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テッコウガ-ハジマリ-

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: プリズムの使者
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チャプター3:告白

仁は、美夏を連れ出した後、いつもの人気のないところへ向かい、あと30分後にやってくる夕食時を待った。

 この人気のないところは今まで虐めの連中も来ないほどだ。そして、ここは幸い誰にも気付かれずに施設を抜け出す事が可能だ。

「門司君、本当に大丈夫なの……?」

 おどおどしながら、美夏は仁に問う。対する仁は自信満々に大丈夫だと答えた。



 ついに夕食の時間になった。この時間帯は皆食堂に集まるので余計に人気がなくなる。絶好のチャンスを掴んだと仁は心の中で笑い、美夏の手を引いて走り出した。

 出口まで約500メートル、この距離を全速力で駆け抜けた。頭の中に脱出ルートを想像し、ただひたすらに走った。



 走ること3分。出口のドアを抜け、外へ出た。早くこの敷地から離れなければ。すると、突然施設から大きな警報が鳴り響き、ARTSを装着した戦士達が次々と施設から姿を現した。

「門司仁! 大人しくしていればお前だけは助けてやったものを! お前を反逆者と上が認めてしまったせいで、貴様を今ここで倒さなければならなくなったのだ! 覚悟はいいな?」

 リーダーらしき戦士が、そう仁に言う。

「構わん。みんな一斉にかかって来い……」

 そう、仁は戦士達を挑発すると同時に軌道前のARTSを取り出し、ダメ元で起動させた。

「馬鹿め! 貴様は変身規制されてるは……ず……?」

 戦士のリーダーは仁のARTSが起動されている光景を見て驚いた。変身規制されてるはずのARTSが光り輝き、仁の身体に装甲が装着される。

「あぁ、大体分かった……。きっとARTSの内部からパーツを取り除いたら規制が解除されたか……?」

 そう、仁はひとりでに呟くうちに変身が完了した。銀色に光るボディはまるで一昔前の特撮ドラマの機械戦士のようだ。

「この際戦えればどうでもいい!」

 仁は変身ができた事にそう結論付けた。



 瞬間、戦士たちは一斉に仁に襲いかかった。

「天野! フェンスを登って向こう側に行け!」

「分かった!」

 美夏は敷地の端へ向かい、境界のフェンスを掴み登る。美夏はただひたすらフェンスを登っていった。

 仁は襲い掛かる戦士を美夏に近づけまいと相手の行動をシステムで予知し、すばやく殴り飛ばす。これが仁が日々改造を重ねたARTSの実力なのだ。

「なんだこいつ! 速過ぎる!」

 戦士はそう弱音を吐くが、仁はそんな弱音お構い無しに次々と敵を施設側へ吹っ飛ばす。しかし、敵が多い。大体20人前後だ。

「キリがないから、新作の必殺技をお見舞いしてやる!」

 仁はそう敵に高らかに叫ぶと、後ろに置いてあった工具箱に手を伸ばし、一つの小さな箱を取り出した。箱のスイッチを押して地面に置く。そして仁は変身を解いて、フェンスに捕まり登っていった。

 3秒後、箱の先から施設側へまっすぐ火花と青い閃光が飛び、敵が皆気分を悪くしたように倒れた。この箱にはARTSの動力源「ミレニウム」を無力化させる物質がふんだんに入っており、起動から3秒経つと物質が放射状に発され、半径5メートル以内のARTSは無効化させることが可能である。

 そのため、皆の動きが止まり、変身解除もできぬまま、いつもならミレニウムの効果で軽くなっていたスーツのあまりの重さに耐え切れず、次々と倒れたのだ。



 フェンスの向こう側へ辿り着いた二人は、敷地からできるだけ離れるためにさらに走った。もう、疲れなんか気にしない。とにかく走るのだ。





 もう何分走っただろうか。仁の感覚で20分ほど走った気がする。もう走れない気がする。特に美夏は仁ほど体力があるわけではないので、余計に走れない。

 仁が辺りを見渡すと、そこは森だった。辺り一面木が生い茂っており、そこら辺の木にもたれかかると疲れが取れそうだ。

 二人は木にもたれかかって一息ついた。そして、夜空を見上げた。その瞬間だけ、時が止まっているような感覚に陥る。もう大丈夫だという根拠のない安堵がほのかに感じた。



「門司君……」

 美夏がそうボソッと呟く。

「どうした? 天野」

「天野じゃなくて、美夏って呼んで。虐めてた奴はみんな私のことを天野って呼んでたから、門司君には美夏って呼んで欲しいの」

 突然の美夏の発言に、仁は微笑した。いつの間にか好きになってた女の子を下の名前で呼べるなんて、夢にも思ってなかった事なのだ。

「……美夏、でいいんだよな」

 とりあえず、美夏って呼んでみたかった。仁はただそれだけが今はしたかった。走り続けて回転が止まってしまった脳はただ美夏って呼びたい事だけを欲していた。

「なんか、名前で呼んでもらえるって嬉しいな。門司君の事……仁って呼んでいい?」

「当然、呼んで欲しくない理由がない」

 仁はただひたすら喜びを感じていた。美夏に仁と呼ばれる事が嬉しくてたまらないのだ。お互いを下の名前で呼べる関係はもう、付き合ってるようなものだろうと勝手に思い込んでいた。



 それから、二人はいろんなことを話した。今までのこと、面白いこと、愉快なこと、少し悲しいこと、そしてこれからのこと。

 これから二人で生きていくとお互いは信じきっていた。安全が確保されているわけでもないのに。これからどんな危険が待ち受けていようとも、そんな事今は考えないようにしていた。



「あのね、仁。ずっと言いたかった事があるんだけど……聞いてくれる?」

 美夏は顔を赤らめながら、仁のほうへ顔を近づける。仁の心臓の動きが活発になる。今までここまで心臓が激しく動いた事があっただろうか。

「私、仁の事が好き」
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