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サヨナラだけが人生だ ~合縁奇縁~

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
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不安の灯

それからシンはしばらく眠り続ける事になる。
今回の発熱は寝不足と考えすぎからくる物であった事が原因であった為、眠っている内に熱は少しずつ下がり始めていた。
「シンの様子はどうだ、チョッパー」
シンがまだ眠り続けていた夕食時、サンジに聞かれたチョッパーは少し落ち込んだ様子で返事を返す。
「まだ熱は高いけど、大丈夫だと思う。・・・だけど、もっとちゃんと俺が見てたらよかった。」
「チョッパー、」
様子を確認していても気付く事の出来なかったシンの体調変化に対しチョッパーが後悔を口にし、その様子にサンジは返す言葉を探す。
しかしサンジがチョッパーに返事を返す前に、別の人物がチョッパーの頭をグリグリと撫で回した事によりサンジが言葉を発する事はなかった。
「チョッパー、気にすんな!大丈夫ならいいじゃねぇか。良くなるまでシンのチリョーは頼んだぞ!」
「わ、わっ・・・ルフィっ!」
「お前が気付かなかったんじゃなくてシンが言わなきゃ分かんねぇ事だろ?今度は言うように俺からしっかり言っとくからな!」
「え、」
「今は良くなるまでチョッパーに任せた!」
「!お、おう!任せとけ!」
ルフィの言葉に、チョッパーの顔が明るくなるのが見て取れて。
大丈夫そうだと確認したサンジは何かを言おうと開きかけた口を閉じて、チョッパーの頭を優しく撫でた。
「っつー事だ。頼んだぜ、ドクター。」
にっと笑いながらサンジもルフィの意見に同意しそう伝え、“ドクター”と呼ばれたチョッパーは気恥ずかしそうに照れた表情を浮かべ。
任された事で責任感を強くしたチョッパーは、その後シンに適切な看病を続けた。

それから、麦わらの一味は事件に巻き込まれる事になる。
その始まりは突如として現れた海獣を一味が倒した後の事。その海獣に食べられていた人魚のケイミーと友達のヒトデ・パッパグは一味が海獣を倒してくれた事により一命を取り留めた。
シンはその際も眠り続け、麦わらの一味に救われたケイミー達は、人攫い稼業で荒稼ぎするデュバル率いるトビウオライダーズにより攫われた魚人のハチを助けて欲しいと懇願し、結果としてルフィ達はハチを助けた事も、その後シャボンディ諸島に到着した後に漸く目を覚ました後に聞かされた。
「寝てる間に、そんな色々あったんだ・・・」
役に立てなくてごめん、と申し訳なさそうに未だ熱が残りだるい体を皆に向けながら言ったシンに、一味がそれぞれ優しく頭を撫でたのはその時の事。
心配するなという意味を込めたその行為はシンにも伝わったようで、申し訳なさを浮かべた表情は変わらないまでもそれ以上謝罪を口にする事はなかった。
「俺たちは町を見て回るけど、もう少し安静にしててるんだぞ。」
それからフランキー、サンジ、ウソップを残した他のクルーが船から降りて各々の目的地へ向かう際、チョッパーはシンにそう言い残して船かを後にした。
シンも分かったと頷いて、それにチョッパーは満足そうに笑顔を浮かべる。

事が動いたのは、それから少ししてだった。
『大変な事になったんだ!』
電伝虫から響く、鳴き声のチョッパーの声。
サニー号でそれを受け取ったサンジは大事が起きたのだと感じ取り、冷静に話すようチョッパーに促す。
「何が起きた?」
『ケイミーが攫われたぁぁぁぁぁ!!!』
「何だと!!?」
そして伝えられたその言葉に、サンジ、ウソップ、フランキーは一気に色めき立つ。
シャボンディ諸島には人間屋(ヒューマンショップ)がいくうもあり、人魚は奴隷として高値で取引がされているのだ。
その為にケイミーが攫われたのだと知ったサンジ達は、ケイミーを探すべく船を飛び出す事に。
「シンちゃん、本当に一人で大丈夫かい?」
「うん、大丈夫。早く、探しに行ってあげて」
未だ全快ではないシンは船に残る事を選択し、1人船に残す事をサンジが心配すればシンは笑顔をサンジに向ける事で返した。

どれだけの恐怖か。売られるというのは。独りになるという事は。
それを少なからず知っているシンは、ルフィ達が友達だというケイミーの身を案じて急いで行くようサンジ達の背中を押す。
「分かった。すぐ戻るから、安静にしててね。」
シンの言葉に力強く頷いたサンジは、ウソップは、フランキーは、それからすぐに船を下りてケイミーの捜索へと向かった。
残されたのは、サニー号とシンだけ。
久しく感じていなかった静寂に、シンは少しの寂しさを感じる。
「、ほんの、何日かなのに、」
これだけの事が、もうこれほどに寂しく思えるのか。
小さく呟いても帰って来ない返事に恐怖さえ感じたシンは、掛けられていた布団に潜り込む。
寝てしまえば、きっと皆はすぐに帰ってくる。
目を覚ませば、ただいまと笑顔を向けてくれる。
そう思いたくて、そうだと信じたくてシンは必死に固く目を閉じてはみるものの、寝すぎたせいなのか不安からなのか眠気が襲ってくる事はない。
ルフィ達の強さを知っている。だから何が起きても大丈夫だ。
そう自分に何度も言い聞かせても、その不安が消える事はなかった。
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