見る所長の顔は、からかうようなイタズラ顔ではなく嘘偽りないかのような真顔だった。

 (手持ちポケモン バリヤードLv.34 ブビィLv.31エレキッドLv.29)
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