ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ラブライブ!誕生!新たな生徒会長

原作: ラブライブ! 作者: プリズムの使者
目次

チャプター1:真姫ちゃん、戸惑うの序

 ラブライブの決勝や、卒業式やらで忙しかった春が終わり、夏が始まった頃、西木野真姫は思い悩んでいた。真姫にとってこれほど悩んだのは生まれて初めてだ。
「もぅ……ホントに意味わかんないっ!」

 事の始まりはつい昨日、真姫の通う音ノ木坂学院生徒会室で起こった。生徒会長の高坂穂乃果は昼休みに急に真姫を生徒会室へ呼び出したのだ。穂乃果は真姫にとっての数少ない友人であり、μ'sとして共にスクールアイドルをやってきた仲間の一人である。

 真姫が部屋に入ると、正面に穂乃果が、その両隣にμ'sであり、生徒会役員の園田海未と南ことりが座っている。滅多に来ない部屋に来たせいか、真姫は緊張しながら穂乃果を見つめていた。

 緊張する真姫に対し、穂乃果は微笑みながら話しかけた。
「あのさ、真姫ちゃん。突然だけど、生徒会長やってみない?」
 真姫は驚き、その場に硬直してしまった。それも当然だ。まさか穂乃果が自分なんかに次期生徒会長になることを勧めるなんて。真姫は夢でも見ているのかと思った。
 真姫は直ぐさま断ろうと思った。「お断りします」なんていつもなら言っていただろう。しかし、今回に限っては何故かその言葉が出なかった。自分でもよく分からないのだが、きっとμ'sのメンバーとして、穂乃果達の友人として、そして仲間として1年以上一緒にいたからだろう。仲間の頼みを素直に断われない自分が1年間で形成されてしまっていたのだ。
 なんたって、真姫にとってμ'sの8人の仲間は数少ない心の拠り所であり、数少ない信頼出来る人達だ。そう簡単に断れるはずない。

「あれ……どうしたの? 真姫ちゃん……おーい! 真姫ちゃーん!」
 穂乃果は硬直して放心状態になってる真姫を呼んでみる。返事がない。
 穂乃果の隣で海未が呆れ顔で話しかける。
「穂乃果……急にあんなこと言うから真姫が固まってしまったじゃないですか……」
「でもでも! 他に思い当たる言葉がなかったんだもん!」
 穂乃果は可愛らしくぷぅーっと頬を膨らませ、海未に反論する。
「全く穂乃果は……」
 海未は穂乃果から顔を背けた。

 真姫は生徒会の面々が困惑している様子を見て何か言わねばと考える。そして考えに考えた結果がこうだ。
「あの、穂乃果……ちょっと考えさせて」
 真姫は戸惑って中途半端な返事をしてしまい、自分がどれだけ予測できない状況にいるかを把握した。
「真姫ちゃん……?」
 穂乃果の隣にいることりが不思議がって真姫に問う。それもそうだ、いつものようなクールで冷静沈着な真姫ならしっかりとした意見を言うからだ。

 真姫は考える。穂乃果の頼みは断われない。でも自分なんかが生徒会長になっていいものかとも思う。穂乃果は明るい性格と強いリーダーシップがあって生徒会長をやっているし、前の生徒会長の絢瀬絵里もリーダーシップがあったから生徒会長の仕事をやり遂げたのだ。
 果たしてリーダーシップのない自分に生徒会長の役が務まるだろうか?

「あ、あのね、真姫ちゃん」
 気まずそうな雰囲気の中、穂乃果が口を開く。
「真姫ちゃんは皆の事をしっかり分かってて、それで相手の為にいつも頑張ってるから、生徒会長に向いてると思って誘ったんだ」
 分かってる。そんなことは自分でもよく分かってる。でも自分はセンターじゃない場所で誰かの為に動くのが性に合ってると思っている。
 だから、生徒会に誘われたとしたら入っていたかもしれないが、生徒会長となると話が別だ。

「だからね、生徒会長やらない? 真姫ちゃんならきっと出来るよ!」
 穂乃果がそう言ってくれるのは嬉しい。しかし、迷いに迷っている真姫にとっては迷いを加速させるだけの言葉でしかなかった。
 そして頭がパンクしそうになった時、真姫の口からふいに言葉がこぼれた。
「何それ、意味わかんない!」
 そう言葉を残して真姫は生徒会室から立ち去った。
「あれ……真姫ちゃん……?」
 穂乃果は顔をしょぼんとさせる。そんな姿を見たことりは穂乃果にフォローを入れる。
「穂乃果ちゃん。きっと真姫ちゃんも分かってくれるはずだよ」
「そうだといいのですが……」
 海未は自身なさげな目でことりを見ていた。


 真姫は生徒会室を後にし、そのまま音楽室に向かった。真姫はいつも昼休みになると音楽室でピアノを弾く。ピアノは趣味であり、自分の特技だ。そして、音楽室でピアノを弾いていたところを穂乃果に見られ、アイドルになることを誘われた思い出の場所でもある。
 真姫はグランドピアノのカバーを開け、鍵盤に手を乗せる。そして、軽やかに鍵盤を叩く。ピアノから弾むような音が鳴り、それにあわせるように真姫も歌いだした。

「あー! 真姫ちゃん! こんな所に居たにゃー!」
 ピアノの音を遮るかのように甲高い声が聞えた。この声は星空凛、μ'sの仲間の一人で、同じ一年生だ。元々体育会系の人間だからか、元気で明るく、色で例えるならイエローな少女だ。
「真姫ちゃーん! 今日は部室でかよちん達とご飯食べるって約束だよ!」
 忘れてた。完全に忘れてた。さっきあんな事があったのだ。そのインパクトが強すぎて約束の事をすっかり忘れてしまっていた。
「ご、ごめん。今から行くわ」
 真姫は焦る。約束は絶対に忘れない真姫だからこそ、この予想外の事態に対応できずにいた。
 真姫はすぐにピアノを片付け、教室へ弁当を取りに行き、そのまま部室へと向かった。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。