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狂い咲き

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: saran
目次

お前が好きだ


ユノはその答えに静かに微笑むと、箸を置いてひなのを手招いた。


「?」


ひなのは手招きの意味が分からないまま、座ったままのユノに近づく。

ユノは両手をそっと伸ばし、ひなのの背中に回した。


「!ユ、ユノ様・・・っ」



待って待って、今は昨日の状況とは違うよ!?


どうしてこんなことー・・・


そのまま、ひなのの額はユノの胸を打つ。


「・・・」

「・・・」



恥ずかしすぎて、嬉しすぎて、わけわからなすぎて死にそう・・・!

心臓が出飛び出すよ・・・!


「俺にも、分かった気がする。


愛というものは・・・心地よいものだということが」

「・・・!!」




それは、ひなのが何より望んだ回答。




「俺を好きだと言っていたな。


俺の気持ちは同じかと聞いていたな、ひなの。



俺は・・・こうしていると落ち着く。
俺がお前の前に、いられれば良いと思った。ずっとだ。



つまりこれは・・・





俺は、お前が好きだ・・・と


そういう事だろう?」


信じられない言葉は、ひなのの頭を何往復も木霊した。



・・・もう一回・・・


もう一回、言って下さい・・・


「ユノ様・・・!本当ですか・・・!?


本当にそう思いますか・・・!?」


「・・・ずっと考えていた。
そして昨日、お前に抱かれた時に答えが出た」


「・・・もう一度、言って下さい・・・

嬉し過ぎて・・・爆発しそうです」



ひなのは顔を上げ、ユノと間近で視線を合わせる。



分かってるよ、ユノ様はどこまでと真っ直ぐで正直だから。

嘘は、言わないって。


だから、もう一度言って下さい。



「・・・ふっ。

聞いていなかったのか?




・・・俺はお前が好きだと言ったんだ、ひなの。




俺も、こんなことを口にするのは人生初めてだが。



・・・お前が、好きだ。大切に思っている」




・・・あぁ、こんな事って、あるんだね。




本当に、あるんだねー・・・?




ここに来たことが夢なら良いと思っていたけれど・・・


夢じゃ、やだよ。



夢だとするなら、二度と覚めないでー・・・。



「ユノ様・・・!



私も、大好きなんです・・・!

大好きなんですからね、ユノ様のこと・・・!


ありったけの愛を、あなたにあげたいです・・・!」



十士郎さん、きっと私は成功しました。


ユノ様は、無感情じゃなくなったんです。



二人の気持ちが確かめられ・・・



ひなのがそう、思った瞬間のことだったー・・・



「結果が出たか」


「わっ」


背後からの突然の声に、ひなのはユノに抱かれたまま、ビクッと体を跳ねさせた。


ユノもピクッと身動きをする。



・・・この声は、あの声だ。



「十士郎さん・・・!?」


ひなのが振り返ると、そこにはやはりあの男が立っていた。


幻?幽霊?
分からないけれど、十士郎さんははっきりとそこにいた。


「・・・ひなの、お前もこの男と会っているのか?」

「・・・はい」

「八龍の素質あるわしの子孫だ、一度くらい挨拶をするのは当然だろう」

「それもそうか。・・・今日は、何の用だろうか?」



その様子からすると、ユノ様は十士郎さんと、何度か会ったことがあるみたい。


「・・・お主らの答えを見守っていた。
そして今、わしは言わねばならんことがあって、ここに参ったわけだが」



十士郎は何やら、積もる話がありそうだ。
しかしー・・・



・・・なん、だろう。
十士郎さんの表情が、かなり曇ってる。何の話だろう。



「ユノもひなのも、お主ら知っておるだろう。・・・この世の存在の意味を。
あー・・・人斬りの世の中が、一体何なのかを」


一体何なのか?


「って言うのは、どういうことですか??」

「人の念で出来てしまった世界だということだよ。

人の念は妖気となり、妖刀が出来た。

刀は人を斬り、殺し、平和から遠ざけてしまった」



それは知ってる、聞いたもの。


今更何のことだろう・・・?

分からないけど、なんか・・・なんとなく・・・
十士郎さんの話し方が言いたくない言葉を遠巻きに話しているようでー・・・。


「分かっている。俺も今こうしてひなのといることで、人を斬らないことを覚えた。

人を斬らない所には後悔もなく、安らぎと愛があることを知ったばかりだ」



ユノ様は、どこまでも純粋な人。
だから、色んな変化も受け入れるんだ。
すぐに、自分のものにしちゃう。




・・・だから、こそ。
純粋だからこそ、その後の十士郎さんの話を受け入れられたんだ。


むしろ、受け入れられなかったのは、私の方だった。

「そうか。・・・愛が勝ったのか」


そう呟く十士郎の顔は、この時ばかりは嬉しそうだった。
十士郎は、そっとひなのと目を合わせてくる。


・・・うん、そうなんです。私、成功したと思うんです。

ユノ様はもうー・・・


"無感情"じゃありません。



「ならばこの話をー・・・理解できるだろうか?

・・・ユノ、ひなの」

「・・・なんだ?」

「何ですか・・・?」








「おい、空牙!そろそろ仕事行けるんじゃないのか?」

「なんだ、麗憐か。

もう、今朝一で少し出てきたよ。夕方まで休むつもりだけど」

「・・・あっそーか。なら、これを見て欲しいんだ・・・」



ユノに斬られた傷が完治していない空牙と、何事もなかったかのような麗憐。

麗憐がわざわざ空牙を訪ねたのは、深刻な訳があった。




空牙の前に差し出される、一本の刀。


「・・・!」


空牙は、それを見て目を見開いた。
見えるはずのない麗憐の妖刀【東雲】が、今先端の刃先のみがキラリと見えるではないか・・・



「空牙・・・!あたいの東雲、おかしいだろ・・・!?

刃先がただの刀に戻ってきている・・・お前にも、見えるか・・・!?」


宙に浮かぶ、尖った刃。


「・・・見えるよ。

実は、俺のも同じだ・・・」



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