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クロスゲーム ドラフト会議編

原作: その他 (原作:クロスゲーム) 作者: 野良作家
目次

クロスゲーム ドラフト会議編

(一)

カランカラン♪ 喫茶クローバーのドアの開く音がして、光が入って来た。

「いらっしゃい。樹多村君」

と光の家の隣のそば屋の娘で同学年の滝川あかねがはなした。

「コーヒーとナポリタンね」

光はカウンターの席に座り注文をし

「そう言えば、一姉は?」

「一葉さんなら、さっき、東君のお兄さんが迎えにきて、帰ったわよ。」

あかねはナポリタンを作りながら答えた。

「そうだよな~一姉、東の兄ちゃんと結婚したんだんよな~」

「甲子園が終わってからほとんどすぐだったよね。結婚式。あこがれちゃった~。」



その頃、星秀学園野球部では、

青葉を先頭にランニングをしていた。

「こら~声が小さい!星秀ファイト!」

赤石の後をついで、キャプテンに指名されたのが、青葉だったのだ。

青葉以外、野球部を盛り上げ、引っ張る存在がいなかったのもある。

「お~い。月島。」

青葉が前野監督の呼ばれてそばに来ると

「月島。樹多村見かけなかったか?」

青葉は一瞬,ムッとしそうになったが、

「今日は、朝以外、見てませんけど。」

「そろそろ、ドラフトの時間なんじゃが、理事長室には、東と赤石はいるんだが、と理事長がいってきてな~」

前野監督の言葉を聞いて青葉は顔から血が引いてく感じがした

「すまんが、樹多村に連絡をしてくれないか?すぐ理事長室に来いと」

「わかりました。監督。」

と青葉は脱兎のごとく走りだしていた。

(あのバカ!なにやってんの!)と心の中でつぶやいていた。

(二)

理事長室では、各新聞社の記者による質問が行われていました。

「理事長。仮に3人がプロに行った場合の感想を一言お願いします」

「いや~我が学園で、ドラフト会議に掛かる選手が出ただけでも、うれしい限りです。」

と理事長は隣に座っている、赤石の肩をたたいた。

「そう言えば、理事長。樹多村君の姿が見えないようですが、体調を崩して休んでいるんですか?」

その場にいた3人は、ドキッとした表情を隠そうと3人とも視線を記者から外した。

赤石も東も共に同じことを想像していた。

「いや~今日ドラフト会議ってことすっかり忘れちゃってさ~」

と言いながら、理事長室に入ってくる光のすがたを・・・



リーンリーン♪電話がなり

「はい、樹多村スポーツです。」

「おじさん!あいついます?」

「青葉ちゃんか~光なら、さっき、青葉ちゃんちに行ったぞ。」

「もう~。すみませんでした。」

電話を切ると、青葉は、すぐにクローバーに電話をかけ直した

「あんにゃろ~」

すると

「喫茶クローバーです。あっ青葉ちゃん?樹多村君なら目の前にいるけど」

滝川あかねから、光は受話器を受け取った瞬間に耳をつんざく大声が聞こえた。

「あんたね~今日ドラフト会議って事忘れてんの!」

「明日じゃなかったっけ?」

「今すぐ理事長室に来いって!ほんとにバカなんだから」

「バカとはなんだバカとは、仮にも先輩だそ!」

「いいからは早く来い!」

あかねが心配そうに、

「青葉ちゃん。なんだって?」

光はナポリタンを食べながら

「今日ドラフト会議で、理事長室に来いとか行ってな~」

と悠長にこたえていた。

「樹多村君、もしかしてインタビューとか記者会見的な事があるんじゃないの?」

と言いながら光からナポリタンを取り上げて入口を指差した。

「さっさと、理事長室にいってきなさい!」

光は、あかねちゃんの言葉が、まるで、若葉が話しているかの様に聞こえて、

「ごちそうさん。あかねちゃんツケといて」

と光はいいのこしてクローバーを後にした。

(三)

すでにドラフト会議は、はじまっており、東は、福岡フォークスと北海道ファイターズの指名を受けていた。

「パリーグ最後のチーム、宮城イーグルス」

とテレビ画面から独特の声が聞こえていた瞬間に、

「いや~今日ドラフト会議ってことすっかり忘れちゃってさ~」

とまさに、赤石と東が予想した通りの展開で光が理事長室に入って来た。

一同その様子に一瞬固まってしまった。

「宮城イーグルス。樹多村 光 星秀学園 投手」

の声がテレビから聞こえてきた。すでに樹多村は、所沢ライオンズからも指名を受けていたので2チームの使命となった。

「続いて、セリーグです。」

との声に光を除いて緊張していた。

第一使命で、東は、福岡フォークス・北海道ファイターズ・東京ジャイアンツ・名古屋ドラゴンズの4チームからの指名を受けた。

光は、所沢ライオンズ・宮城イーグルス・湘南ベイスターズ・神宮スワローズとこちらも4チームから1位指名を受けていた。唯一人は、まだ指名を受ける事が出来ていなかった。

光も東も4チームの競合となったためくじ引きとなり、

東は、東京ジャイアンツが交渉権を獲得した。

光の方は、と言うと、同じくセリーグの、神宮スワローズが交渉権を獲得したのだった。

赤石だけは、ドラフトが進むが名前も呼ばれない時が続いた。

既に指名を終えているチームがある中で、第6指名・湘南ベイスターズ 赤石修 星秀学園 捕手との声がテレビからきこえてきたのである。

「以上を持ちまして、今年度のドラフト会議を終了します。」

赤石は、ボー然とした表情で、固まっていたのである。ドラフトには掛からないのでは?と思い諦めていた所の第6指名。

星秀学園で初のプロ野球選手の誕生した瞬間であった。

(四)

全ての取材が終わって、帰る事になった時、東が口を開いた。

「今日、実家に一度戻るから、先に帰る。」

野球部の部室を後に、した。

「じゃ~俺も帰ってオヤジの手伝いがあるから」

と次々に部室を後にしていく。

部室に残ったのは、光と青葉のみ。

「青葉~外で待ってるぞ~」

「・・・うん」

部室から出てきた青葉を確認した光は、先に歩きだした。

青葉は、その後を続くように歩いていたが、校門をでた瞬間に、光の背中の制服を引っ張った。

「おめでとう・・・・光」

「青葉・・傘持ってきた?お前がそう言う事を言うと・・・」

「雨に濡れてもいいじゃん。電車が止まってもいい。光と長く入れるなら」

と初めて光に見せた青葉の照れた顔だった。
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