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誰だってヒーローなんだ。

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: プリズムの使者
目次

チャプター3:運命のミライ

 怪人は、銃を二人に向けて叫ぶ。

「さぁ、内輪トークはその辺りにして、そろそろあの世へ逝ってもらおうか!」

 ケンジは、微笑し、怪人に向かって言い放つ。

「俺たちを舐めんじゃねぇぞ! 俺たち二人で一人、かかって来いやぁ!」

 威勢のいいケンジに挑発された怪人は銃の引き金を引く。二人は間一髪弾をかわし、怪人に向かって走り出した。

 ケンジは怪人の後ろに回り、飛び蹴りを決める。怪人がよろめく。その隙を狙いヒロは銃に向かって回し蹴りを繰り出す。

「ああぁ! 俺の銃が! 二人がかりとは卑怯だぞ! そっちがその気なら、出よ、俺の下部ぇ!」

 そう怪人が叫ぶと、人の形をした銀色のボディで鉄パイプを持った所謂戦闘員が20人ほど現れた。

「仲間を増やした程度で俺達が引き下がると思うな!」

 ケンジは威勢良く唸ると、戦闘員達を相手にパンチを繰り出す。

「ヒロ! お前はあのボスをやれ!」

「ああ!」

 ケンジはヒロにあの怪人を任せ、戦闘員の相手をする事にした。



「もう銃は握らせないぞ! ガ・ゴーン!」

 ヒロは怪人に向かって走り出し、その勢いで跳び蹴りを怪人の腹に叩き込む。

「がぁぁ……、貴様ァァァァァッ!」

 怪人は一度よろめくが、すぐに体勢を取り戻し、ヒロに覆い被さるように飛びかかる。ヒロは、それを焦りながら避ける。



 ケンジは戦闘員の大群と対決していた。戦闘員達の動きは、数々の戦闘員の動きを見てきたケンジでも予測できないほどのまとまらない動きをする。

 しかし、ケンジの中の豊富なデータベースを参照し、戦闘員の動きのパターンを掴む。

「貴様ら戦闘員の動きは分かった……鬼軍団のコブ野郎にそっくりだぜ!」

 鬼軍団のコブ野郎のように武器で叩いて攻撃する戦闘員の攻略法はたった一つ。武器で殴られる前に倒す事だ。

 ケンジは戦闘員の一発目の攻撃を異常なまでの集中力で見切り、カウンターを仕掛け、1体目をノックアウトする。そして、戦闘員の武器を奪い、2体目と3体目を殴って気絶させる。

「敵の武器を奪って戦うのは基本中の基本だっての!」

 ケンジは微笑しながら呟く。



 ヒロは、怪人の落とした銃を手に取る。40キロくらいある衝撃の重量に驚く。これでは戦えないと判断したヒロは、銃を怪人の手の届かないところに捨て、その代わり倒れた戦闘員の落とした鉄パイプを武器とし怪人に立ち向かう。

 ヒロは鉄パイプを勢いよく振りかざし、怪人を殴るが、怪人の固いボディにはまったく歯が立たず、それどころかぽっきりと鉄パイプが折れてしまった。

「我輩のボディにそんな玩具が効くと思うなよ!」

 怪人は笑いながらヒロに向かって言い放った後、ヒロの胸ぐらを掴み、持ち上げた後、強く地面に叩きつけた。

 ヒロは背中から地面に叩きつけられる。その衝撃に耐えかね、苦痛の叫びを上げる。

「うっ……がぁぁぁあああぁぁ! あぁぁぁぁぁぁ!」

「どうした? その程度か?」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁぁぁ!」

 ヒロは痛みで叫びが止まらない。それどころか、背中から大量に血が流れ出した。ついに痛みで気絶するかと思った時、ふとヒロの叫びが止まり、ふらっと立ち上がった。

「がぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

 ヒロは立ち上がるとまた叫びだし、怪人に不規則なパンチを叩き込む。ヒロは、容赦なく殴り続ける。その目は、真っ赤に染まっており、端から見ると人間とは思えないほどの狂気がそこにはあった。

「何だこいつ! どこにこんな力が……」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! がぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!」

 ヒロは怪人の言う事も耳に入れようとしない。ただ、怪人を殴る事だけしか頭にないロボットのようだ。

「がっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!」

 ヒロは怪人を蹴飛ばす。怪人はよろめく。そして、顔の黄緑の模様が真っ赤になり、倒れた。

「覚えていろ……人間ども」

 そう、一言ささやき、消えた。怪人がいなくなったことに気付いたヒロはその場に倒れた。そのときの瞳は元の正常なヒロの瞳だった。



 突然、ケンジの周りから戦闘員が消えた。きっと、怪人と共に消えたのだろう。ケンジは、戦う相手がいなくなったことで、もう戦う必要がないと自覚した。

 ケンジは倒れているヒロの方へ走っていき、ヒロが大丈夫か確認する。脈はある。息もある。

「おい! ヒロ! 大丈夫か! おい!」

 ケンジはヒロを起こそうとして、ヒロの身体を揺さぶって呼ぶ。

「ん…………。ケンジ……大丈夫だったか?」

 ヒロが目を覚ました。その目は休息の戦士というに相応しい優しい目だった。

「それはこっちのセリフだよバカ……。お前は戦友なんだぞ……。大事な仲間なんだからさ……」

 ケンジは涙ながらにヒロに訴える。

「なぁ、ケンジ……。俺さ、ヒーローみたいなカッコいい人間になることが夢なんだ……」

 ヒロはかすれそうな声でケンジに話しかける。

「なに言ってんだ。お前はもう一人前のヒーローだよ……。この学校を守ったんだ、その手で」

 ケンジはヒロの手を握り、涙ながらに語る。

「そうか……ありがとう、ケンジ」

 そう言い、英雄は再び目を閉じた。





 小さな頃からヒーローに憧れていた。テレビの中で悪と戦う姿に胸打たれ、憧れた。しかし、ヒーローは現実にいないことを知り、絶望した。

 その中で、ヒーロー番組を作る人間を志すようになり、いろんなヒーロー番組に触れた。いつしか、自分の中で「愛」がなくなった。ヒーローに対する愛がなくなった。そして、ヒーローのような愛がなくなった。

 そんな時、一人の男に出会った。彼は、ヒーローのようなカッコいい人間になりたいと言った。ヒーローになれば誰かを笑顔にできるはずと言った。

 彼は、自分の唯一の戦友であった。そして、今も変わらず彼は戦友だ。

 彼のおかげでヒーローとはなにかを再確認する事ができた。





 ヒーロー。それは、愛と勇気で誰かを笑顔のために戦う存在。そして、人々の本来の姿なんだ。
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