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先輩が〇〇シリーズ

原作: その他 (原作: ペルソナ4) 作者: 雷鳴
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先輩と揺蕩う



『今何時ですか』
と布団の中から声がした。
14時だ、昼の。と答えると、うーーんという呻き声と共に、その中身がもぞもぞと動く。
「まだ寝ている?」
『うん……先輩』
甘えるような声色なので己も布団に入る。
すかさず長い腕が伸びてきて奥まで引きずり込んだ。
耳に心音がぶつかった。
トク、トク、トク、トク。規則的なリズムを刻んでいる。
それを聴いていると自分の目蓋も落ちるようだ。そっと目を閉じて、音に集中する。
『先輩?』
数時間前までの情事を引きずるやや掠れた声だ。時間があるのを良いことにちょっと頑張り過ぎてしまったか。
そう思うも本人はどことなく幸せそうなので、まぁ良いか。と更に胸に頭を埋める。
抱きしめるままでいた腕が僅かに動き、指先で背中をトン、トン、トン…とそっと叩く。
寝かしつけられている赤子のようだ。
彼がこういう事をするとは思わなかった。
けれど悪い気分でなく、寧ろ嬉しくて、されるがままにした。
トク、トク、トク、トク…
トン、トン、トン、トン…
…ク、トク、トク、トク…
彼の心音と背中のリズム、自分の心音がシンクロしていく、馴染んでいく。
段々とフワフワした心地になっていき……ふと気がつくと。

『……先輩、起きたっすか?もう夜っすよ。そろそろ飯食わねえと』
服装も雰囲気も常の完二が、布団から起き上がった自分を見ながら言う。
音量の出来るだけ絞られたテレビ番組だけが室内の光源だ。
「今何時?」
寝起きの掠れた声が聞いた。
完二はふ、と聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい笑みを零すと、
『もう20時っすよ。俺も寝過ごしちまった。何か作るんでちゃんと起きて待っててくださいっす』
そう言うとそっと立ち上がり静かに部屋を出ていく。
階段をそっと降りる音がした後、何も聞こえなくなった。
テレビの電源を切る。
まだややボケている頭のまま立ち上がり、窓のサッシに手をかけて開ける。
冬の空気が部屋に入り込む。
風が空気中のチリを飛ばしたようだ。田舎で光源が少ない故の美しい星空が目に映る。
ほう、と溜息をついた。
寒いが直ちに凍えるほどではなく、寧ろ冬らしさを感じさせる心地いいぐらいの丁度いい寒さ。
しかし部屋の換気はもういいだろう。窓を閉める。夜空が見えるようにカーテンのみ軽く開けておいた。
トン、トン、トン、とまた静かに、階段を上る音がする。
『先輩、袋麺とちょっと野菜があったから、それで作ろうと思うんすけど、良いすか。…ん、換気したんすね』
「あぁ。…分かったそれで良い。ありがとう。オレも降りるよ」
『うっす』
2人分の足音が階段を降りていく。部屋の中には冬の空気だけが残った。

「何かまだ眠そうっすね」
『いや…うんそうだな』
鳴上が何かを言いかけ、しかし言い淀み、そのままラーメンに手を付け始めるのを見ながら完二は疑問符を浮かべるが
先輩だって物想いにふけることもあるんだろう。と思い深く考えないことにした。
キャベツとにんじん玉ねぎ、それと豚肉。
それを炒めて中華スープの素少しと塩胡椒したものに、更に水溶き片栗粉を加えトロミをつけ、塩ラーメンの具とした。
やっつけ即席だが悪くはない。少なくとも鳴上は時折『美味いな』と呟くぐらいに気に入ったようだ。
『寒い時に最高な感じだ』
素直な賛辞に少し照れる。
「それは良かったっす。窓開けてて寒くなかったんすか?」
鳴上はどことなく『心ここにあらず』という感じだ。
『寒かった…寒かったけど…目を覚ますには丁度良いかと思って』
「なるほど」
相槌を打って残りを啜る。
自分でも思うがなかなか上手く出来た。今度家でも作ろう。
『ご馳走様でした』
「ご馳走様でした」
2人揃って手を合わせ、にし、とお互いの顔を見て笑った。
『後片付けはオレがするから、完二は座っているといい』
「良いんすか。あざーす」
食器類だけ下げて居間に戻る。
テレビの音は最小限、部屋の電気はなるべく小さくした。
部屋の中を濃い影が満たす。
『電気全部点けないのか?』
台所から鳴上が呼びかけた。
「何となくっすけど……時間も遅いし、そんな明るくなくて良いかなって」
『あぁ……オレもそれで良いよ』
その後しばらく無言で、カチャカチャと皿の触れ合う音、サアァと水の流れる音だけが響く。
少しして音が止み、手を拭きながら鳴上が戻ってきた。
「皿洗いあざす」
『どういたしまして。こちらこそ夕食ありがとう』
隣に座ってくる。
何となく目を向けると、鳴上をこちらを見つめていた。
何かしら言いたいような、別に言わなくても良いような。完二自身もそんな心持ちだった。どちらからともなく唇を触れ合う。
初めは柔らかだったが、徐々に熱を持ってくる。鳴上の舌が割り入ってきて、快感を得ると同時に、彼の肩を軽く押しながら言った。
「ん、ふ……今日はもう、無理っすよ」
『…あ、あぁ…そうだよな』
鳴上はそう言うと、少し嬉しそうにはにかんだ。





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ムード重視でちょいエロぐらいなのを少ない文字数で。
新年明けましておめでとうございます。本年も更新頑張っていきます。

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