すべての始まりと終わりのために 2
翌日の待ち合わせ場所は、大絃が一人暮らしをしているアパートの最寄駅に入っているカフェにしていた。
生駒は約束の時間5分前に到着し大絃に連絡を入れると、中で待っていると返事が返ってきた。今日は晴天で日差しが強く蒸し暑かったのですぐに中へ入った。
「大ちゃん早いね」
「今日は暑い、日差しがまだ弱い時を狙って移動したから、1時間くらいここで涼んでた」
「わ、結構待たせちゃったね、ごめん」
「俺が勝手にやってることだからいいんだよ。汐も少し涼んでから、家行こうか」
「やった~! ちっちゃいパフェでも食べて体内から冷やそう」
生駒は大絃の対面に腰を下ろすと、メニューを楽し気に眺め始めた。どれにしようか悩んでいる様子だが1分もしないうちに近くを通った店員に手を上げ呼び止め注文した。
「ミニパフェのキャラメルください。あと、アイスティー1つ」
「かしこまりました、ミニパフェのキャラメルとアイスティーですね」
「はい。よろしくお願いします」
注文を終えるとメニューを戻し、しばらく店内を見回していたが大絃の視線に気づいて生駒も大絃の方を見る。
「ん?」
「ああ、決断早いなと思ってさ。桃と一緒だと、もっとゆっくりだったな~って……」
昨日は忘れていた様子だったのに、メニューを注文するという行動がトリガーとなって思い出させてしまったようだ。今後も一緒に行動するのであれば、同じような状態になる事も少なくないだろう。
笑ってはいるものの、少し寂しそうな目をしている大絃に声をかける。
「明日から、大ちゃん家で一緒に生活しようかと思うんだけど」
「何それ、聞いてない」
「だから今言ってるんでしょうが。2週間って短いような長いような微妙なスパンだし、お互い学生生活もバイトもある。そこからどうやって検証時間を見出すかって考えて、期間中どちらかの家で一緒に生活するのがいいかも、ってね。俺の家でもいいけど、どうする? 1週目は大ちゃん家、2週目は俺ん家とかでも可能」
一瞬、呆気に取られた表情のまま固まっていたが、その間に頭の中で生駒の言葉を噛み砕いて理解したのか、少しするとコクンと頷いた。
「確かにそうだな……。BL展開としても、一緒に生活するシチュエーションは多いから、ゲームとしても必要だと思うし」
しどろもどろで返事をする大絃に何かを感じ取り、生駒は怪訝な表情を向ける。
「もしかして、大学生活とかバイトとか特に頭になかった感じ?」
「……まあ、うん」
「言い出しっぺは俺だけど、先が思いやられる……。とりあえず、大ちゃん家に泊まる感じで大丈夫? バイトのシフトとか大学のスケジュール、こっちは確認済みで問題なし」
「そうだな、俺その辺まだ確認してないから、こっちに来てもらった方がありがたい」
「じゃあ、今日で少し荷物まとめて、明日お邪魔する。細かいのは講義終わりとかに少しずつ移動させるか」
「用意周到だな……すげぇ」
大絃の予想以上にまともBLゲームが進行しようとし始めていることに驚いていた。それ以上に、こんなにしっかりとした幼馴染の姿を見たのは初めてで、思考がついていかなくなっていた。
「言い出しっぺは俺だし、こういう企画的なものって、ちゃんとしないと気が済まないっていうか」
「これは、モテるわ……。俺の幼馴染、スパダリ説浮上」
「スパダリ? ……まあよく分かんないけど、褒められてるっぽいし、ありがとう」
「なんで俺は、こんな汐を知らないんだ……?」
昨日の生駒が告白された経験がある事や、好きな人がいるという話で驚いた事を思い出し、今日も同じように初めて知ることが多くて大絃は戸惑っていた。
物心ついた時から一緒で、これまで同じ学校で過ごしてきた。休み時間や昼休み、放課後も一緒に居たはずなのに……と思い返してみるが、知ったばかりの情報の欠片は大絃の記憶の中にはなかった。
すると生駒が静かに話し始める。
「大ちゃん、中学生になってからすごくモテ始めたろ? そこから大ちゃんの周り女子だらけになってて、俺たちと遊ぶ機会減ってたし、俺のところに来る時は女子に関する相談か愚痴か。俺はずっと聞き役だったから、一緒に居る記憶はあっても、俺の情報が少ないんだよ。後は木谷姉妹との記憶の方が強烈だからだと思う」
もう一度、中高の記憶を呼び起こすが、生駒の言ったように学校でのいつものメンバーと一緒にいる記憶やそこで話した内容よりも、姉たちと一緒に居る記憶の方が鮮明だった。
「姉ちゃんたちに地味に毒されてたんだな……」
「まあまあ。これはこれで、俺が一歩リードかな? 改めて俺のこと知っていったら、大絃は俺に惚れちゃうかもだし」
楽し気に笑い、テーブルに頬杖をついて大絃に向けて可愛げをアピールする。
「はんっ、んな簡単に惚れたりしないです~!」
大絃の負けず嫌いな一面が顔を出す。いつものテンションに戻りつつあり、彼の中の元カノの陰はなりを潜めていた。
ひとまず、話している途中に手元に届いていたミニパフェに舌鼓を打ち、体内の熱を一気に下げ、甘くなった口の中を、ストレートのアイスティーでリセットする。
「生き返る~、ここのパフェもアイスティーも美味い」
「だろう? 俺ん家に居る間、ちょくちょく来るか」
「来るくる。今後のことはどうする? 大ちゃん家で? ここで話すなら下ネタにならない程度に話すけど」
「じゃあ、1週目の予定だけでも合わせときますか。感想とかは部屋に移動してから話そう」
了解、と一言いうとパフェをペロッと平らげてしまった。
