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腐男子、BLを百合と語り、男におちる

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: kirin
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幕開けはいつも唐突に 1

人間とは成長過程で家庭環境に様々なものが大きく作用してくるものだ。

 木谷大絃(こたにだいと)はなるべくして「腐男子」となった、ようなものである。



 3人兄弟の末っ子長男。姉2人はどちらも「腐女子」だ。両親に関してはオタクのオの字もなかったが、長女は図書館に通うことが日課でとにかく本を読むのが好きだった。

 そんな中、ライトノベルが学校内の図書館に配置されるようになってからというもの、その中に何故だかBL本が紛れるようになった。恐らくは図書委員の中にBL好きな者がいて、こっそりと先生に取り入り置いてもらったのだろうが、やはりそういった内容の書籍は帯の字体やイラストが華美で目につきやすいものだ。木谷長女もなんとなしにその本を手に取ったのだろう。

 そこからが凄かった。もともと本が好きだった長女の中でその作品は起爆剤となり、その世界観にのめり込んでいった。また、インターネットが普及し始めた頃で、ある程度のワードさえ把握してしまえば、そのような作品を無料で星の数ほど閲覧できてしまう。

 そして、長女は本好き故に、自分で小説を創作できてしまう力が備わっていた。

かくして長女はBLを知って半年ほどで、0から作り出すことが出来るようになった。その延長線上で二次創作にも手を出し始めたのはそれからほんの数カ月後のことだった。



 次女に関しては、長女が何かやっていると真似をしたがる時期であった。その為、同じ道を歩むことは想像に難くない。ただし、次女は文字よりも絵を見る方が好きで、マンガを愛読していたせいか絵を描くのが上手かった。

 この2人が手を組んだ時、コミケでそこそこの売り上げをたたき出す人気サークルが誕生した、といえばわかりやすいだろうか。

 2人の姉は大絃が物心つく頃から、自分の作品を読ませていた。両親は2人が作っているものの内容を把握していなかった為、止めることはなく、姉弟で仲良くしていると微笑んで眺めているのみだった。

 最初は姉たちも大絃にはギャグメイン、ほのぼのメインの作品を見せていたのだが、徐々に恋愛に関しての話題が学校で流行し、性に関する学習が実施される頃には成人向けの作品まで見せるようになっていた。

 大絃の反応としては、全年齢作品と変わりなく、読んで感想を述べるのみ。少し変わったことといえば、ノーマルなものから、同性愛に関してまで、恋愛に関するものを自主的に調べるようになったところだろうか。

自身の恋愛対象に関してもはっきりさせたいと思ったようで少女漫画を読み始め、学校で聞き耳を立ててはクラスの恋愛事情を把握し、小学校3年生になった時、初恋を経験する。

 しかしその恋は実ることはなく、しばらくの間、大絃は少女漫画で噛ませ犬ポジションのキャラクターに共感してしまい泣いてしまう事があった。大学生になった今では黒歴史、消してしまいたい過去になっている。

 その英才教育と研究熱心さによって、大絃は小学校高学年になる頃には、編集者のようなポジションを家庭内に確立し、大学生になった今も新刊制作にはげむ姉たちから渡される原稿に口を挟む生活が続いていた。



「まり姉、やおいとはいえコレは展開が早すぎて面白くない……頭の中で構想が突っ走っちゃってるから、もう少し捻った方がいい。これ今一番人気のアニメ作品だろ? 主人公人気ってコイツの能力の特性にあるんだから、もっと上手く使ってけよな。まあ、きっかけ自体は悪くないから、サブキャラ差し込むだけでも話の流れが緩やかになると思うから、使ってみれば」

 渡された用紙15枚程度の簡単に書かれた原稿をサッと読み、長女に突き返しながら意見を述べる。呆れたような視線を向けて、深いため息をひとつ。

「大ちゃん……、いつにも増して厳しい……」

「判断ミスした自分の責任なんじゃない? SNSでフォロワーの人数見れるだろ。数字としてファンの数見えてるのに、あんな簡単に「新刊ネタはこれで決まり♡」なんて言ったらすぐ拡散されるし、期待されるに決まってんじゃん。ほら、文句言ってないでPCに向かわないと落とすよ。有言実行。まり姉なら出来る、がんば」

「は……はひぃ~……」

 長女・万莉(まり)は、季節毎のイベントに合わせて自分の好きなキャラクターたちを動かしたい質なのだが、今回5月の「こどもの日」にちなんだ幼体化ものと、6月の「ジューンブライド」にかけたプロポーズや結婚に関して、その場のノリでSNS告知してしまったことによって、スケジュールの調整とネタ詰まりとで、てんやわんやな状態だった。

 片方に関しては、次女・天莉(あめり)に渡してマンガにしてもらう予定だというので、尚更事態が切迫している今、優しいことは言っていられないのだ。



 そして、大絃本人はそれ以上に姉たちに構っていられない事情を抱えていた。

「俺、これから出掛けるから。多分、ご飯食べてくるから夕飯要らない」

「んー、わかった。言っとく」

 沈みかけた気持ちを少しでも奮い立たせようといつもより丁寧に靴紐を結ぶ。
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