生駒は約束の時間5分前に到着し大絃に連絡を入れると、中で待っていると返事が返ってきた。今日は晴天で日差しが強く蒸し暑かったのですぐに中へ入った。
「大ちゃん早いね」
「今日は暑い、日差しがまだ弱い時を狙って移動したから、1時間くらいここで涼んでた」
「わ、結構待たせちゃったね、ごめん」
「俺が勝手にやってることだからいいんだよ。汐も少し涼んでから、家行こうか」
「やった~! ちっちゃいパフェでも食べて体内から冷やそう」
生駒は大絃の対面に腰を下ろすと、メニューを楽し気に眺め始めた。どれにしようか悩んでいる様子だが1分もしないうちに近くを通った店員に手を上げ呼び止め注文した。
「ミニパフェのキャラメルください。あと、アイスティー1つ」
「かしこまりました、ミニパフェのキャラメルとアイスティーですね」
「はい。よろしくお願いします」
注文を終えるとメニューを戻し、しばらく店内を見回していたが大絃の視線に気づいて生駒も大絃の方を見る。
「ん?」
「ああ、決断早いなと思ってさ。桃と一緒だと、もっとゆっくりだったな~って……」
昨日は忘れていた様子だったのに、メニューを注文するという行動がトリガーとなって思い出させてしまったようだ。今後も一緒に行動するのであれば、同じような状態になる事も少なくないだろう。
笑ってはいるものの、少し寂しそうな目をしている大絃に声をかける。
「明日から、大ちゃん家で一緒に生活しようかと思うんだけど」
「何それ、聞いてない」
「だから今言ってるんでしょうが。2週間って短いような長いような微妙なスパンだし、お互い学生生活もバイトもある。そこからどうやって検証時間を見出すかって考えて、期間中どちらかの家で一緒に生活するのがいいかも、ってね。俺の家でもいいけど、どうする? 1週目は大ちゃん家、2週目は俺ん家とかでも可能」
一瞬、呆気に取られた表情のまま固まっていたが、その間に頭の中で生駒の言葉を噛み砕いて理解したのか、少しするとコクンと頷いた。
「確かにそうだな……。BL展開としても、一緒に生活するシチュエーションは多いから、ゲームとしても必要だと思うし」
しどろもどろで返事をする大絃に何かを感じ取り、生駒は怪訝な表情を向ける。
「もしかして、大学生活とかバイトとか特に頭になかった感じ?」
「……まあ、うん」
「言い出しっぺは俺だけど、先が思いやられる……。とりあえず、大ちゃん家に泊まる感じで大丈夫? バイトのシフトとか大学のスケジュール、こっちは確認済みで問題なし」
「そうだな、俺その辺まだ確認してないから、こっちに来てもらった方がありがたい」
「じゃあ、今日で少し荷物まとめて、明日お邪魔する。細かいのは講義終わりとかに少しずつ移動させるか」
「用意周到だな……すげぇ」
大絃の予想以上にまともBLゲームが進行しようとし始めていることに驚いていた。それ以上に、こんなにしっかりとした幼馴染の姿を見たのは初めてで、思考がついていかなくなっていた。
「言い出しっぺは俺だし、こういう企画的なものって、ちゃんとしないと気が済まないっていうか」
「これは、モテるわ……。俺の幼馴染、スパダリ説浮上」
「スパダリ? ……まあよく分かんないけど、褒められてるっぽいし、ありがとう」
「なんで俺は、こんな汐を知らないんだ……?」
昨日の生駒が告白された経験がある事や、好きな人がいるという話で驚いた事を思い出し、今日も同じように初めて知ることが多くて大絃は戸惑っていた。
物心ついた時から一緒で、これまで同じ学校で過ごしてきた。休み時間や昼休み、放課後も一緒に居たはずなのに……と思い返してみるが、知ったばかりの情報の欠片は大絃の記憶の中にはなかった。
すると生駒が静かに話し始める。
「大ちゃん、中学生になってからすごくモテ始めたろ? そこから大ちゃんの周り女子だらけになってて、俺たちと遊ぶ機会減ってたし、俺のところに来る時は女子に関する相談か愚痴か。俺はずっと聞き役だったから、一緒に居る記憶はあっても、俺の情報が少ないんだよ。後は木谷姉妹との記憶の方が強烈だからだと思う」
もう一度、中高の記憶を呼び起こすが、生駒の言ったように学校でのいつものメンバーと一緒にいる記憶やそこで話した内容よりも、姉たちと一緒に居る記憶の方が鮮明だった。
「姉ちゃんたちに地味に毒されてたんだな……」
「まあまあ。これはこれで、俺が一歩リードかな? 改めて俺のこと知っていったら、大絃は俺に惚れちゃうかもだし」
楽し気に笑い、テーブルに頬杖をついて大絃に向けて可愛げをアピールする。
「はんっ、んな簡単に惚れたりしないです~!」
大絃の負けず嫌いな一面が顔を出す。いつものテンションに戻りつつあり、彼の中の元カノの陰はなりを潜めていた。
ひとまず、話している途中に手元に届いていたミニパフェに舌鼓を打ち、体内の熱を一気に下げ、甘くなった口の中を、ストレートのアイスティーでリセットする。
「生き返る~、ここのパフェもアイスティーも美味い」
「だろう? 俺ん家に居る間、ちょくちょく来るか」
「来るくる。今後のことはどうする? 大ちゃん家で? ここで話すなら下ネタにならない程度に話すけど」
「じゃあ、1週目の予定だけでも合わせときますか。感想とかは部屋に移動してから話そう」
了解、と一言いうとパフェをペロッと平らげてしまった。
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